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番組スタッフ
CMの演出がネットで取り上げられて熱を帯び、様々なメディアでその賛否について議論がなされまでに派生するということはもはや珍しいことではありません。
たかがCMの演出で…と思いがちですが、様々な主義主張、思想をもつ受け手の「声」が可視化されてしまった昨今では「たかが」と見過ごすことは適わない場合もしばしばです。

今、CM上の演出で話題となっているのが、「量産型」という言葉。
学校法人・専門学校HAL東京のテレビCMでの演出で、アニメの主人公が乗っていそうな他とは見た目の違うロボットが、次々と他のロボットを倒していきます。
いわゆる「主人公機」が「量産型機」を撃破していくのです。
CMはこう締めくくられます。

「量産型になるな。」

若者の自尊心、承認欲求をくすぐる演出だと思います。
このCMに対し、Twitterでは「グッと来た」とその演出に賛同する声が上がる一方、「量産型なめんな」と非難する人も表れているのです。

そもそも「量産型」とは、アニメやゲームにおいて、同一のモデルが量産される場合、そのモデルの単語の頭に冠される単語。転じて、「見た目」「性能」ともに横並びであることを意味します。
つまり、没個性であるということ。

より高度な創造性が求められる業種となると話は別ですが、「量産型でも良いだろう」というのが私の意見です。
そもそも多くの労働者、社会人が主役機、エース級の機体になれず、量産型で終わっていきます。もしかしたら、私自身も量産型かもしれません。

数十年前より多くの大企業で用いられる、新卒一括大量採用型の雇用を見ると、日本は「量産型」の労働者を育むことに注力してきたように思われます。

就職活動など、見た目は完全に量産型。良いのか、悪いのか、採用する側は学生の見た目を「量産型」で統一しておきながらも中身は「エース機」を見極め、求めようとしてきます。

量産型の見た目を強いられた若者たちは、「誰にも負けない個性」という武器を持って面接に望みます。
私もそうでしたが、「誰にも負けない個性」なんか有していないにもかかわらず、自分の長所をノートに書き出すという意味不明の儀式を経て「個性」をひねり出し、それを徹夜でエントリーシートに反映させる。
就活とは何ともおかしな伝統です。

就活の時は、採用する側に引かれない絶妙なバランスで「自分らしさ」「個性」を主張するかに注力してきました。
無事、内定をもらい、転職し、そして独立してみて思うのですが、仕事というものは、”自分の個性を殺す”交渉ごとの連続です。あんなに就活で「個性」に向き合ったことが恥ずかしくなるくらいです。
私が身を置く放送業界は「個性」というものが重要視されると思われがちですが、自分のやりたいことと相手のやりたいことをうまくすり合わせることのできる交渉力が要と言えるような気がします。

量産型になるな。他者と一緒になるな。もっともな意見だと思います。
しかし、私は「量産型上等!」派です。
古来より一括大量量産型採用をとってきた日本は、ただでさえ「働きすぎだ」と世界から笑われる国です。
「主役機」だと気負えば気負うほど、何かが「ブラック化」していきそうな気もします。
もちろん、経営者や起業家、芸術家等は量産型思考では駄目ですが…。

よく「私が休んだらその日の仕事、チーム、会社がまわらなくなる」という人がいます。
しかし、私の経験則になってしまいますが、そんなことは決してありません。
仕事における組織の主要人物、エース級が休んでも、周りの量産型で何とか埋め合わせをして、普段より少し忙しかった程度でその日を乗り切ることができます。

「量産機になるな。」

この言葉には「主役機になれ」、つまり「ナンバーワンになれ」という意味が込められているかもしれません。しかし、どちらかというと「オンリーワンになれ」と言っているような気がします。

「いまだにオンリーワンとか言っているヤツにロクな人間はいない」
ある出版社の人がこんなことを言っていました。
「他と戦えるものがないから『オンリー』とか言い出すんだ。で、その『オンリー』が大体おもしろくない」というのが彼の言い分です。私は大筋、納得しました。

量産型になるか、主役機になるかは本人の自由です。
不本意ではありますが、新自由主義の下、推し進められるグロバリゼーションにより、競争というものは激化しようとしています。量産型、主役機どちらであろうと戦うことを強いられうる過酷な時代がやってくるかもしれません。


スタッフ・坂本
(2015/5/28 UPDATE)
番組スタッフ
悲惨さを強調して、怒りをかき立てる。
このような“感情を揺さぶる表現”を用いた報道というのをたまに目にすることがありますが、目にすると記者の狙い通り、意味もなく怒り、憤ってしまうことがあります。
朝日新聞デジタルが先週水曜(20日)にアップした以下の記事を目にしたときもそう。

<凍結精子失い、妻は泣き崩れた 病院が無断で保存中止>

不妊治療を手がけていた大阪市の病院で患者の知らないうちに精子の凍結保存が打ち切られていたことを伝える記事。
患者側の立場から書かれた記事で、取材対象は大阪府の30歳の男性。
事情は少々複雑でポイントを以下にまとめてみました。

・18歳のとき、骨髄異形成症候群と診断され、治療のため放射線治療を受け、抗がん剤を服用。
・副作用で精子のもとになる細胞がなくなる恐れがあったため、2003年に精子を凍結保存。
・9年後の2012年にこの病院を訪れた際、病院から「凍結精子は保管されている」と説明を受けるとともに、「医師の異動で不妊治療ができなくなった。できるだけ早く、別の病院に移管してほしい」と告げられる。
・「すぐに移管先を見つけるのは無理かもしれないので、それまで保管してもらえますか」と尋ねると、病院は「勝手に破棄することは100%ない」と回答。ただし、この点について病院側は否定。
・今年(2015年)1月に結婚。凍結精子を移せるクリニックを見つけ、4月に問い合わせたところ、「移管をお願いしていたが返事がなく、管理が行き届かない状況になった。使用に関して医学的には担保できない」と言われる。
・病院は「連絡がなかった。病院に責任はない」と謝罪にも応じない。
・移管先のクリニックの診断で、男性の今の精子は動いていないことが分かっている。

一言で言えば、一縷の望みである凍結精子を無断で保存中止され、今後、子供ができる可能性も低いというわけです。
*****
「絶対に子どもがほしい」。そう願っていた妻は、夫からその事実を知らされて、泣き崩れた。
*****
こうした表現からも、患者側の憤りが伝わってくるのではないでしょうか。

ただ、その憤りをおさえ、冷静になって記事を読むと、肝心な部分が抜け落ちていることが分かります。
患者側、病院側のどちらに落ち度があったのかという点で、記事を読む限り、双方の主張は食い違っていて(病院は「勝手に破棄することは100%ない」と回答。ただし、この点について病院側は否定)、明言を避けています。
つまり、この記事が示しているのは患者側の憤りだけで、どちらに落ち度があったのか判断する材料は示されていないのです。

どちらに落ち度があったのかが明確に示されるのは、朝日新聞デジタルの記事がアップされた20日の午前5時の約8時間後、20日の午後1時にアップされた日本経済新聞の記事。

<了承得ず精子の凍結保存中止 大阪市立総合医療センター>

こちらは朝日新聞デジタルの記事とは違い、事実だけを伝える素っ気ない記事ですが、どちらに落ち度があったのかという大事な点を明確に伝えています。

この記事によると、2012年4月に責任者の元婦人科副部長が別の病院に異動する際に、無償で凍結保存していた13人分の精子を2013年3月末に廃棄する方針を病院が決定。
朝日新聞で取材対象となっていた男性には2012年の診療の際に「凍結を続けるなら2013年3月までに移管先を見つけてほしい」と話したものの、廃棄については説明していなかった、と明確に書かれています。
さらに、この病院の総務課長の「説明が不十分だったことは否めず、ずさんといわれても仕方がない」といった釈明も伝え、病院側が非を認めていることも分かります。

結局のところ病院側に否があったわけで、朝日新聞デジタルの記事が間違ったことを書いていたわけでもありません。
でも、必要以上に第三者の怒りをかき立てた。わたしはそのように思うのです。

この第三者の怒りについて、医者で研究者だという方が匿名で書いた「はてな匿名ダイアリー」のエントリー「凍結精子の保管を病院が家族に無断で中止したニュースに関して」にはこんな指摘があります。
*****
医療行為は確実性に乏しいサービスなので、不幸な結果が必ずしも医療側の過失に起因するわけではないし、やり場のない怒りや悲しみを理不尽にぶつけられることもあります。
患者の悲しみや怒りはもちろん受け止めます。
しかしながらそれをマスコミが拡散した結果、「大衆の憤り」を受け止めるほどの責任は我々にはありません。
*****

感情を揺さぶる表現を用いた報道は多くの人の目を引くだけでなく、第三者の怒りをかき立てる力があります。そして、怒りをかき立てられると冷静さを失い、肝心なことを見落としてしまう。
それは今回の記事に限ったことではないわけで、感情を揺さぶる表現を用いた報道を目にしたときはとくに注意深く読む癖をつける必要があるのでしょう。

(スタッフH)
(2015/5/26 UPDATE)
番組スタッフ
5月25日(月) 佐々木俊尚 ●メガネ型ウェアラブルは終わっていない?拡張された視界に映る未来

マイクロソフトが1月に発表したホログラフィック・コンピューティング技術、「ホロレンズ」が注目を集めています。4月29日〜5月1日にアメリカ・サンフランシスコで開催されたマイクロソフトの開発者会議でも大きな注目を集めました。
「ホロレンズ」は拡張現実を実現するヘッドマウント型コンピューターで、大きなスキーのゴーグルのような端末を頭に着けると、目の前の現実世界の中にコンピューターグラフィックスが浮かび上がって表示され、しかもそれを指で操作できる、という代物。
このホロレンズ、失敗とみなされたグーグルグラスとは何が違い、どんな可能性を秘めているのでしょうか。
ホロレンズをすでに体験したというジャーナリストの石川温さんにお話を伺います。


5月26日(火) 古谷経衡 ●フィクションは放射性物質をどう扱うべきか

4月25日から公開している映画『寄生獣 完結編』。この映画の問題点を指摘したブログエントリーが話題となっています。
ブログエントリーのタイトルは『「寄生獣 完結編」終盤の問題について』
書いたのは放射線科医だというPhilip K. Anzugさん。
原作にはない、「放射性物質の扱い方」に問題があると指摘しています。
『寄生獣 完結編』で描かれた、問題のある「放射性物質の扱い方」とは?
話題となったブログエントリーをきっかけに、フィクションが放射性物質をどう扱うべきか、考えます。


5月27日(水) 飯田泰之 ●『オワハラ』はバブル回帰!?就職戦線に覚える違和感

今春卒業した大学生の就職率は96・7%と前年同期比2・3ポイント増となり、4年連続上昇したことが文部科学省、厚生労働省が19日に公表した調査結果で分かりました。
そんな状況を受け、企業は学生の囲い込みに必死。内定や内々定を出した学生に対し、企業側が早く就活をやめるように有形無形の圧力をかける「オワハラ」(終活終われハラスメント)なる言葉まで生まれています。
オワハラに違和感を覚えている、東京大学公共政策大学院の鈴木寛教授にお話を伺い、有能な人材を取るために企業が取るべきあり方を考えます。


5月28日(木) 小田嶋隆 ●シナモンいじめリプライ問題の背景にあるもの

サンリオの人気キャラクター「シナモン」の公式Twitterアカウントに対し、数カ月にわたって一部ユーザーから心ないリプライが飛び交い、問題となっています。
3月ごろから、シナモンに対する暴言ツイートが多発。いじり感覚での悪ふざけが多くを占めるものの、その内容はどんどん過激化。
5月に入ってから「悪ふざけが過ぎている」と問題視されるようになり、ついにはシナモンのTwitterアカウントが暴言を吐くユーザーに対してブロックという処置を取り、その数は200人を超えています。
数カ月にわたって続いたシナモンへの暴言ツイート。その背景にあるものとは?
(2015/5/25 UPDATE)
番組スタッフ
鹿児島市のある市議によるツイッターでの発言が批判されています。
今では使うことも少し気後れしてしまう炎上というやつです。
ある市議は、ウミガメの産卵を見守っている地元民が今年の産卵数を掘り起こしてカウントしたことを、きれいに並べられた卵の写真とともにツイート。
「元気に海へ帰れますように」という言葉で締めくくられていることから、地元民が卵の数を数えたことに対して好意的であることがうかがえます。

「ウミガメの卵は動かすと死ぬ」ということで、市議らの行為は「ウミガメ殺し」だと非難されているのです。

圧倒的非難の数を見ると、やはり市議らが悪いようにも思えてしまいます。
しかし、私たちは数々の炎上を見てきた私たちは、中には文脈全体で捉えることを怠ったがために「謂れのない炎上」があることも学んだはずです。
ウミガメに対する正しい知識を持ち合わせいない私も市議のツイートに不快感を覚えましたし、何より「市議」です。
誰のせいかはわかりませんが、良い話題として市議や県議など「地方議員」が取り上げられることが皆無になってしまったことで、イメージ先行で何らかのスイッチが入り、事実・実態を調べることなく市議を攻撃した人もいるかもしれません。

もしかしたら、別に悪いことなのではないかもしれません。
こういう時は感情に従わず、一度、理性で考える余裕を作ることが一番です。
ウミガメの産卵、卵を掘り起こすという好意について調べてみると、以下の記事が見つかりました。

【YOMIURI ONLINE 2015.5.15 アカウミガメ 産卵始まる 日南】

アカウミガメの産卵地として宮崎県の天然記念物に指定されている日南市の海岸で、今年も産卵が始まり、卵が波にさらわれないよう、 日南市野生動物研究会海岸近くの高台に設けた孵化(ふか)場に移す作業が行われたという記事です。
昨年は3511個の卵を確認し、1748匹の子ガメが誕生したといいます。

同じようなウミガメの卵保護活動は鹿児島県でも行われています。
【朝日新聞 鹿児島】アカウミガメの産卵始まる 屋久島・永田浜】

地元NPOにより、軟らかい殻を割らないように約140個が掘り出され、荒波や人の来ない安全な場所へ移されたそうです。

波から卵を守り、孵化を促すための保護活動。宮崎県日南市の昨年の例を見ると、3511個の卵を確認し、1748匹の子ガメが誕生したということですが、「ウミガメの卵は動かすと死ぬ」論を掲げる人にしてみたら、動かさなかったら1748よりももっと多い子ガメが誕生していたに違いないとおっしゃるかもしれません。

これまで何度も刺激の強い投稿に安易に反応してきた私は、もう少し調べてみました。
発見したのが、日本ウミガメ協議会なる非営利活動法人です。
彼らはホームページでウミガメの保護として、子ガメの放流会などをやめ、自然孵化にすべきだと主張しています。

ウミガメの保護とはその言葉自体に具体性がなく難しいものだと言う日本ウミガメ協議会。 具体的な保護策については、次のように述べています。

**************
卵を移植する場合には、その時期がその後の発生や孵化率に重大な影響を与えます。移植する時期としては産卵後24時間以内か、その期間を逃したらできるだけ孵化直前の方が安全です。孵化は6月に産卵したもので約60日、7月に産卵したものはそれより早くなるので、それを目安にするといいでしょう。産卵後2日以降10日位の移動が最も危険をともないます。その理由は胚発生において胚膜が卵殻の内側に発達してくるのですが、その発達過程に動かすことによって、その正常な発達を妨げるからと考えられています。また、移動の際には、卵の天地が移動しないように、柔らかい鉛筆で卵の上に印をつけるようにするといいでしょう。
**************

今回のウミガメ騒動で私がとりあえず信じようと思ったのは、上記の日本ウミガメ協議会の見解です。
組織の顔写真付きメンバー構成を見てみると、 大学でウミガメ産卵生態調査に携わっていた人、大学院で研究する学生、水族館で働いていた人など、明らかに信頼に足るなという印象を受けます。

ウミガメの卵を移動して保護する人、自然に任せることが保護だと考える人。本当に正しいのはどちらかはわかりません。

ただ、動物の問題になると、感情が優先される場合が多々あります。
冒頭で述べた市議の件でももしかしたら、感情に身を任せて他人の道理と非難に乗っかって、市議を攻撃していることもありうるでしょう。
安易に感情に従い行動すると事物の全体像が見えません。繰り返しになりますが、全体像が見えずにもたらされた「悲劇」を私たちは本当に多く見てきました。
全てを理解することは適いませんが、一度、理性に判断を委ねる余裕を設ける。つまり、感情ではなく理性に答えを探させる。
自分の理性にとっておさまりの良い考えを見つける、そう努めることも大切なのではないでしょうか。


スタッフ・坂本
(2015/5/21 UPDATE)
番組スタッフ
自分が好きな作家(小説家、映画監督、漫画家など)が絶賛しているというだけで、その作品についついお金を出してしまうということがあります。
最近で言えば、東村アキコさんが絶賛したマンガ『僕の変な彼女』が掲載されているマンガ誌『モーニング』。

<東村アキコさん絶賛 モーニングの新人賞受賞作「僕の変な彼女」Webで公開され話題に>

わたしは、マンガ大賞2015に選ばれた『かくかくしかじか』で知られる漫画家の東村アキコさんが好きなのですが、その東村さんがTwitterで「私の読んだ漫画の、人生読み切りベスト10いや、ベスト3に入る傑作」と絶賛したのが『僕の変な彼女』。
東村さんが絶賛したからには…という期待のもと、このマンガを読むためだけにモーニングを購入しました。
ちなみに、今は「週刊Dモーニング」で全ページが無料で読めるようになっていますので興味を持たれた方はぜひ。一読の価値ありです。

このように有名人が絶賛した作品に興味を持つというのは、よくあること。絶賛したことがきっかけでバカ売れする、というケースも少なくありません。
ではその逆、誰かがこき下ろした作品がバカ売れするなんてことはありえるのでしょうか。ありえないことのように思いますが、今まさにこうした現象が起こっています。

<民主党・有田芳生議員が「悪質な差別煽動コミック」とツイートした『日之丸街宣女子』が大人気に!?>

今、おかしな売れ方をしているのが、先週金曜(15日)に発売したばかりの『日之丸街宣女子』(青林堂)というマンガ。
内容は、主人公の女子中学生・奏が、街宣・ツイッター・電凸を通じて活動していくうちに「外国人参政権とは?」「ヘイトスピーチとは?」といったことを学んでいくというもので、作者も『ジャパニズム』という掲載誌も有名ではありません。

このマンガがなぜ売れているのかというと、ある有名人がこのマンガをこき下ろしたから。
ある有名人とは、民主党の参議院議員、有田芳生さん。有田さんが先週水曜(13日)、Twitterで本の一部内容の画像付きで以下のようにツイート。
*****
悪質な差別煽動コミックーー岡田壱花・作、富田安紀子・画の『日之丸街宣女子』(青林堂)は、表紙帯から「不逞鮮人」というヘイトスピーチのかたまり。神保町「高岡書店」によると「そんなに売れていません」。野間易通さんなどへの誹謗中傷が満載。
*****

Amazonのカスタマーレビューに「有田先生のおかげで本当に素晴らしい漫画に出会えました!!ほんとうに感謝です!!!」「普段漫画は買わないのですが、某有田芳生大先生が宣伝していたので迷わず購入しました」といったレビューが多数寄せられていることからも分かるように、有田さんのツイートをきっかけにAmazonではランキングが急上昇。
先週金曜(15日)が発売日だったのですが、18時の段階で2位(Amazon 本のベストセラー)にランクインし、発売日にも関わらず品切れ。今日の16時時点でも2位をキープしています。

このマンガの出版社である青林堂のツイッターアカウントのツイートからも売れ行きの好調ぶりは伝わってきます。

・先週土曜(16日)
「皆様のおかげでアマ2位です!品切れのご迷惑をおかけし申訳ありません。」
・おととい(17日)
「おかげさまで皆様から更なるご注文をいただき、アマゾンの表記が1〜3週間に延びました。ただいま重版中ですので再来週辺りにはこの状態も解消するかと思いますが、品切れ状態が続きご迷惑をおかけし申し訳ありません。」
・昨日(18日)
「『日之丸街宣女子』本日3刷決定!しばらく品薄状態でご迷惑をおかけいたしますが、今しばらくお待ちください。」

こうなると気になるのが、有田さんがこき下ろしたことがきっかけで売れた理由。
確かなことは分かりませんが、帯に『「在日特権を許さない市民の会」元会長 桜井誠氏も激賞!!』と書かれていること、在特会と対立する「レイシストをしばき隊」(現:「C.R.A.C」)をモデルにしたと思われる団体が悪者として描かれていること、有田さんが以前から「在特会の活動は人種差別的なヘイトスピーチだ」と批判していることを鑑みれば、その理由がおのずと見えてくるのではないでしょうか。

とはいえ、これだけ売れているとなると、「思想が背景にある購入」だけでなく、思想とは一切関係ない、話題性にのった「やじ馬的な購入」もあったと考えるのが自然。
わたしもそのひとりですが、わたしがこのマンガを購入した動機は有田さんが言うほどひどい内容なのかを自分の目で“確かめるため”でした。

つまり、ネットで騒がれていることを“確かめるため”の消費。
「土の味」がするとネットで話題になった後、品切れとなった「レモンジーナ騒動」のときも、本当に「土の味」がするのか“確かめたるため”にレモンジーナを購入する消費者の存在が指摘されていました。
「ネットで話題⇒その真偽を確かめるために購入」という新たな消費行動はヒット商品を生み出すヒントになりそうな気もしますが、どうなのでしょう。
サントリーにとっても青林堂にとっても想定外の事態であることを考えると、狙ってこうした現象を起こすのは限りなく不可能に近いのかもしれません。

(スタッフH)
(2015/5/19 UPDATE)
番組スタッフ
5月18日(月)佐々木俊尚●蔦屋家電がつくる質販店の文化
5月3日、東急田園都市線二子玉川駅に隣接する商業施設「二子玉川ライズ・ショッピングセンター・テラスマーケット」内に、生活提案型の家電店「二子玉川 蔦屋家電」がオープンしました。
“本やコーヒーを中心に豊かな生活を提案する”というコンセプトが人気の「代官山T-SITE」や「ツタヤ」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が手がける初の家電店で、一般の家電量販店にはないさまざまな趣向が凝らされています。
家電量販店にもかかわらず、店内は、人文、衣、食、住、デザイン、旅行の6ジャンルで構成されており、それぞれ専任のコンシェルジュが常駐。
蔦屋家電が見せる家電の新たな販売スタイル。他の家電販売店にも広がるのか、その可能性を探ります。


5月19日(火)速水健朗●誰もが陥りうる、下流老人という老後
高齢者の貧困問題が深刻化しつつあります。多くのメディアで高齢者の貧困が取り上げられる中、「下流老人」という新たな言葉も生まれました。
下流老人とは、NPOほっとプラス代表理事・聖学院大学客員准教授の藤田孝典氏が作った造語であり、「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と定義しています(藤田孝典『下流老人ー一億総老後崩壊の衝撃ー』朝日新聞出版)。
下流老人とは文字通り、普通に暮らすことができない下流の生活を強いられている老人を意味します。
誰しもに訪れうる高齢者の貧困、下流老人の傾向と対策とは?


5月20日(水)ちきりん●「感動と感謝の押しつけ?『生い立ち授業』の罪」
学習指導要領に基づき、生活科で児童が自らの生い立ちを振り返るという小学2年生の授業が行われています。この授業について、虐待などさまざまな理由で親と暮らせない児童を養育する里親らから戸惑いの声が上がっているのだとか。
家族が多様化する中、子供たちが大勢の前で生い立ちを振り返ることの意義とは?


5月21日(木)小田嶋隆●「日本人の意識」調査から見えてくる社会の変化
2月に刊行された『現代日本人の意識構造』(NHKブックス)という書籍がにわかに注目を集めています。NHK放送文化研究所による「日本人の意識」調査の蓄積データを分析したもので、高度成長末期からバブル崩壊を経て現代まで40年間の様々な変化が見て取れるのだといいます。
NHK放送文化研究所による「日本人の意識」調査。
40年間蓄積されたデータを分析することによって見えてくる、日本社会の変化とは?
(2015/5/18 UPDATE)
番組スタッフ
洋画は字幕で観るか、吹替えで観るか。
月並みなこの問いに対し、「字幕だ」という答えを選択するのは多数派。
私も映画館で海外作品を観る時は、字幕一択です。

テレビで映画を観るとなると、字幕一択とはいきません。
テレビで放送される洋画の中には、1年に1回は見るなというヘビーローテーションの作品があります。最近は映画枠に映画ではない特別ドラマやドキュメンタリー番組が放送されるようになり、ひと昔前より減ってしまいましたが…。
私が幼い頃から放送されているヘビーローテーション作品は、時を経た今でも字幕よりも吹替えの方がしっくり来たりします。

よく原作が映画、ドラマ、アニメを超えることはないと言い切る人がいますが、私はそうは思いません。
時として、原作を知る者の想像力を遥かに超えてくる作品があったりします。そんな作品に出会うと、原作が向かう場所は本棚の隅。同じタイトルでも、映像化されたDVDをそれ繰り返し視聴してしまうのです。
吹替えにも似たような可能性があるのではないでしょうか。『ビバリーヒルズコップ』などのエディ・マーフィー作品は字幕で見るより、下條アトムさんや山寺宏一さんの声優の多彩さが遺憾なく発揮される吹替えこそ、観る甲斐があると私は感じます。

ご存知の通り、最近では映画のキャンペーンの一環なのか、大きな力が働くのか。
本職の声優ではなく、タレントが起用されることも珍しくありません。もはや普通の光景と言えるでしょう。

ネットでは下手すぎる吹替えがたびたび話題になります。
本職の声優を起用していればいいものの、安易にタレントを起用してしまったばかりに、棒読みすぎて内容が入ってこない。オリジナルの良さをかき消してしまう…。
映画館で吹替えが選択されないのは、こういった起用法に問題があるからかもしれません。
本職の声優ではなく、タレントを起用することで映画の本質が見えてこないのではないか。杞憂かもしれませんが、そんな憂いも沸き起こります。
しかし、本職の声優はタレント、芸能人を映画やアニメの声優に起用することを肯定します。
それが『メタルギア』シリーズのスネーク役、『攻殻機動隊』シリーズのバトー役で確固たる地位を確立している大塚明夫さんです。
自身の著書『声優魂』の中で、次のように述べていました。

***************
私からすると、芸能人が吹替えをやって何が悪いのかわかりません。
声優、芸能人、というくくりがそもそも間違っていると思います。いい声優がいい俳優たり得るかはわかりませんが、いい俳優であればいい声優たり得るだろうというのが私の考えです。
(中略)
私も出演した『ハウルの動く城』の木村拓哉さんになら文句を言えると思っている人は多いかもしれません。何しろジャニーズだし、アイドルだしでなんだか気に食わない、というわけです。しかし私はあの作品の木村拓哉さんは素晴らしいと思います。彼の演技のおかげで、ハウルはその辺の声優が演じる二枚目よりよっぽど生々しく、立体的な人物になっていました。
結局のところ、声優だろうが芸能人だろうが、「良い芝居ができるかどうか」がすべてなのです。

【『声優魂』大塚明夫(著)/星海社】
***************

同著によると、映画の吹替えには比較的若い声優が起用されるようです。映画産業の低迷、若い声優の人材不足も影響しているのかなとも思いました。

芝居の何たるかを私に語ることは適いません。
しかし、受け手として字幕であろうが、吹替えであろうが「いい芝居」に圧倒されたいもの。
字幕作品で作り上げられたイメージのハードルを、軽々と越えてきてほしいもの。
吹替えやアニメの声優のお仕事が来た時のために、いい芝居ができる能力を身につけておいて欲しい。それがせめてものマナーと敬意ではないかと思います。


スタッフ・坂本
(2015/5/14 UPDATE)
番組スタッフ
「ボール使用禁止」「スポーツ禁止」「大声禁止」「かけっこ禁止」など禁止事項ばかりが並び、やれることが極端に少なくなっている最近の公園。
背景にあるのは、禁止事項に書かれていない行為が原因で、公園内で事故が起きた場合、管理している自治体が訴えられるリスク。
つまり、自治体がリスク回避のため、禁止事項を増やしているというわけです。

禁止事項が多くても遊具さえあれば…とも思いますが、グローブジャングルなど動きのある遊具が公園などから姿を消しつつあるといいます。

<回転遊具:各地で撤去の動き 行政、リスク恐れ>

グローブジャングルとは回転するジャングルジムのこと。名前だけではピンとこないという方も、こちらを見ていただければ、遊んだ記憶が蘇ってくるのではないでしょうか。そう、目が回って吐き気がするほどに回転させたアレです。
目にしただけでテンションが上がった、こうした遊具が姿を消し始めたのは2000年代初め。
この時期に、老朽化したグローブジャングルで子供が指を切断する事故など、老朽化した遊具が原因の事故がいくつか発生。事故をうけて、老朽化した遊具が一斉に撤去され、そのまま代わりの遊具を設置しないケースが多いようです。
つまり、背景は禁止事項と同じでリスクの回避。

ボール遊びやかけっこ、声を出すのも禁止で、遊具の種類も限られるとなると、子供は公園で何をして遊べばいいのでしょうか。
ちなみに、わたしの家の近所にある公園の禁止事項は「ボール投げと花火等あぶない遊び」で、設置されている遊具はブランコ、すべり台、うんていのみ。
禁止事項だらけの公園に比べればましな方ですが、それでも、平日、休日、時間を問わず、遊んでいる子供を見かける機会はごくごく稀。見かけたとしても、携帯ゲーム機で遊んでいる子供が多いような印象があります。
そうなると、「公園でわざわざ…」と、携帯ゲーム機で遊ぶ子供を嘆く声もありますが、禁止事項が増え、遊具も姿を消しつつある今、これはやむを得ないことのように思います。
だって、他にやれることがないんですもの。

リスクを回避するため、とりあえず禁止しようとする風潮。これは、官邸ドローン事件以降、すっかり悪者にされているドローンをめぐる空気にもあらわれています。
政府がドローンの利用を規制する法制化を進めるなか、昨日(11日)、大阪市につづいて、東京都が管理するすべての都立公園と都立庭園81園でドローンの使用を禁止していたことが判明しました。
*****
千代田区の日比谷公園の出入り口約十カ所には、ドローンの使用を禁じる掲示が設置された。
管理事務所と警視庁丸の内署の連名で「見かけた方は、一一〇番をお願い致します」などと促している。
<「東京新聞」2015/5/12朝刊より抜粋>
*****

禁止した理由は落下した際の危険性だといいますが、これはあまりにも短絡的。政府が進める規制も、危険性を正しく理解したうえでの対応とは思えません。
ドローンの規制をめぐっては、「規制は社会の足を引っ張る」という指摘もあります。
*****
「ドローンって怖い」という反応が先に立ち、規制に向けて立法という方向へ進みつつある。
科学技術に対する無知が恐怖を生み、恐怖が間違った法律を作り、社会の足を引っ張るという負の連鎖が起こりつつあるように見える。
<ノンフィクション作家・松浦晋也さんの記事「ドローンを規制すれば日本は衰退する」より抜粋>
*****

いつの頃からか日本に定着してしまった、「リスクを回避するためにとりあえず禁止」という風潮。
公園もドローンも、禁止することによって奪われるものの大きさを考えれば、こうした風潮を見直すときがきているのかもしれません。

(スタッフH)
(2015/5/12 UPDATE)
番組スタッフ
5月11日(月) 佐々木俊尚 ●ドローンの規制は必要か、不要か

おととい(9日)、長野市の善光寺で御開帳の行事が行われている最中に、小型の無人飛行機、ドローンが境内に落下する事故が発生。横浜市の15歳の少年が「操縦を誤って落としてしまった」と名乗り出たということで、警察が状況を詳しく調べているといいます。
先月22日に発覚した官邸ドローン事件以降、危険なものとして取り上げられているドローン。政府はドローンの利用を規制する法整備の検討を始めたといいます。
果たして、ドローンは規制が必要なほど危険なものなのでしょうか。
主に軍事問題をテーマに取材、著作活動を行う作家の大石英司さんにお話を伺い、ドローンの危険性という観点から規制が必要かどうか、考えます。


5月12日(火) 古谷経衡 ●ギュンター・グラスの思想から学ぶべきこと

先月13日に亡くなった、ドイツのノーベル文学賞作家ギュンター・グラス。
代表作の『ブリキの太鼓』は、ナチスのいかがわしさや小市民の愚かさを毒のある筆致で記した長編小説で、世界中でベストセラーとなりました。
2006年に刊行された自伝「玉ねぎの皮をむきながら」では、第二次大戦末期にナチスの武装親衛隊に所属していたことを告白し、全世界に衝撃を与えています。
現代社会を鋭く風刺する作品で知られ、日本でもその言動が注目されてきたギュンター・グラス。その思想、生きざまから日本人が学び取るべきこととは?


5月13日(水) 飯田泰之 ●働きに出た“少数派”、サザエさんへの違和感

言わずと知れた国民的アニメ「サザエさん」。4月26日の放送で見られた””ある変化”をめぐって物議を醸しています。
ある変化とは、専業主婦のサザエさんがスーパーマーケットのパートとして働きに出たこと。さらに、働きに出たものの、数日でパートを辞めてしまう。
この話はツイッターで盛り上がり、「サザエさんがパートで働くとは」と驚きのツイートが相次ぎ、辞める段になると「一日で辞めるという暴挙」と批判の声があがりました。
あえて昭和の家庭モデルを貫き通すサザエさんを通して、現代の私たちは何を感じ取ることができるのでしょうか。
女性の活躍が叫ばれる時代において、サザエさんに課せられた役割はあるのか、考えます。


5月14日(木) 小田嶋隆 ●女性週刊誌の異変にみる時代の空気

芸能ゴシップや美容・健康情報というイメージのある女性週刊誌に異変が起きています。
<安倍総理大臣、女性になんでも押しつけないで!><戦争を知らない安倍首相へ>など、安倍政権をストレートに批判する硬派な記事が目立ち、原発再稼働や憲法改正などへ疑問を投げかける記事も少なくないといいます。
なぜ今、女性週刊誌に異変が起きているのでしょうか。また、その異変から読みとれる時代の空気とは?
(2015/5/11 UPDATE)
番組スタッフ
ゴールデンウィーク中から何度となく目にする、箱根山の火山活動のニュース。
どのメディアもここ数日、必ずこの話題を取り上げているのはご存知の通りです。
何となくワイドショーを見ていると、温泉旅館への取材VTRがありました。

そのVTRに対して、コメンテーターをつとめるお笑い芸人がこう述べました。

「僕もこの旅館に行かせていただいたんですが…」

「させていただきます」という謙譲語への違和感は以前から指摘されているように、見聞きすると「おや?」と思う瞬間が多々あります。

先月、行われた統一地方選。選挙期間中、東京都内のある駅前で、区議選に出馬する若い男性候補者が有権者に向けて熱いメッセージを投げかけていました。それを耳にした私が気になったのは次の言葉です。

「○○区から日本を変えさせていただきます!」

そこはもう「日本を変えます!」で良いでしょう。
日本の選挙キャンペーンは有権者に政策を訴えるよりも、自身への投票を促す「お願い」が目に付きます。
この候補者が特殊なのかもしれませんが、おかしな「させていただきます」によって、政策を訴える場面ですら「お願い」に変わってしまっているのだなと痛感しました。
何より。「日本を変えます!」と言い切ることに自信がないのかしらと疑いたくなってしまいます。この候補者が当選したかどうかはわかりません。

政治つながりでもう一つ。
もうその存在を忘れられている「浪速のエリカ様」こと上西さゆり衆院議員の国会欠席問題についての釈明記者会見。恥ずかしくてあまり堂々と言えたことではないのですが、私はこれを全て見てしまいました。
しかも、ネットで生配信されていたものをリアルタイムで。しかも、3時間。妻と。
生配信は金曜日でしたので、1週間の中でも比較的貴重な時間帯を費やしてしまったのです。

上西議員については、次のような評価を耳にしました。
「こんなに人を苛立たせる人間も珍しい」
テレビでも活躍する某女性弁護士は「あのアイメイクがカンに触る」とコメントしたとか。

私が記者会見を見ていて、神経がざわついたのが「させていただきます」の乱発です。

「説明をさせていただきたい」
「療養をさせていただき」
「お答えをさせていただいて」
「会食をさせていただいて」
「お約束をさせていただいて」
「反省をさせていただく」
「合流をさせていただいた」

「【全文】上西小百合議員「報道陣を怒鳴ったのは”通行人の迷惑になるから”」 私的旅行疑惑に関する記者会見」

彼女にマイクがわたり、釈明のターンになるたびにこれらの「させていただきます」が登場します。
誰に許可を得ようとしているのか、何に対してへりくだっているのかが全くわからず、これぞ慇懃無礼。
そして何よりも、回りくどくて釈明が頭の中に入ってこない。

実際に「させていただきます」を使いすぎる人は増えているようで、敬語講師の山岸弘子さんは次のように解説しています。

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なぜ、「させていただきます症候群」と呼ばれるほど、「させていただきます」を多用する人が増えているのでしょうか。理由は、いくつか考えられますが、理由の一つは、「させていただきます」は便利な言葉だということです。「いたします」をつけて謙譲語にできない動詞があります。たとえば、「帰ります」「始めます」「終わります」には、「いたします」をつけることができません。日常的に使う言葉であるだけに、「謙譲語で表現したい」と思うのが自然な気持ちです。そこで、「させていただきます」が登場します。「させていただきます」は、考える余裕がないとき、言葉を選ぶ余裕がないときにも使いやすい言葉です。

『視点・論点 「させていただきます症候群」』
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私の妻がお世話になったある大学の文学部の教授が、こんなツイートをしていました。

【ビジネスメールが来た。わずか5行の文章に5回も「いただく」が使用されていた】

ビジネスメールは確かに、相手の顔が見えないので、できるだけ丁寧になろうとして敬語、謙譲語を盛りだくさんにし、回りくどくなってしまいます。
私も注意しないと、「いただく」「させていただきます」だらけの気持ち悪い文面になってしまっていたりします。

「させていただきます」は確かに便利です。しかし、無くても交渉ごとは成立します。
自分を相手よりも下の立場にいるかのように見せることで足をすくわれないようにする、極力失敗を避ける「ニセ弱者戦法」のようにも思えます。
弱者を装うことも現代社会を生きる上での知恵かもしれませんが、へりくだることなく”丁寧に戦える”正しい交渉術を知らないだけかもしれません。


スタッフ・坂本
(2015/5/7 UPDATE)
番組スタッフ
編集者の竹熊健太郎さんによると、マンガの一ジャンルとして「機能漫画」というものがあるらしく、今ネット上で問題になっているマンガもこれに属するようです。
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これは竹宮惠子先生名付けるところの「機能漫画」というやつ。広告漫画などなんらかの主張・目的のために描かれる漫画だ。
<憲法改正の必要性訴えるマンガ、自民党が発表 若者にアピール>
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憲法改正の必要性を訴えるため、自民党の憲法改正推進本部がつくったマンガ「ほのぼの一家の憲法改正ってなぁに?」。
おととい3日の憲法記念日を前に発表され、発表直後から内容のでたらめさを指摘する声が相次いでいます。

このマンガは全64ページという結構な大作で、今も自民党のHPで全ページが閲覧可能。
登場人物は、一郎(35歳)、一郎の妻・優子(29歳)、一郎の息子・翔太(2歳)、一郎の父・司郎(64歳)、一郎の祖父・千造(92歳)という、苗字が「ほのぼの」の一家5人。
この5人が憲法改正について語り合うという形式で話は進み、「外国人の手によって8日間で草案が固められたこと」といった現在の憲法の問題点が会話のなかに盛り込まれ、読者に対していかに憲法改正が必要かを訴えかける内容となっているのですが、注意深く読んでいくとでたらめな記述が散見されます。

たとえば、「日本では一度も憲法の改正をしていない」という流れの中で描かれている以下のようなやりとり(※マンガの47〜48ページ)。

一郎:ほかの国では憲法改正ってやってるのかな
優子:憲法って大事ですもの そう簡単には変えられないんじゃない?
司郎:意外とやってるみたいだぞ アメリカが6回 韓国が9回 フランスは27回 ドイツは…60回
一郎・優子:60回!?
優子:ドイツ人って堅いイメージがあったけど…
千造:意外か?ドイツも日本と同じ敗戦国じゃが憲法改正はきちんとやっとるぞ

この内容の不備を指摘するのが「BUZZAP!」のこちらの記事のこの記述。
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憲法改正の回数ですが、ドイツが60回も改憲しているということが驚きを持って語られていますが、永久条項と呼ばれる絶対に変えられない条項が存在していることへの説明は省かれて単純比較されるというミスリードが為されています。
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ドイツ憲法は、人権などは「永久条項」として絶対に改正できないようになっているのですが、そこには一切触れていないため、「憲法改正を一度もやっていない日本は変」と思わせるようなつくりになっています。

他にも挙げていったらキリがないのですが、たとえばこんなやりとり(マンガの10〜11ページ)。

優子:ところで今の憲法っていつからあるの?
一郎:え〜と戦後すぐだから…
司郎:昭和21年だからワシも生まれる前 70年くらい前だな
(中略)
一郎:その頃ってどんな時代だったか想像つかないなぁ
司郎:インターネットは当然なし 電話も村にひとつ みんな手紙だったと思うぞ
一郎・優子:ええっ!?江戸時代ですかっ!?
司郎:あの頃からずいぶん文明は進化したからなぁ
一郎:そんな昔にできた憲法を使ってたのかぁ
優子:ケータイもネットもなかった時代の憲法で今の社会についてこれるのかしら?

今の憲法が時代遅れであり、改正が必要と思わせるような内容ですが、「明日の自由を守る若手弁護士の会」のブログでは、この主張のおかしさを次のように指摘しています。
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憲法は国のあり方を定める根本法なので、簡単に変えられると困るんですね。だから、憲法は一般の法律よりも改正要件が厳しくなっています(これを「硬性憲法」っていいます)。
それだけに、憲法は時代の変化にも合わせられるよう、フトコロ深〜く作られています。
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今回は上記のような指摘があったからおかしさに気付けたものの、自力でおかしさに気付くことができた人はどれだけいたでしょうか。
憲法の間違いを指摘するには深い知識が必要なので、今回のマンガはとくにおかしさに気付くのは難しかったように思います。主張を鵜呑みにしてしまった可能性も否定できません。

また、マンガの読みやすさという点にも注意が必要です。
漫画家の田川滋さんは、今回のマンガが属する「機能漫画」の特徴を「面白いとかつまらないとか意識をする前に最後まで読めてしまう事が重要」と説明していますが、、、
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「機能漫画」と言うのは、個の作品として”傑作”である必要は無いのですよね。面白いとかつまらないとか「意識」をする前に最後まで読めてしまう事が重要で、その方が「機能」を果たせる。
<憲法改正の必要性訴えるマンガ、自民党が発表 若者にアピール>
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すらすら読めることの裏にはなんらかの罠が潜んでいることを常に意識した方がいいのかもしれません。厚労省の年金マンガが今年1月に炎上したばかりであることを考えると、用心するに越したことはないようにも思います。

(スタッフH)
(2015/5/5 UPDATE)
番組スタッフ
5月4日(月)佐々木俊尚●SNS時代における需要予測の難しさ
サントリー食品インターナショナルは先月に発売した「南アルプスの天然水&ヨーグリーナ」の受注量が想定を大きく超えたため、当面出荷停止とすると発表。3月末に売り出した炭酸飲料「レモンジーナ」の販売休止からわずか2週間、異例の連続品切れとなりました。
サントリー新商品の連続品切れ騒動。
そこから見えてきた、SNS時代における需要予測の難しさを検証します。


5月5日(火)速水健朗●性同一性障害に関わる子供たちに必要なこと
4月30日、文部科学省は「性同一性障害に関わる児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」を公表しました。
渋谷区の「同性カップルのパートナーシップを結婚に相当する関係として認め、
証明書を発行する」という条例が話題になりましたが、
性的マイノリティ/LGBTの問題は、大人に限ったことではありません。
むしろ、よりケアが必要なのは子どもたちの方かもしれません。
性を理由とした不登校、いじめ、自殺は後を絶たないといいます。
大人はなにができるのでしょうか、、、。
当事者はもちろん、その友だちの児童にも教育、支援が必要なこの問題について、
「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」の明智カイトさんに伺います。


5月6日(水)代演:飯田泰之●週休3日制がもたらす効果
2020年に開催される東京オリンピックに向けて、文部科学省が掲げている「夢ビジョン2020」に含まれている週休3日制の導入案が、ネット上で議論の的になっています。
「夢ビジョン2020」とは、2020年を「新たな成長に向かうターゲットイヤー」として位置づけ、「日本社会を元気にする」ための案を打ち出したもの。オリンピックをきっかけにした日本文化の世界発信やスポーツ振興のための計画が提案されているほか、新たな日本のライフスタイル確立のためのアイデアも含まれていて、そのなかのひとつとして「週休3日制」の導入案があります。
ネット上で議論になっている「週休3日制」。会社、社員双方にどんな効果をもたらすのか。


5月7日(木)小田嶋隆(コラムニスト)
ケガのため療養中だったコラムニストの小田嶋隆がいよいよ木曜日パーソナリティーとして初登板!
(2015/5/4 UPDATE)

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