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村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝
栗原 康 (著)
税込価格:1,944円
出版社:岩波書店
ISBN:978-4-00-002231-6

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大正時代の無政府主義者、伊藤野枝の評伝である。伊藤野枝というと、大杉栄の恋人だとかウーマンリブの元祖などとよく紹介されるが、この評伝によるととんでもない生き方をした人のようだ。とにかく自分の気持ちにしたがってひたすら生きた人だった。貧乏の生まれだったが、読書が好きで、女学校に行きたいと思えば自ら叔父の代準介に懇願の手紙を三日おきに送り続けたり、夫がいても好きな人ができればその人の元へ行ったり、子どもの名前には魔子と名付けた。不倫同士で結ばれた大杉栄との間の子どもで、二人の関係は道徳的におかしい、悪魔的だと世間から叩かれていたので、「じゃあそれでいいよ」と名付けたそうである。いかにも現代なら問題になりワイドショーで取り上げられそうな名前である。その後野枝は大杉栄と共にアナキズム運動に身を投じていく。
このような自由な生き方はいつの時代でも魅力的で、また、実際にそのような行動に出るのは難しい。その時代の社会道徳に従って行動した方が何かと丸く収まるし、それから外れるとあっという間に袋叩きに合う。この閉塞感は大正時代でも、自由の幅が広がったように思われている現代でも変わらないのかもしれない。しかし、それに抗う生き方はもちろん存在し、諦めてはいけないと思わされる。伊藤野枝の勢いに、元気が出る1冊です。


(評者:ジュンク堂書店池袋本店 人文書担当 井手)


(2016/6/9 UPDATE)

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