ジブラルタ生命 Heart to Heart ありがとう、先生！ アナザーストーリー

2016年2月14日のショートストーリー

「ガソリンを入れるときは エンジンを切るもの」

[ストーリー]

外回りの途中、漂う甘い香り・・・
やっぱりあった、たい焼き屋さん。
とぼけた顔の魚たちは、私に大切な記憶を運んでくれる。

まだ新人だった頃、厳しく指導してくれた先輩・・・

ある冬の寒い日、朝から一緒に取引先をまわった。
プレゼンの内容はすべて覚えたはずなのに、
いざとなると言葉が出ない。

悔し涙をこらえ、次の取引先へ向かっていると、
先輩が足を止めた。
怒られる…。
しかし、その直感は見事に外れた。
先輩は、近くにあった屋台でたい焼きを買うと、
私に差し出し…

「ガソリンを入れるときは エンジンを切るもの」

先輩が受験で追いつめられていたとき、
予備校の先生がかけてくれた言葉だという。

たい焼きの温かさと甘い香りは
私のこわばった心と体を緩ませた。

たまには、後輩たちに買って行ってあげようかな。
私は、たい焼き屋さんの小さなのれんをくぐった。

三重県「みやりん」さんの先生の忘れられないコトバでした。
脚本・市川榮里

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