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TOKYO FM

MUSIC WORLD MAP 〜U2〜

ON AIR REPORT / 2021.08.25 update
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音楽で世界を知る/歴史を知る企画 『MUSIC WORLD MAP』
Vol.8 U2「Sunday Bloody Sunday」 (1983)

今からおよそ50年前。1972年1月30日、北アイルランドの都市、デリーで起きたデモ行進中の市民27名がイギリス軍に銃撃された事件、通称『血の日曜日事件』と呼ばれ、その事件を受けて、U2が歌ったのが「Sunday Bloody Sunday」です。

「北アイルランド紛争」をご存知でしょうか?
元々、1960年代後半から1990年代の後半にかけて、約30年もの間に3500名ほどの死者を出しています。プロテスタント系住民とカトリック系住民との宗教対立と差別問題をきっかけに、それぞれが民兵組織をもって、テロ攻撃や暴力事件を繰り返した『北アイルランド紛争』というのがありました。『血の日曜日事件』は、その紛争中の事件の1つ。

イギリスの地図を思い浮かべてください。
島が2つあります。左側にアイルランド。島の北側に北アイルランドというエリアが区切られています。右側にグレートブリテン島という島があります。ロンドンやイングランドはここにあります。このグレートブリテン島はウェールズ、イングランド、スコットランドが入っています。ユナイテッドキングダムと言いますが(いわゆるUK)、これは英国連合。右側の島のイングランド、ウェールズ、スコットランドと、左側の北にある北アイルランドの4つの国から構成されています。

「左側の島の北アイルランドだけ、なぜ地理的にイングランドなの?」と思いますが、まさにこれが、元をたどると1920年代、UKからアイルランドが「独立したいと、独立しますよ」と言うときに「僕らUKにいますね」と言ったのが北アイルランドというポジション。

その北アイルランドにある小さな街デリー。事件の起きたデリーには、カトリック系住民が多く住んでいました。一方で、警察や政治家など支配層の多くは、プロテスタント系住民。つまり、いつの間にか「カトリック住民」対「プロテスタント住民と、中立であるはずの地元警察」という構図なっていきました。さらに、暴動鎮圧のために派遣されたイギリス軍がプロテスタント側に加わることになります。それによって、カトリック系住民が行ったデモに対して、イギリス軍が発砲するという事件が起きたんです。

そんな事件を受けて、U2が歌ったのが「Sunday Bloody Sunday」。メンバーは、この曲を「アイルランド側の反イギリス活動を擁護するものではなく、そもそもの武力活動すべてを非難するものである」と明確に話しています。そしてこんな風に歌っています。

今日のニュースが信じられない。目を閉じてやり過ごす事も、消し去る事もできない、いつまで、いつまで俺達はこんな悲しい歌を歌い続けなきゃならないんだ?いつまで?いつまでだ?今夜こそ、俺達は一つになれるかもしれないっていうのに。今夜こそ。


これには後日談があります。
事件から、38年後の2010年。イギリスのキャメロン首相はこれまでのイギリス政府の対応を謝罪し、1972年に発生した事件は「正当化できない」と述べたんです。U2のボノはその発言を受けて、「実際、どんな地域でも解決は見出すことはできるはず。悪い方向へ行くときはスピードが早いけど、いい状況へと変わっていくにはとても時間がかかってしまうだけ。だけど、しっかりいい方向へと変わっていくことはできます。歴史の一コマから学んでもらえば、他の地域でもできるよ」と語っています。


さらに、この話を受けLOVEちゃんはこう話します。
「2021年、理由は全く違いますが、今、香港で民間の人たちがデモを起こしていて、軍が制圧しているのは、少し構図が似ているなと思います。もちろん全く同じ文脈では話すことはできません。香港には香港の背景が。北アイルランドには北アイルランドの背景があります。ボノが”武力活動すべてを非難するものである”と言っていたように、この30年も昔の出来事から学んで、似たような構図にある地域がもう少し早い解決を得られるために、私たちは会話をするべきだなと思います。」(LOVE)


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