yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ 第六十四話 自分で枠を決めない -【金沢篇】 実業家 野口遵-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った 命の闘いを知る事で、週末のひとときを プレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM OH!…SAT 18:30-19:00
@FM(FM AICHI)…SAT 18:30-19:00 / FM長野…SAT 18:30-19:00
FM FUKUOKA…SAT 20:00-20:30 /FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第六十四話自分で枠を決めない

石川県金沢市出身の実業家に、一代で日本における化学工業の基礎をつくりあげた、「化学工業の父」あるいは「朝鮮半島の事業王」と称された男がいます。
野口遵(のぐち・したがう)。
彼は晩年、病の床で自らの死期を悟ったとき、側近を枕もとに呼んでこう言ったと言われています。
「おい、オレの全財産は、どれくらいある?」
側近が意図をはかりかねていると、気が短い彼はこう続けました。
「古い考えだと思うかもしれんがなあ、オレの人生の最終目的は、徳に報いること、恩をお返しすることなんだ。自分は生涯を通じて化学工業に全精力を傾け、今日を築いた。だから、化学工業の明日に、未来に、全財産を捧げたい。全部、寄付してくれ」
「全部って、全部ですか?」
側近が驚いて尋ねると、
「ああ、全額だ。それからオレは一番最初の礎を朝鮮半島で成すことができた。朝鮮にも奨学資金として役立ててくれ、いいな?頼んだぞ」。
現在の金額でおよそ300億を後進の発展のために捧げました。
その言葉からおよそ4年後。彼は72歳の生涯を閉じました。
彼の遺志を継いで設立された公益財団法人野口研究所は、旧加賀藩の屋敷があった東京都板橋区にその本拠を構えています。
去年創立75周年を迎えたこの団体は数多くの研究者の背中を押してきました。
また2年前には野口遵賞も設けられ、研究の助成金の一助として化学工業の発展に少なからず寄与しています。
彼の想いは時代を越え、研究者たちに勇気を与え、パイオニアスピリットを応援しているのです。
金沢の風土が育んだ、挑戦する心。
風雲児、野口遵が人生で大切にした、yes!とは?

日本の化学工業の礎を築き、チッソ、旭化成、積水化学工業の実質的な創業者と言われている風雲児、野口遵は、1873年、明治6年に石川県金沢市で生まれた。
父は加賀藩士。でも、貧しかった。
野口は才気煥発。ひとよりも常に先を考える利発な子供だった。
幼くして母に抱かれ東京に上京。前田家の長屋に住まう。
東京師範学校を経て、東京府中学に入学したが真面目に授業を聴くタイプではなかった。
やんちゃで喧嘩っぱやい。
ついには学校を追い出されてしまう。
みんなと同じように座っているのが苦痛で仕方ない。
ただ学ぶことは嫌いではなかった。
第一高等中学に入り、東京帝国工科大学電気科、今の東大工学部電気工学科を優秀な成績で卒業した。
当時の通例で言えばかなりのエリート。
官庁や財閥系企業に就職して順風満帆な生活を約束される立場にあった。
しかし、野口はその道を断った。
大きな傘の下に入るのではなく、たとえ雨に打たれようとも、自分の傘を創りたい。
誰かの枠に収まるのではなく、自分の枠は自分で決めたい。
その思いだけを持って、彼は社会という大海原に船出した。

化学工業の父と称される野口遵は、帝国工科大学卒業後、大企業には就職せず、福島に向かった。
在学中卒論のために度々訪れていた福島県郡山市の発電所におもむく。
彼の心をつかんで離さなかったのは、新しいエネルギーの創造だった。
世界は電気の発明により、新設エネルギーの開発に沸いていた。
火力、水力発電、炭化石灰岩・カーバイト。
野口は、郡山電燈の技師長として赴任。
郡山紡績沼上発電所の建設に関わった。
これは猪苗代湖と安積疏水(あさかそすい)の落差を利用した水力発電だった。
この発電により、紡績工場は目覚ましい発展を遂げた。
エジソンが、世界初の点灯電燈事業を、ニューヨークで開始したのは、野口が9歳のときだった。
電気に興味を持つ。さらに電気をつくるおおもとこそが、これからの日本を支えることに、野口は早くから気づいていた。
彼の関心は、カーバイトに向いた。
天然のものから電気をつくること。原価はかからず、ビジネスになる。
ドイツの電機メーカー・シーメンス社の日本支社に入社。
炭化石灰岩、カーバイトの研究にあけくれた。
シーメンスはカーバイトを原料に空気中の窒素を吸収し、エネルギーにする事業を展開していた。
彼は思った。この特許をとれば、世界にうって出られる。
彼は道なき道を進むことを臆さない。たった一度の人生。
誰かの造った道をただ歩くのは、つまらない。

実業家、野口遵は、大学を卒業してからちょうど10年後、独立。
曾木電機(そぎでんき)を立ち上げた。
彼の狙いは、カーバイトの特許をドイツのシーメンス社から買い取ることだった。
空気中の窒素を原料とする窒素肥料にはカーバイトは欠かせない。明治36年には仙台で日本初のカーバイト生産が始まっていた。
この特許さえとれば・・・。当時、特許という考え方は斬新だった。
空気中に無尽蔵にある原価のかからない窒素。それをエネルギーに変えられるビジネスは、財閥系企業にも魅力的だった。
野口の相手は、三井と古河という大財閥企業。
特許を持っているフランク・カローのもとを訪ねた。
彼が開発した窒素肥料の工業化にはシーメンス社が多額の資金援助をおこなっていた。
三井、古河両財閥が、フランク・カローに話を持ち掛ける。
まともにぶつかっては勝ち目はない。
そのとき、野口は、シーメンス社に勤めていたときの技師長や事務所長のことを思い出した。
彼らなら口添えしてくれるかもしれない。
ドイツに飛び、二人を訪ねる。
彼らは快く間に入ることを承諾してくれた。
野口には、ひとを喜ばす才があった。
彼の宴席はいつも笑いに包まれる。彼といるとみんな笑顔になり、気持ちよく酔うことができた。
彼はビール以外口にしなかったという。
「自分が強い酒でつぶれてしまっては、ひとを楽しませることはできない」
野口遵は、特許を買い取ることに成功した。
特許をビジネスモデルにした初の日本人と言われている。
彼は自分で枠を決めなかった。ひとにも決めさせることはなかった。
どんな相手でも、徒手空拳(としゅくうけん)で挑む。
そんなとき、彼はいつも清々しい顔をしていたという。
日本のために、誰かのために、精一杯尽くし、いただいた恩を、ひとつ残らずお返しして去る。
そんな潔さこそ、彼の流儀だった。

【ON AIR LIST】
約束の橋 / 佐野元春
明日に向って走れ / 吉田拓郎
Neon Lights / Kraftwerk
You've Got A Friend / James Taylor

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと大根のステーキ

今回は、実業家・野口遵の出身地にちなみ、石川県金沢市のブランド野菜としても栽培されている、大根を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと大根のステーキ
カロリー
259kcal (1人分)
調理時間
30分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 大根
  • 1㎝×4枚
  • 大さじ2
  • 【合わせ調味料】
  • 大さじ2
  • しょう油
  • 大さじ2
  • みりん
  • 大さじ2
  • バター
  • 20g
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。
  • 2.
  • 大根は皮をむき、1㎝幅に切って火が通るまで下茹でする。
  • 3.
  • フライパンに油を熱し、中火で(2)の大根を焼き色が付くまで焼き、皿に盛る。
  • 4.
  • 霜降りひらたけをフライパンで同様に焼き、【合わせ調味料】を入れひと煮立ちさせたら(3)の皿に盛りつける。
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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

OA 100回 記念特別企画 『ジョンとヨーコ、それぞれのyes!』
西田尚美さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。YESとNOの狭間で。 今週、あなたは、自分に言いましたか?YES!ささやかに、小文字で、yes。
明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語をお贈りしている「yes!~明日への便り~」。
7月22日と7月29日の2週にわたり、番組100話記念スペシャルとして、軽井沢にゆかりのある、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの物語をお届けします。
二人のインタビューや数多くの著作物をもとにフィクションでお送りするドラマ『ジョンとヨーコ、それぞれのyes!』。

オノ・ヨーコ役は女優の西田尚美さん朗読は、長塚圭史さんでお送りします。

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