ジブラルタ生命 Heart to Heart ありがとう、先生！ アナザーストーリー

2016年5月1日のショートストーリー

「真剣になればなるほど、喜びと楽しみが生まれる」

[ストーリー]

トントントン、まな板を叩く包丁の音。
五歳の娘が目を覚ます。
厨房に立っているのは、私の夫。

家事など一切しなかった彼が、料理を始めたのは半年前。
私が病気で寝込んだ時だった。

最初は、フライパンで火傷したりして、文字通り、
手を焼いていたけれど、
日夜、料理と格闘するうちに、いつしか、瞳が輝き出した。

「真剣になればなるほど、喜びと楽しみが生まれる」

それは、小学校時代の恩師の言葉。
花壇の水やりをさぼっていた時に言われたという。

今ではすっかり、料理にハマっている夫。
休みの日は新メニューの研究。
それだけでなく、毎日、朝ごはんも作ってくれる。

「たまには私が作ろうか？」
「ダメ、俺が好きでやってんだから」
「じゃ、しょうがないか」

私がポツリと呟くと、娘がスカートの裾を引き、
ニッコリ「うん」と頷いた。

愛知県「ぱんぷきん」さんの先生の忘れられないコトバでした。
脚本・市川幸宏

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