ジブラルタ生命 Heart to Heart ありがとう、先生！ アナザーストーリー

2015年10月18日のショートストーリー

「つまらぬと言うは、小さき知恵袋」

[ストーリー]

入場して５分で後悔に襲われた。
チケットをもらって話題の美術展にきたのだけれど、
５歳の娘は「つまらない」と、ぶんむくれ。
ついには座り込んでしまった。

うちの子には少し難しかったかな…。
“悪かった” という思いと、
“せめて騒がないで”という思いで、
バッグの中のおもちゃに手を伸ばした。

と、そのとき、ある肖像画が目に飛び込んで来た。
小学校時代の担任“おじいちゃん先生”にそっくり。

「つまらぬと言うは、小さき知恵袋」

どこからか、先生の口癖が聞こえたような気がした。
つまらないと言って何も見ようとしなければ
世界は狭いまま。
そうだった。
私は、先生から落語や俳句のおもしろさを
教えてもらったんだっけ。

よし。私なりに、絵の面白さをこの子に伝えてみよう。
あの絵の王子様がイケメン。
テーブルに載ったご飯がおいしそう。
そんなことからでもいいじゃないか。

静岡県「ふゆうまれ」さんの先生の忘れられないコトバでした。
脚本・市川榮里

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