
川瀬良子が全国の様々な地域を訪れ、

佐賀県佐賀市にある「ゆめファーム全農SAGA」は、
現在全国に3ヶ所ある大規模ハウス「ゆめファーム全農」の一つ。
1haもの栽培施設一面に広がるキュウリの列、列、列…。
その圧巻の光景を生み出した技術とスタッフの情熱を紹介します。
「ゆめファーム全農」は、JA全農による野菜の大規模栽培実証施設。
2014年にトマトを栽培する「ゆめファーム全農とちぎ」、
2017年にナスを栽培する「ゆめファーム全農こうち」が誕生。
そして2019年、キュウリを栽培する「ゆめファーム全農SAGA」が稼働開始。
その場長を務める沼田新さんに施設を案内して頂きました。
栽培エリアに足を踏み入れた途端、「うわぁ〜〜!」と声を上げる川瀬さん。
視界の先の先まで続くキュウリの列。それが何十列も広がっています。
地面をご覧ください。土ではありません。
キュウリは、高さ50cm位の所に設置されたロックウールという培地で
養液栽培されています。
施設内の温度・湿度、光の強さ、ロックウールの水分や肥料濃度など
様々な栽培要素がデータ管理され、1haのキュウリの生育を見守ります。
こうして生産されるキュウリの収穫は多い時で一日3トン!
日本最高レベルの収量を実現しています。
ところで、今回の取材で私たちが特に注目したのは、
そんなこの施設が、キュウリの栽培未経験というJA全農の職員さんによって
運営されているという点です。(なんとハウスの設計から!)
農業関係者でない方にとっては、「JA全農=農業=農作物を作る人」
というイメージがあるかも知れません。
でも、沼田さん曰く、JA全農とは「農業の商社のような存在」。
収穫された農産物を流通させたり、生産のために必要な肥料や農薬を
生産者さんに届けるのが主な役割。
農作物を作ることに直接携わる職員さんはごく少数なんだそうです。
実際、沼田さんもここに来る前は、
東京・大手町でオフィスワークに従事。
長年の経験と勘のようなものがなくても、
大規模農業の担い手になれるという実例を
沼田さん自らが
立証してみせる場でもあるのです。
さらに、この「ゆめファーム全農SAGA」ならではの取り組みの一つが、
すぐそばにある佐賀市の清掃工場との連携です。
そこで発生する蒸気熱や二酸化炭素の供給をパイプライン経由で受け、
キュウリの栽培に活用するという、環境配慮型農業を実践。
下の写真のように、足元に張り巡らされたパイプの中を、
熱交換器で蒸気から変換されたお湯や二酸化炭素が通っているそうです。
こうして、地域の力を循環させるアイデアは実に現代的。
そんなここ「ゆめファーム全農SAGA」で栽培されたキュウリを
試食させて頂いたところ、その瑞々しさにビックリ!
実は、スタッフの方が一口サイズに切ってくださったのですが、
一切れ食べただけで口の中に水分が広がり、まるで“飲む”ような感覚。
沼田さんによると、ロックウールによる養液栽培で、
キュウリの根に直接水分を与えているために生まれる瑞々しさなんだとか。
ちなみに、植物の成長にとても重要な根。
土の栽培だと、それを掘り起こして一々見ることはできませんが、
ロックウールによる栽培の場合は、そのパッケージを剥がせば、
簡単に根の状態を確認することが可能。こうしたメリットもあるそうです。
「ゆめファーム全農SAGA」は、これら様々な先進的栽培の実証を通して、
これからの栽培技術をパッケージ化し、全国に広げることを目指しています。
今後の目標について沼田さんは、
「日本最高レベルを達成した収量、その更なる新記録を達成すること」
…と、確信に満ちた笑顔で答えてくださいました。
そんな沼田さんたちスタッフの皆さんの情熱と頑張りが、
きっと日本の食料生産を力強く押し上げてくれる!
そんな期待感で私たちの胸も熱くなりました。