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古谷常衡さんに伺う「出版業界の現状」(2017/7/13)

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木曜日は「カルチャー」。


今日は[ブックファースト]の7月3日〜9日まで
1週間の新書セールスランキング トップ3をご紹介します。



第3位 『 未来の年表 人口減少日本でこれから起きること 』河合雅司(講談社)

第2位 『 儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇 』ケント・ギルバート(講談社)

第1位 『 定年後−50歳からの生き方、終わり方 』楠木新(中央公論新社)


以上、[ブックファースト]の7月3日〜9日までの新書セールスランキング トップ3でした。
そして今日は、中西さんの代わりに番組パーソナリティーを務めてくださった、文筆家の古谷常衡さんにお話を伺いました。


高橋:古谷さん、いま出版業界は不況と言われているそうですが、売り上げとしては実際どれくらいなんでしょうか?


古谷:先ほど私「出版不況」と申しましたが、これは正確に言うと「雑誌不況」なんです。出版は大きく分けて「雑誌」と「書籍」となるんですが、現在はこの雑誌の売り上げがだいたい8000億円くらい、書籍の売り上げも同じく8000億円くらいで、合計してだいたい1兆5〜6000億円あたりと見て良いと思います。この数字だけ見ると、雑誌と書籍が拮抗しているように思われるかもしれませんが、かつて、雑誌の売り上げはもっともっとあったんです。で、出版業界全体のピークとしてはいつ頃かといいますと、ピークは1995年から96年頃で、バブルが終わってからちょっと遅く出版のピークはやってきているんです。そこからいま約20年が経って、単行本は底堅いです。減ってはいるんですが底堅い。対して雑誌が非常に厳しい、というのが現状ですね。


高橋:不況と言われつつも、本屋さんに足を運ぶとどんどん新しい本が出ているように見えるんですが。


古谷:雑誌はともかく単行本の市場規模がそこまで変わっていないのは、いま高橋さんがおっしゃったように出版点数が増えているからなんです。その数、年間約8万点!出版業界が一番元気だったときで5万点強くらいでしたから、市場規模は縮小傾向、あるいはそれほど変わっていないのに、出版点数は1.6倍から1.7倍弱になっているんですよ。
一方で出版社や編集者の数はどんどん減っているので、ひとりの編集者が担当する量がめっちゃ増えているんです。そして、ひとりの著者が書く本も増えているんです。つまり“量産”しているわけです。これがいまの出版業界の現状です。


高橋:ひとりが担当する仕事の量が増えることで、何か影響はないんでしょうか?


古谷:例えば、これまで年間4冊出していた著者が6冊出しなさい、となった場合、普通はこれムリなんですよ!でも、出している人もいる。これはどうやっているかというと、一番多いのが「口述筆記」というヤツです。あるいは、講演会なんかで喋ってストックしておいたテープを文字起こしする。その場合、別のスタッフがついて文字起こししたものを本人が構成して出す、という。これをやれば、2時間の講演で1冊分にはならないにしても、だいたい1冊弱は出来ちゃうんです。これなら半年とか時間をかけて書かなくても、2時間喋れば良いわけですから。これなら量産できちゃうわけです。
ところがしゃべり言葉は不思議で、文字起こしをすると、だいたいみんな同じになっちゃう。それぞれの作家が持つ文体が消されちゃうんです。なので、僕は文字起こしして書かれた本はすぐに分かっちゃいますね。なぜかと言うと、超読みやすいから!(笑)僕は、読みやすい文体が良い本だとは思わないんです。その作家の持つクセや語彙の選定、あるいはすごく読みにくいけどちょっと変わった文脈とか、そういうのを大事にしなくちゃいけないと思うんです。なので、これはちょっと憂慮すべき事態だと思いますね。


今日は文筆家の古谷常衡さんに「出版業界の現状」について伺いました。