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2023.06.24

試行錯誤しながら弱点を強みに「ここまで来れたのは奇跡」

今週の「SPORTS BEAT」は、7月にフランスのパリで開催されるパラ陸上の世界選手権、短距離に出場する、トヨタ自動車所属・石田駆選手をゲストにお迎えし、お話を伺っていきました。
石田駆(いしだ かける)選手は、1999年生まれ、岐阜県のご出身。
中学時代には、岐阜県の400メートル・チャンピオンとして全国中学校体育大会(全中大会)に出場、高校時代にはインターハイに出場するなど活躍され、スポーツ推薦で愛知学院大に進学。
2018年、大学1年のときに、左肩が骨肉腫であると診断されますが、陸上競技を続けるため、人工関節を入れる治療を選択。
およそ半年に渡る治療、リハビリ期間を経て、パラ陸上に挑戦。
2021年に開催された東京パラリンピックには、100メートルと400メートルの2種目で出場。100メートルで5位入賞を果たされています。



──まずは、7月にパリで開催される世界選手権への出場、おめでとうございます!
今年4月に神戸で開催された世界選手権出場をかけた日本選手権の100メートルで、11秒00で優勝、世界選手権への切符を獲得。石田選手が持っている日本記録が10秒94ということで、このタイムに迫る、良いタイムが出たんじゃないですか?

そうですね。10秒台後半、11秒前半というタイムを昨年から今年にかけてコンスタントに出せるようになっていますので、この時期に11秒00を出したということも、これからシーズンが本格的になってくるんですが、すごく自信につながりましたね。

──今シーズンに向けて、改良とか課題など、何かテーマはあるんですか?

100メートルは一瞬で終わる競技なんですが、後半の50メートル以降でどうしても足の回転に乱れが出てしまってスピードが落ちてしまう、などの弱点があると自分の中で感じましたので、その中で、足の回転をキープ、またはそれ以上に向上させるという課題を持って取り組んで、今シーズンに臨みました。

──後半の走りをテーマに、今シーズンは挑んでいらっしゃる?

そうですね。今はそこに全てがかかっている状態ですね。
スタートに関してはすごく得意なので、誰よりも速く、ロケットスタートのように出られるという自信はありますので。

──そして2021年、自国開催だった東京パラリンピックに出場されました。それまでにも世界的な大きな大会に出場されていますが、パラリンピックの舞台というのは、どうでしたか?

2021年、自国開催、東京の開催ということもありましたので、日本代表として出ることの責任感や自覚といったところもあって、かなりモチベーションも上がっていたんです。
国立競技場を走ることも夢だったので、その舞台に自分が立ったということだけでもすごく嬉しかったんですが、その舞台で5位が獲れたということも、日本代表としてちゃんと日本を引っ張る立場になれたので良かったなと思っています。

──パラアスリートのみなさんは、それぞれ病気であったり怪我だったりで身体的な特徴が違いますから、石田選手が自分に合ったトレーニング方法を見つけるということは大変だったのでは?

そうですね。私は上肢障がいです。5年前に骨肉腫を発病しまして、左肩を人工関節に置き換えて、可動域と筋力の低下という機能の障がいを負ってしまったんですが、それによって何が一番苦しかったかというと、左手が振れない分、スタートが出にくいとか、走り区間全体を通してうまくフォームが取れないなどの課題がありました。
そこを少しずつ、試行錯誤しながら、今の10秒台の走りを目指していくというのは、長い期間をかけて(トレーニング方法を)見つけてきたという感じですね。

──それまでのトレーニングとはまた違った大変さがきっとあったんでしょうね。

まず、病気をした時に、“自分が身体に障がいを負ってしまう”ということを自覚するだけでもすごく苦しかったというところもありますが、最初、病気の告知を受けた時に、“なぜ急に自分がこんな大きな病気をするんだ”ということも、自分の中で現実を受け止めることがなかなか出来なかった。そこから少しずつ立ち直っていくのにもやはり時間がかかりましたし、今思うと、本当にすごく辛い経験だったなと思います。

──現在、ロケットスタートがご自分の得意技とおっしゃいましたが、それはどのように克服出来たんですか?

自分の身体に合わせたトレーニングを、少しずつ工夫していきながら…。
自分の場合は、スタートする時も、まず、セットする時に右手しか(地面に)つかないんですが、その中で出る1歩目も、左手の力をグッと使えないんですね。左腕が使えない分、違う身体の部位をうまく使ってコントロールする。それが出来なければ走れないと思って、そこをずっと集中して強化していって、自分の身体に合ったスタートの仕方を見つけてここまで来れたのは奇跡だなと、自分でも思っています。


──今、そのスタートがストロングポイントになっている。すごいですよね。そして、病気になる前の自己記録を、さらに今、更新されているということなんですね。

そうですね。病気をする前、高校生の時なんですが、100メートル11秒22が、当時のベスト。対して、今は10秒94まで更新していますので、そこは素直に嬉しかったですね。

──どういう感覚ですか? 不思議な感じですか?

最初は不思議としか思えなかったですね。もちろん、いろんな試行錯誤の上で取り組んできた強化ではあったんですが、ここまで成長するなんて思っていなかったですし。
やっぱり、諦めずに病気と闘ってきて、リハビリもそうなんですけど、諦めずにやってきて本当に良かったなと思っています。

──病気をする前の高校時代の記録を上回ることができるなんて、すごいことですよね。
そして、明日は、昨年100mの日本記録を出した布勢スプリントにも出場される。

はい。この鳥取の布勢スプリントという大会は、毎年追い風がすごく期待されている競技会場で、100メートルの種目に特化された、すごく(記録が)期待の出来る競技会場なんです。
この大会で、僕も昨年、10秒94という日本記録を更新しましたので、(6月にあった)ジャパンパラ(競技会)の走りのリベンジという意味でも、今年もしっかり日本記録を更新できるように頑張りたいと思います。

──この布勢スプリントが、世界選手権前最後のレースになる?

そうです。パリの世界選手権の舞台をイメージしたレース展開を、この布勢スプリントでしっかり持って、臨みたいと思っています。

──パリの世界選手権で良い成績を挙げると、来年のパラリンピックの内定が出るんですか?

世界選手権で4着以内に入賞すると、2024年のパリ・パラリンピックの日本代表に内定が決まりますので、それを目標に頑張りたいと思っています。

──(パラリンピックの)1年前に、実際にパラリンピックが行われるパリの地で大会に出られるというのは、大きいことですよね。

やはり、気候とか気温とか、事前に慣れておくことが大事ですから、そこはすごく大きいところですよね。

──この番組では、ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。石田駆選手の心の支えになっている曲を教えてください。

Official髭男dismさんの「Subtitle」という曲です。

──石田さんは、ピアノが趣味だそうですね。

そうなんです。幼稚園の年長から高校まで、だいたい10年間ぐらいピアノをやっていました。競技などで色々嫌なことがあった時でも、“ピアノがあればなんでも忘れられる”ということで、今では趣味としてピアノをやっていまして、Official髭男dismさんの曲をけっこう弾かせていただいたりしているんです。すごく楽しいです。

──小さい頃に習い事でやらされていると、途中で嫌になったりとかはなかったんですか?

当時も、もちろん陸上もやっていましたし、学校の勉強も追いついていなかったので、ピアノにどのくらい向き合いながら続けていけるのかと悩んでいる時期はあったんですけど、やっぱり、今考えてみれば、その時にやっていなければ今はなかったと思いますので。
今は競技と並行しながらピアノが出来ていますし、リズム系のトレーニングでもテンポを取りやすいとか、ピアノをやっていなかったら出来ないことっていっぱいあったと思うんですよ。
リズム感は、陸上のトレーニングでも必要なんです。

──その石田選手のみごとなピアノの腕前は、「トヨタイムズ」の方でぜひチェックしてください!
最後に、明日の布勢スプリント、そして来月の世界選手権、さらにその先の2024パリ・パラリンピックまで、どれだけ記録を伸ばせそうですか?

今の目標としては、10秒7台。このタイムを出して、しっかりパリ・パラリンピックの舞台でメダルを獲る。
そういう目標を持っていますので、まずは、明日の布勢スプリントで、日本記録、自己ベスト更新させること。そして、来月の世界選手権で、パリ・パラリンピックでメダルを獲るイメージを持ちながら、そういった想定レースが出来るように、10秒7を目指して頑張っていきたいと思います。


今回お話を伺った石田駆選手のサイン入り色紙を、抽選で1名の方にプレゼントします。 ご希望の方は、番組公式ツイッターをフォローして指定のツイートをリツイートしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。

そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
放送できなかったトークが盛りだくさん! ぜひお聴きください!

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