ジブラルタ生命 Heart to Heart ありがとう、先生！ アナザーストーリー

2013年1月6日のショートストーリー

「この手は、お手伝いをしている、いい手だね」

[ストーリー]

結婚二十周年の記念に、夫がレストランを予約してくれた。
ネイルを整えようとして、愕然とする。
手が・・・荒れている。ガサガサ。

レストランで、もうひとつ浮かない顔の私に彼が訊いた。
「どした？」
「ううん、見て、この手。ガサガサで、なんだか恥ずかしい」
私は両手をそろえて彼に見せる。
「恥ずかしいことなんかないよ。お皿を洗ったり、ぞうきんをしぼったり、ちゃんと働いてくれてる手だ」
優しい声になんだか泣きそうになる。
「そういえば」と私。
「小学校六年のとき、そう、冬の日の休み時間・・・
教室の隅っこのスチームにみんなが集まって手をかざしていたときにね、
担任の先生がガサガサに荒れた手をした友達にこう言ったの。
『この手は、お手伝いをしている、いい手だね』って。
あのときの先生の声、優しかった。」

レストランの帰り道、夫は私にこう言った。
「手、つなごうか」

東京都「にっしー！」さんの先生の忘れられないコトバでした。

脚本・北阪昌人

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