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TOKYO FM

MUSIC WORLD MAP〜ラグビーワールドカップ 大会オフィシャルソング〜

ON AIR REPORT / 2021.08.24 update
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音楽で世界を知る/歴史を知る企画 『MUSIC WORLD MAP』
Vol.7 ラグビーワールドカップ 大会オフィシャルソング『WORLD IN UNION』

2019年には日本でワールドカップが開催され大きな注目を集めたラグビー。試合終了を指す言葉「No Side」の精神にも注目が集まりました。『試合が終了したら、どちらのチーム(サイド)という区別なく同じ仲間である』というこの「No Side」の精神。実際、ラグビーは90年代に「南アフリカ共和国」にあった分断をつなぐのに大きく貢献しました。

南アフリカ共和国は、国内の白人と非白人(黒人やアジア系など)を分けて生活させる、人種隔離政策 「アパルトヘイト」が90年代のはじめまで存在していた国。南アフリカは当時2割が白人8割が白人その他。1948年、政権を取った国民党が「人種を隔離する政策にします/住む地域を分けます/結婚も医療も娯楽もスポーツも各民族でやってください。それに反すると犯罪なので投獄します。」というものでした。

やっと91年にこの政策は撤廃されますが、それまで南アフリカでは、イギリス発祥のラグビーは、白人や、ある程度の地位を獲得した富裕層の行なうスポーツ。アパルトヘイトの象徴として黒人の国民のあいだでは不人気なスポーツでした。 (ナショナルチームには黒人メンバーは1人だけ)

そんな、ラグビーで国民の団結を試みたのが時の大統領・ネルソン・マンデラ(南アフリカ初の黒人大統領)若い時からアパルトヘイトはおかしいと活動されていた方。一度投獄されるものの、人生をかけてアパルトヘイト撤回と平等に人権を守ろうと活動された方。

当時、南アフリカのラグビーのナショナルチーム「スプリングボクス」には黒人の選手は1人だけ。ほとんどが白人の選手で構成されていました。黒人主体のスポーツ協会からは「チームカラーと愛称はアパルトヘイトの象徴だから変えよう」と声が挙がります。しかし、ネルソン・マンデラは彼らにこう語りかけます。


「もはや彼らは敵ではない。同じ南アフリカ人。パートナーなのだ。スプリングボクスは彼らの宝。それを取り上げたら彼らに我々を恐ろしい相手だと思わせてしまう。恐怖は何も生み出さない。もう卑屈な復讐を果たす時ではない。寛大な心で新しい国を作るべき時なんだ!」


他にも、スプリングボクスのメンバーたちは、マンデラの意向で貧困地区の黒人の子どもたちにラグビーの指導をすることになったり、国民の間でも徐々に、チームの人気が高まることに。結果、自国開催の1995年ラグビーワールドカップで、快進撃を見せ、南アフリカは優勝。白人も非白人も関係なく、国民が一丸となってチームを応援しました。当時の政策を悪く言うことは簡単ですが、それを戻すとき、イーブンにするときに"恨みつらみ"が邪魔をする、マンデラさんはその火を消したということです。

ラグビーワールドカップの大会オフィシャルソング『 WORLD IN UNION 』ではこんなことが歌われています。

「最善の自分を探すこと。ベストの自分であろうとすること自体が人類みんなにとっての目標じゃないか、そう考えれば勝っても負けても引き分けても、それがみんなにとっての勝利なんじゃないか?」


「1950年までくらいにあった人種差別的発想。それを解放しよう!平等にしよう!という動きはずっとその後ありましたが、今、いろいろな理由をもとに、それぞれの国の苦しみが人種差別的な空気を世界的に少し高まらせている中だと個人的には思っています。もう一度”ネルソン・マンデラさん的精神”をこのタイミングで感じてみることに、意味があるように思います。」(LOVE)


追記:
南アフリカのラグビーの話は映画にもなっています。クリント・イーストウッド監督の「インビクタス」や、ネルソン・マンデラさんの映画作品「マンデラ 自由への長い道」などもあるのでぜひ見てみてください。

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(*1週間聴取可能です)

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