yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ 第百二十二話 探し続ける -【鹿児島篇】脚本家・作家 向田邦子-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った 命の闘いを知る事で、週末のひとときを プレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM OH!…SAT 18:30-19:00
@FM(FM AICHI)…SAT 18:30-19:00 / FM長野…SAT 18:30-19:00
FM FUKUOKA…SAT 20:00-20:30 /FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百二十二話探し続ける

来年1月、向田邦子原作の『春が来た』が、再びドラマ化されます。
1982年に松田優作も演じたこの作品は、51歳で亡くなった彼女の絶筆と言われています。
飛行機事故で突然この世を去った向田邦子。
彼女の遺品は、かごしま近代文学館に寄贈されました。
寄贈を決めた時、彼女の母はこう言いました。
「鹿児島に、嫁入りさせよう」
保険会社に勤める父の転勤で全国を転々としましたが、向田にとって、小学3年生から小学5年生までの多感な時期を過ごした鹿児島は、特別な場所になりました。
45歳で乳がんを患い、術後の合併症などで右手が思うように動かず、死を覚悟したときも、思い出すのは、鹿児島での日々でした。
「万一、再発して、長く生きられないと判ったら、鹿児島へ帰りたい」
そう、綴りました。
温暖な気候と美味しい地元の食材。父は栄転で支店長。
大きな社宅に住み、給料もあがり、一家の雰囲気もなごやかだったと言います。
このころ、母親が最も笑い上戸だったと回想するほどです。
40年近く経ってから、亡くなる直前に再び訪れたときの思いを、彼女は『鹿児島感傷旅行』というエッセイで、こう書き記しています。
「変わらないのは、ただひとつ、桜島だけであった。形も、色も、大きさも、右肩から吐く煙まで昔のままである。なつかしいような、かなしいような、おかしいような、奇妙なものがこみあげてきた。私は、桜島を母に見せたいと思った」。
直木賞作家にして脚本家だった彼女は、絶えず各地をさまよい、探し続けるひとでした。
その最期も、取材に向かう空の上だった、向田邦子がつかんだ人生のyes!とは?

脚本家で直木賞作家の向田邦子は、1929年11月28日、東京に生まれた。
父は保険会社に勤めていた。典型的な明治の男。
子どもの躾に厳しく、厨房に立つことはない。
母は従順で働き者。いつも白い割烹着を来ていた。
4人兄弟の長女として生まれた邦子は、父の顔色を敏感に察知し、母を手伝い、弟や妹の面倒をみるという役割を担っていた。
さらに父の仕事の都合で転勤が多い。東京、宇都宮、鹿児島、高松。
新しいクラスになじむため、彼女の観察眼はますます長けていく。
勉強がよくできて、文書がうまく、かけっこが速くて、面倒見がいい。
同級生はみな一様に、彼女の印象をそう振り返る。
でも、邦子の心のうちは、いつも穏やかではなかったようだ。
「もっと面白いものはないか、もっと自分にふさわしい場所はないか、もっと、もっと…」
あくなき欲求は、自らの器からあふれだし、自分でも戸惑うほどだったのかもしれない。

目黒の女学校時代、家族が仙台に引っ越したので、ひとり麻布の母方の祖父母の家に下宿する。
アルバイトに明け暮れる。デパートの佃煮売り場、アイスクリーム売り。
稼いだお金は、映画代。そして、仙台にいる弟や妹へのお土産代に消えた。
このときの、父の重圧から放たれてエネルギッシュに動いたときの充実感を、彼女は生涯忘れなかった。
一度、思う存分、自分を解き放ってみること。
そうしないと、見えない自分がある。
動けばぶつかり、転び、何かを学ぶ。

向田邦子は、大学を出てからさまざまな仕事についたけれど、ひとつだけ一貫して大切にしていたものがあった。
それは、言葉。
彼女は、思った。
自分に似合う、自分を引き立てるセーターや口紅を選ぶように、ことばも選んでみたらどうだろう。
ことばのお洒落は、ファッションのように遠目で人を引きつけはしない。
無料で手に入る最高のアクセサリーである。
流行もなく、一生使えるお得な「品」である。
ただし、どこのブティックをのぞいても売ってはいないから、身につけるには努力がいる。
本を読む、流行語を使わない、人真似をしない。
何でもいいから手近なところから始めたらどうだろう。
22歳のとき、大きな転機がやってくる。
教育映画をつくる会社で働いていた彼女は、その冬、手袋をしないで過ごした。
今よりも暖房事情もよくなければ、冬もずっと寒かった。
手袋なしで、ついには風邪をひいてしまう。
なぜ、手袋をしなかったのか。それは気にいったものがなかったから。
もっといいものがあるんじゃないか、もっと自分にふさわしいものがあるんじゃないか、もっと、もっと…。
中途半端なものを買っても、結局、後悔するだけではないか。
そう思って買わなかった。
ある夜、その会社の上司が、忠告した。
「君の今やっていることは、ひょっとしたら手袋だけの問題ではないかもしれないねえ。男ならいい。だが女はいけない。そんなことでは女の幸せを取り逃がすよ」。

向田邦子は、上司に忠告され、自分を変えるなら、今、このときしかないと思い、四谷から自宅まで結論が出るまでとことん歩こうと思った。
名文の誉れ高いエッセイ『手袋をさがす』に書かれたこのエピソードでは、結局、彼女は、そこそこで手をうつのをやめようという結論に至るまでが描かれている。
「ないものねだりの高のぞみが私のイヤな性格なら、とことん、そのイヤなところとつきあってみよう。そう決めたのです。今、ここで妥協をして、手頃な手袋で我慢したところで、結局は気に入らなければはめないのです」。
彼女は、反省することをやめた。
その場その場でお手軽に反省することを禁じた。
よく朝から新聞の就職欄に目を通し、さっそく「編集部員求む」の広告に応募。見事合格した。
映画雑誌の編集をやりながら、ラジオの脚本を書き、フリーランスのライターもやった。
忙しくて目がまわる。
それでも、彼女は探し続けた。
もっと面白いことはないか。もっと、もっと。
探し続けることで見つけた、テレビドラマの脚本家という道。
人気作家になったにもかかわらずまだ探す。
小説を書き、直木賞までもらった。

彼女の生き方を、そういう性格だったからと片づけるのは簡単だ。
自分の悪いところばかりに目がいき、それを直すことばかり考えていると、それだけで人生は終わってしまう。
向田邦子の生き方は、教えてくれる。
自分の枝ぶりを愛しなさい。少々、飛び跳ねていても、曲がっていても、決して、切ってしまわぬように。
自分の枝ぶりが生かせる場所を、探しなさい。

【ON AIR LIST】
Weep For The Boy / Millie Vernon
The Circle Game / Joni Mitchell
人生は夢だらけ / 椎名林檎
Imagine / John Lennon

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけの酒蒸し おろし添え

向田邦子にとって特別な場所だったという、鹿児島。今回は、そんな鹿児島の特産野菜でもある、大根を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけの酒蒸し おろし添え
カロリー
41kcal (1人分)
調理時間
5分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 大さじ1
  • 大根おろし
  • 80g
  • 青じそ
  • 1枚
  • しょうが
  • 1片
  • ポン酢しょうゆ
  • 適量
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐす。青じそは千切りにし、しょうがはすりおろす。
  • 2.
  • 霜降りひらたけをフライパンに入れ、酒をふって蓋をし、弱火で3、4分蒸す。
  • 3.
  • 皿に霜降りひらたけを盛り、大根おろし、青じそ、しょうがを添える。ポン酢しょうゆをかけていただく。
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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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