ジブラルタ生命 Heart to Heart ありがとう、先生！ アナザーストーリー

2013年9月8日のショートストーリー

「人の夢になってください」

[ストーリー]

自分の順番を待つ間に、僕は少しずつ集中を高めていく。
会場に響く音も人々の目も、もはや、僕には届かず、
他人の成績も気にしない。
僕は、ただ泳ぐ。

親の言うなりに水泳を続けてきた僕が
ここまで来れたのは、
一人の先生のお陰だった。
威厳があって、誰からも一目置かれていたその先生は、
若い頃、水泳選手として活躍していた。
そして、その夢は彼の息子に引き継がれたものの、
親子二代で、という夢は、残念ながら叶わなかった。

事故にあった息子さんの姿を
僕に重ねた彼の思いは、
数々の励ましの言葉や
プールサイドから感じられる
厳しい中にも優しさが溢れた視線に込められていた。

僕らと共に学校を卒業することになっていた先生は
中学最後の日、僕の手を取り、
そして、言った。
「人の夢になってください」

その言葉の重みを改めて感じながら、
僕は、合図と共に水に飛び込んだ。

広島県「りょう」さんの先生の忘れられないコトバでした。
脚本・永坂久美

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