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隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働
ルトガー・ブレグマン (著),野中 香方子 (訳)
税込価格:1,500円
出版社:文藝春秋
ISBN:978-4-16-390657-7

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隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働
ルトガー・ブレグマン (著),野中 香方子 (訳)
税込価格:1,620円
出版社:文藝春秋
ISBN:978-4-16-390657-7

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数百年前、そして数十年前と比べても何倍も豊かになっているにも係わらず、我々は貧富の差に苦しみ、消費社会に踊らされ、未来に希望を持てずに精神を病み、少子高齢化に怯え、そしてAIやロボットに仕事が奪われる恐怖にさらされたりしています。
本書でその処方箋として提案されるのは、ベーシックインカム。ベーシックインカムとは、政府がすべての国民に対し、最低限の生活を送るのに必要な現金を無条件で定期的に支給するという構想のこと。働かなくてもみんな暮らせる制度、なんて夢の世界のようですが、古くは16世紀のトマス・モアから、右派から左派までたくさんの人々が支持してきました。カナダやイギリスの一部で似た制度が導入されたこともあり、更にはアメリカにおいて、ニクソン大統領が一部導入を検討していたというから驚きです。しかしながら、反対論やある種の受け入れ難さがあるのも事実であり、現在まで長期間・広範囲にわたって導入されてはいません。しかし最近またベーシックインカム論が熱いのです。
著者のブレグマンは、多くの資料を元に、貧困をなくすためには直接お金を与えるのが最も効果があり、また以前導入されたときの資料を再分析すると、失敗と思われていたものも実は大成功を収めていたと主張します。もちろん大成功といっても、限られた期間や一部の地域のみの話であり、それでベーシックインカムがよい結果をもたらすと結論付けることはできません。実際にはまだまだ議論の余地があるでしょう。
けれど、到底考えられなかった奴隷の解放や女性の参政権が当然のものになったように、「働かざる者食うべからず」という規範も過去のものとなるかもしれません。「お金に困らないと人は働かない」「貧しい人はお金を有効に使えない」といった思い込みを捨て、新しい経済の在り方を真剣に検討するときが来ているようです。


(評者:ジュンク堂書店池袋本店 社会担当 安斎)


(2017/8/10 UPDATE)

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