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ねずみに支配された島
ウィリアム・ソウルゼンバーグ (著), 野中 香方子 (訳)
税込価格:1,944円
出版社:文藝春秋
ISBN:978-4-16-390081-0


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7月29日は土用の丑の日。今年はウナギが豊漁だと報道されています。去年は我慢したウナギを、少し安くなった今年こそは食べてやるという人もいるかもしれません。
そんなウナギは絶滅が危惧されています。それでもまだ日本人は何とかして文化として、ウナギを食べる道を模索しようとしています。
地球が誕生して以来の生物史を振り返ってみると、実に様々な動物、植物が「絶滅」というバッドエンドを迎えています。

強い生き物(人間含む)が、弱い生き物を殺し尽くすという悲惨な現実を、軍事用語などあえて残酷な表現を用いて、種の絶滅を巡る命のやりとりを、「戦争」であるかのようにつづった本書。
生き物の絶滅は全て人間のせいだと、飽きるほど私たちは聞かされて来ました。
しかし、本書で語られるのは、そのようなお話ではありません。世界に点在する「島」を舞台に繰り広げられた、種の絶滅の物語なのです。
ニュージーランドの「飛べないオウム」カカポや、アリューシャン列島のウミスズメ、バハ・カリフォルニアの海鳥など、島特有の進化を遂げた生物が外来生物によって絶滅の危機に瀕し、その保護に立ち上がった人々の苦難の歴史を描いています。
生物を滅ぼした戦争は、生物を生かすための戦争へと変わっていきます。現在、地球上の800以上の島々で、生態系を破壊する動物の駆除が進められており、空中からヘリで毒餌を散布し、ねずみを皆殺しにするという恐ろしい方法が用いられようとしました。
最近の研究でねずみには喜びの感情があることがわかったと言います。そして、“戦争”はいかに人道的にねずみを大量殺戮するかという方法の模索へと変わっていくのです。

生物の絶滅を戦争に例えるところも、皮肉とユーモアに満ち満ちていて、読んでいて飽きのこないサイエンス・ノンフィクションです。

評者:スタッフ・坂本
(2014/7/23 UPDATE)

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