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動物学者が死ぬほど向き合った「死」の話 生き物たちの終末と進化の科学
ジュールズ・ハワード (著),中山 宥 (訳)
税込価格:2,268円
出版社:フィルムアート社
ISBN:978-4-8459-1638-2


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本書は、動物学者である著者がさまざまな生き物の「死」を調べ、専門家に話を聞くことで、人を含む生物の「死」の本質を浮き彫りにしていく記録です。
私が興味深く読んだのは2テーマで、1つは「自殺」。
人以外の生き物が自殺をするのかという興味深いテーマですが、生き物は全般に、性行為がらみの理由を除けば、自殺しない、トキソプラズマなどの寄生生物に操られないかぎり、みずから命を絶つことはまずないのだといいます。
もう1つは「動物は人と同じように知っているのか、知っているならどの程度なのか」。
世間一般には「多くの生き物は、人間と同様、仲間の死を悼み、喪失感や寂しさを抱く」と言われていますが、著者が話を聞いた認知科学者アレックス・ソーントンはこうした考え方に異議を唱え、人間には知りようがないはずだと主張します。
面白いのはここからで、著者はアレックスに、チンパンジーが死んだわが子を放そうとしないのは、人間と同じ心の痛みのせいと思いたいと伝える。それに対して、アレックスはこう答えるのです。
「わたしはそうは思いませんね。何らかの疑問に答えを出せないと認めることが、なぜ無情なんです?わたしに言わせれば、自然研究の醍醐味は、まだわからないことが数多く残っているところにあります。(略)基本的には答えが出せるのがふつうです。でも、根本的に解決不能の疑問だってあるわけです」
人は疑問があると納得のできる答えを見つけようとします。ただ、答えの出ない疑問もあるわけで、そうした疑問の大切さや味わい方を自然体で示してくれる一冊です。

(評者:スタッフH)
(2018/5/17 UPDATE)

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