暑さに適応するトマト『桃太郎ブライト』
オンエアレポート
2025.04.17

「暑さに適応するトマト『桃太郎ブライト』」

今回のイノベーターは、「タキイ種苗」広報出版部の岡本祐さんです。

「桃太郎ブライト」は、どのようなトマトなのでしょう?
「『桃太郎ブライト』は、栽培が長期化する傾向にある冬と春の栽培において重要な形質となる
“スタミナ”と“着果性”をコンセプトに育成を進め、開発した品種です」
「春先に問題となる『黄変果(おうへんか)』の発生が少ないという特長があります」
「黄変果のトマトは、ヘタの周りが黄色くなります」
「黄変果」の原因は何なのでしょう?
「原因の一つに高温条件があります。
高温条件下により、トマトの赤色の元になるリコピンが生成されにくくなります。
また、緑の色素であるクロロフィルの分解が遅くなります。
これらの要因により、直射日光が当たり、果実の温度が上がりやすい肩の部分が赤く色づかず、黄色くなります」
「黄変果」で困っているという農家さん、たくさん、いらっしゃるんですか?
「黄変したトマトは規格外となり、出荷率を低下させる要因となります。
出荷できたとしても見た目が悪い印象を消費者に与えてしまい、産地のイメージを低下させる原因にもなります」
「また、味わいも少し落ちてしまいます」

黄変果のトマト
「桃太郎ブライト」は「黄変果」が少ないということですが、これは、どうしてなのでしょうか?
「『ショルダーグリーン』(トマトの肩の部分が濃い緑色になること)がない均一な着色性を備えているので、
着色にムラが出にくく、ヘタの周りまで赤く色づきます」
「桃太郎ブライト」の開発には、約10年かかったということです。
開発に関して、どのようなことに苦労したのでしょう?
「黄変果に強いということだけでは生産者さんには受け入れてもらえませんので、
重要な形質となる“スタミナ”や“着果性”をあわせ持たせる点が非常に苦労しました。
「また、『ショルダーグリーン』のないトマトは、日本国内では一般的ではなかったので、
見た目も特徴的ですし、受け入れられるのかも不安でした」
「桃太郎ブライト」は、今、
冬と春の栽培で有名な熊本の産地や、夏と秋の栽培の北海道の産地などで栽培されているといいます。
農家さんは、どのような感想を話していますか?
「黄変果の発生により出荷率が落ちることは精神的な負担も大きく、
黄変果に強いことは生産者ニーズに沿っているという期待の声をいただいております」
「また、青果会社からも、感想をいただいています。
青果会社では、黄変果の発生する時期にはトマト1玉ずつ確認してから流通販売されています。
この作業には、非常に手間とコストがかかり問題となっていましたが、
『桃太郎ブライト』の導入により、確認作業をはじめ、労働時間と人件費の削減につながりました」

種苗メーカーさんとして、猛暑や豪雨など現在の気候変動については、どのようなことを感じていますか?
「気候変動は、生理障害や病害など様々な変化を農業にもたらします。
種苗会社として気候変動に対応できる品種の開発を、将来の環境を考えながら行っています」

気候変動が農業にもたらす変化に農家さんが対応していくためには、種苗メーカーさんの力が不可欠です。
気候変動に対応できる品種の開発、これからも応援しています。