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慟哭の谷 北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件 (文春文庫)
木村 盛武 (著)
税込価格:659円
出版社:文藝春秋
ISBN:978-4-16-790534-7


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東北地方でクマに襲われ、死亡する事故が相次いでいます。秋田県鹿角市では先月下旬から5人が襲われて死亡。射殺されたクマの体内から人体の一部が見つかったこともショッキングに報じられました。
こうした時世を反映してか、クマ関連の二冊の本が売れているといいます。
一冊は、1982年に出版された吉村昭さんの『羆嵐』。もう一冊が本書で、二冊に共通するのは「三毛別ヒグマ事件」。
1915年に北海道三毛別で起き、8名の死者を出した史上最悪のヒグマ襲撃事件で、本書はこの事件の生存者の証言をもとに、事件の真相に迫ったノンフィクションです。
「バリバリ、コリコリ……あたかも猫が鼠を食うときのような、名状しがたい不気味な音がする」
こうした生々しすぎる描写がクマへの恐怖感を増幅するだけでなく、現代にも通じる教訓も見えてきます。
三毛別はクマの出没が多いことで知られていたのですが、人への被害がなかったため、対策がないがしろになったと著者は指摘。一方、秋田鹿角市で人を襲ったのはツキノワグマ。三毛別のヒグマとは違い、臆病で人間を怖がる動物とされてきたのですが近年は人慣れしつつあったのだといいます。
クマによる死亡事故が相次いでもなお、タケノコ採りに行く人が絶えない現状からも、クマに対する人の慢心が見え隠れ。そんな今だからこそ、クマは怖しい動物と再認識するためにも読んでおきたい一冊です。

(評者:スタッフH)
(2016/6/22 UPDATE)

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