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文芸評論家の杉江松恋さんが選ぶ、今年読み逃し厳禁の3冊はコレだ!(2016/12/8)

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木曜日は「カルチャー」。


今日は、紀伊國屋書店のランキングトップ3と
文芸評論家・杉江松恋さんが選ぶ
2016年の本ベスト3をご紹介します!
紀伊國屋書店のランキングから。



第3位『 汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師 インテリジェンス 畸人伝 』手嶋龍一(マガジンハウス)

第2位『 全部レンチン! やせるおかず 作りおき〜時短、手間なし、失敗なし〜 』柳澤英子(小学館)

第1位『 ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部 特別リハーサル版 』J.K.ローリング(静山社)


そして今日は、文芸評論家の杉江松恋さんが選ぶ、今年読み逃し厳禁の3冊をご紹介しました。
題して「もうすぐ2016年も終わりですが2017年になったとしても読み逃してはいけない杉江松恋さんが選ぶ2016年の本ベスト3」!!第3位から順にご紹介していきましょう。


第3位『 らぶれたあ オレと中島らもの6945日 』鮫肌文殊(講談社)

こちらは人気放送作家・鮫肌文殊さんの著書。中島らもさんというマルチクリエイター、天才作家に対する尽きないラブレターです。鮫肌文殊さんは大阪時代に中島らもさんと知り合い、その才能に惹かれてご自身も放送作家の道へと入られました。
らもさんはお笑いの方にも長けていらっしゃって、ご自分で落語をやられたり、書かれたり、コントの番組を書かれたりと大変笑いのセンスがあったということで、その天才作家がどういう風に歩んでいたのか、ということが書かれていて、読んでいて大変笑えるエッセイでした。
中島らもさんは、誰にでも大変優しい方だったので、これを読むと誰か他の人に絶対優しくしてあげたくなると思います。今年読んだ中で、一番素敵な人が出てくる本だと思います。


第2位『 蜜蜂と遠雷 』恩田陸(幻冬舎)

「夜のピクニック」「ユージニア」などで知られる人気作家、恩田陸さんの小説。今年出版された国内の小説で一番楽しめる作品だと思います。
日本で行われるピアノコンクールが舞台で、一次予選から決勝まで多くの人が戦って、そして破れていくこの物語には4人の天才が登場します。一人は無名だが、天才音楽家に育てられた少年。もう一人はアメリカのジュリアード音楽院で学んでいる、将来を嘱望された青年。もう一人は一度ピアノの道を捨ててしまったが、また戻ってきた女性。そして最後の一人は働きながらピアノを演奏していく道はないか、と模索している男性。この4人がそれぞれに違った形で才能を発露させていく物語で、その美しいピアノの音が小説を通して聞こえてきそうな綺麗な表現で、ピアノの演奏会にぜひ行ってみたいと思わされる一冊です。
恩田陸さんは数々の賞に輝いていらっしゃるのですが、まだ直木賞は受賞していらっしゃいません。が、今後間違いなく直木賞候補になるであろう作家なので、今のうちに絶対に読んでおかれた方が良いのでは、と思います。


第1位『 堆塵館(アイアマンガー三部作1) 』エドワード・ケアリー(東京創元社)

もしかすると、いま世界で一番面白い小説家もしれません。19世紀後半・ロンドンの巨大なお屋敷が舞台。そこで育ったクロットという少年と、ひとりの少女が出会うという“Boy Meets Girl”の小説です。
クロットという少年が育っている家はちょっと変わった家で、アイアマンガーという一族の屋敷なんですが、その一族は必ず、生まれるとひとつの「がらくた」を与えられ、それを大事にしないとならないという掟があります。外から来た少女は名前を取り上げられてしまい、アイアマンガーの一員を名乗らないといけないのですが、その外から来た少女と館の中で暮らしてきた少年が出会うとどうなるのか?という物語なのですが、名前を取り上げられたりするあたりがちょっとジブリの「千と千尋の神隠し」を思わせる部分もあったりして、例えるなら“ダークなジブリ映画”みたいなところもあり、ファンタジーものが好きな方には、絶対に楽しんでいただけるのではないかと思っております。
エドワード・ケアリーという作家は、これまで数冊しか書いていない寡作な作家なのですが、この作品は三部作です。「スターウォーズ」の三部作が何年か置いて捉えていったかのように、これを読むと何年もこの作品の続編を楽しんでいけるので、これを機会にぜひ、エドワード・ケアリーという作家を知っていただければと思っております。


以上、「文芸評論家の杉江松恋さんが選ぶ、今年読み逃し厳禁の3冊」でした。年末年始の時間があるときにゆっくり読むのもよいかもしれませんね。