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製造迷夢 新装版
若竹 七海 (著)
税込価格:672円
出版社:徳間書店
ISBN:978-4-19-893778-2


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渋谷区猿楽町署の刑事・一条風太は、とある事件をきっかけに、モノに残っている残留思念を読むことができる井伏美潮と出会う。超能力の類を信じない一条は最初のうちは反発するものの、徐々に心を開き、二人は数々の事件の謎をといてゆく。
少しこわもての男刑事と不思議な能力を持った少女のコンビが奇妙な事件をといてゆく連作ミステリ、というとそれだけでサクサクっと読めてしまいそうなライトな印象を持ちがちだが、そんな軽い気持ちで本作を読んだら痛い目にあうだろう。

ネタバレになるので多くは語れないが、一人称の上手さがこの小説の面白さの一つだ。油断して読み進めていくと、見事に騙される(その一人称が誰なのか推理しながら読み進めていても騙されたが)。
また、各章を読み終わるごとに残る何とも言えない後味の悪さや、特殊な能力を持つ美潮とそれを持たない一条の苦悩から、事件の謎がとけたからといって全てが解決するわけではないという現実を思い知らされる。
刑事ものの要素と超能力の不思議さを融合させるエンターテインメント性を持った小説でありながら、人の心の闇の部分をところどころで匂わせる、いい意味で怖い小説であった。


(評者:文教堂書店市ヶ谷店 文庫担当 吉永文)


(2014/1/23 UPDATE)

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