Athelete News
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19.06.22
最強の走り方
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今週の「Athlete News」は、スプリントコーチ 秋本真吾さんです。

秋本真吾さんは、1982年4月7日生まれ
現在37歳。福島県のご出身。
400mハードルにおいてオリンピック強化指定選手に選出され、
2010年、200mハードルで当時のアジア最高記録、日本最高記録を樹立。
その後、2012年に現役を引退。
2013年からはスプリントコーチとしてプロ野球選手や
Jリーグクラブ所属選手など、走り方の指導を行っています。
2015年にはNIKEと契約し、
NIKE RUNNING EXPERT、NIKE RUNNING COACHに就任。
今年、自身の指導法をまとめた著書
『一流アスリートがこぞって実践する 最強の走り方』を発売されました。


──スプリントコーチ。耳慣れのない職業ですが、どういった事をされているのでしょうか?

元々、陸上競技をずっとやってきて速く走ることを追求してきたので、引退した後になる職業としてよく聞くのはランニングコーチなんですけど、スプリントという速く走るのに特化したコーチっていなかったなあと思って、自分で名乗ってやってみようかなっていうのが最初だったんですよね。

──スプリント、いわゆる短距離のダッシュに特化したものですよね。

そうですね。今のスポーツ界ってたくさん走るとか、根性とか努力とかで速くなるっていうイメージがないですか?
走り込みみたいなワードがよくあると思うんですけど、僕が今取り組んでいるのは、適切な動作の改善で速くなるっていうアプローチなんです。
今、自分がどういうふうに走っているかとか、速く走るためにはどういう着地をして、どういう力を地面に加えないといけないのか、みたいなところをしっかり動画とかで分析しながら選手だったり子供たちにアプローチしています。

──武井壮さんがゲストでいらっしゃったときに、「男性なら、どんな人でも100メートル11秒台で走れる」って言っていて。
10秒台で走るのは才能が必要だけど、11秒台にはなるとおっしゃっていたんですけど、走れるものなんですかね?


僕も無理じゃないと思っていますし、マスターズって35歳以上の大会で、今も趣味程度に走っているんですけど、普通のベンチャー企業に勤めていてトライアスロンやりまくっていた人がマスターズに興味を示し出して、やり始めているんです。
僕、その人を11秒台にさせたいと思ってます。なので、無理じゃないと思いますね。

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──早速、最強の走り方について伺っていきたいんですけれど、まず、速く走るために必要な事とはなんでしょう?

理論上、覆せない理論というのがあって。速さとかスピードって要素としては2つしかないんです。それが掛け算となってスピードになっているんですけど、一つは走るときに足がぐるぐる回る、回転の速度を高める。
いわゆるピッチと言われるものなんですけど、いくら回転が速くても前に進まなければ意味がないので、一歩の歩幅、ストライドをどれだけ広くするかっていうのが掛け算となってスピードになっています。

──一般の人はどちらかに偏るとか、どっちが劣るとかはあったりするもんなんですか?

世界のトップレベルの選手達って、だいたい一秒間に一番速度が出た時で4.5回転ぐらいするんです。ボルト選手が9秒58の世界記録出したときは、4.7回転していて。
ちなみに桐生選手とか山形選手とか、今の日本のトップでいる選手は5回転すると言われているんです。回転数は世界のトップよりも上回ってるぐらいの強みがあるんですけど、もう一方でストライドっていうところで見るとボルト選手が9秒58だした時は一歩3メートルって言われているんです。
単純に掛け算なので、1秒間に13メートルくらい進んでるっていう事になるんですよね。桐生選手とか山形選手になると、一歩のストライドが3メートル近くまでいけてないので、彼らの記録更新の鍵は、回転数を維持した状態で、一歩の歩幅を数センチずつ広げていくみたいな、本当にすごい細かい作業になってくるんです。
今度は、小学生とか一般の人とかに近づけてみると、小学生も実は一秒間に4回転以上回ってるんですよね。子供達に言うとびっくりするんですけど。
ちょっと現実的じゃないですけど一歩2メートルくらい行ければ、10秒台も出るんですよ。

──小学生のときは、速く走ろうって思うと、上体が前のめりになっていて、ストライドを稼ごうとしてピッチが上がらなかったりしますよね。

まさに先ほど言った理論の二つって大事なんですけど、じゃあそれを向上させるための走り方のフォームっていうと最後は姿勢だと思っていて。
トップのプロ選手とかJリーガーですらも、速く走ろうと思って上半身を前に倒そうとするんですよね。
体が前に倒れるので、足が上がりづらくなっちゃうんです。地面に加える力がそもそも弱くなっちゃう。そうすると、さっき言った回転数とか歩幅の向上に繋がらなくなっちゃうので、高い数値が保てなくなっちゃうんです。
100mの奥が深いところって、自分がこのタイミングでここに着地したいっていうのを選手一人一人が持っているんですよね。
要は、力が一番入る場所って、立って足踏みをすると分かるんですけど、足踏みするときって必ず自分の真下に足が落ちるじゃないですか。
缶を踏む時とかもそうですし、どこに缶を置くと力が入るかって考えると自分の体の真下の方が、上げてそのまま足をおろせますよね。

──一番力が入るポイントですよね。でも、それだとストライドが全然稼げないような気がするんですが……。

ストライドの伸ばし方って、多分イメージでいうと大股そうみたいなイメージないですか?
それって逆に、さっき言った空き缶を踏む理論から外れちゃって、自分の体より遠くに着地するので膝から下が前に降り出して着地する形になって、力が入らない場所に足が着いちゃうんです。
ということは、力が入らないので大股そうになってるだけで回転が付いて来なくなっちゃうんですよ。

──ストライドを伸ばすには飛べということですか?

そうです。ストライドを獲得するためのポイントとしては、矛盾してるんですけど歩幅を出そうとしない事って言ってるんですよね。
真下に着地することでどういう作用を起きるかというと、アキレス腱っていうのが一つバネの役目をしてくれるんですけど、歩きと走りの一番の違いって空中に浮いてる瞬間があるかそうじゃないかっていう差なんですよね。ということは、ジャンプを連続で飛んでるみたいな動きである必要があるんです。
そのためには筋肉を使うというよりかは、腱を上手に使うことがすごく大事で。腱を上手に使う方法って、皆さん簡単にできるんですけど縄跳びなんです。縄跳びする時って地面に踵がつかないですよね?
踵で縄跳びを飛ぼうとするとうまく飛べないんですよ。踵を浮かすことでアキレス腱が使われるんです。ふくらはぎにグッと力が入るじゃないですか。腱も引っ張られるので、それが人間のバネのの役目もしてくれます。
速い選手は、まず踵がつかないんですよ。僕は最近言っているのは、踵に指一本入るぐらいでいいよと。

──そのくらいでいいんですね!

ちょっとを浮かすだけでも十分腱が使えるようになるから走ってごらんって言うと、急に走りが跳ねるような走りになってきたり。
跳ねてる感じが出てるって事は、歩幅がその分は進んでるっていうことになるので、子供達には縄跳びを沢山やって、ふくらはぎとかの強化をしてほしい。陸上のスパイクって、ご覧になったことってありますか?

──前の方だけピンがあるんですよね。

それってつまり、そこにしか使っていないということなんですよね。

──例えば、サッカー選手のクリスティアーノ・ロナウド選手の走り方はボルト選手と全く同じ走りをしているという話もありますが、
どのスポーツをやってる人でもその走り方はいえることなんですか?


サッカーでいうと、クリスティアーノ・ロナウド選手とかフランスのエムバペ選手とか速いって言われてますけど、彼らの走りも今度見てみてください。踵ついてないので。
野球で盗塁が速い選手とか、走り出しからスライディングまで見てみると、絶対に踵から行ってないんですよ。
陸上と野球とか、陸上とサッカーって走り方違うじゃないって言われるんですけど、局面だけを切り取ってみると共通してるところってたくさんあるんです。

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──そして先日、先日、サニブラウン アブデル・ハキーム選手が日本新記録となる100m9秒台、9秒97を記録しました。男子の短距離界、熱いなあと思うんですけれど、どう見てらっしゃいますか?

僕はハキーム選手が一番に9秒台を出すと思ったんですよ。なので、陸上関係者の人達はあまり驚いていないと思います。僕も、まだ速いタイムが出ると思ってるので、ここから始まっていくなっていう感じですよね。

──逆に秋本さんから見て、サニブラウン選手の走りってどうですか?

彼よりも全然速く走れなかった人間が言うのはおこがましいんですけど、改善するポイントは結構多い気がしていて。特に後半30メートルくらいから降り出すみたいな走り方になるんですよね。膝下を前に降り出して、走っちゃう。とんでもない筋肉があるので、変なとこに着地しても引っ張り込んで走れちゃうみたいな。

──その走りで日本新記録を出していると。

あそこをちゃんと真下に踏むということが出来れば、まだまだタイムは出ると思っています。

──秋本さんがお書きになった『一流アスリートがこぞって実践する 最強の走り方』を読んで驚いたのが、レースを見ていると最後の追い込み、ゴール地点が一番速いと思うわけですよ。
実は、スピードってそこじゃないって書いてあって。


そうなんですよ。伸び切って終わってる人はいないんですよね。必ず全員スピードが低下した状態で終わってるんです。
トップスピードを維持させるには、そこまでの走り方を崩さないという技術的な話になってくると思っていて。途中で踏み外すみたいな感覚が出てきちゃうんですよ。
自分の位置が今この辺だから、「やばい。もっと頑張らないと」っていう意識が、足を早く着いちゃえみたいな感覚になるとずれた場所でつくじゃないですか。
それで減速がさらに大きくなるみたいなのは、僕も100メートルのレースを何本か走って、難しいなと思っています。
競馬のように隠れた状態で走ったら全然違う人間が勝つかもしれません。

──1人ずつタイムを計測しますって言ったら、結果また違うかもしれないんですね。

今回の6月末の日本選手権の決勝は、もうとんでもないんじゃないすかね。どれだけ周りを意識しないことが実はポイントなんじゃないかなと思います。


──秋本真吾さんの心の支えになっている曲を教えて下さい

光永亮太さんの「Always」という曲です。
もともと、妻がスケートの大菅小百合さんの知り合いというか、Facebookで繋がっていただけで、結婚式で歌ってほしいみたいなことを言い出したんですよ。
絶対やめた方がいいよ。失礼だよって言ったんですけど、妻が勝手に送ったら「是非結婚式行かせてください!」って返ってきて。
初めまして同士で結婚式に来てもらっちゃって歌を歌ってもらうっていう(笑)。

──最後に、次世代のアスリートに向けてメッセージをお願いします!

スポーツのいいところって、体を動かして何かを感じれる要素がすごく高いと思っていて。僕は走り方を教えているんですけど、誰かに勝つっていう指標と、もう一方で昔の自分を変えるっていうのがすごく大事だと思っているんです。
足が遅い子って、習う前の自分よりは早くなったねっていうのが、僕は自信獲得に繋がっていくと思ってて。
でも、そこで獲得した自信ってスポーツだけじゃなくていろんな要素に使えるんです。自分で自分を変えることが色んなことにつながるきっかけになる手段が、僕が走り方を教えることなので、僕に出来る事っていうのはそういうところなのかなと思います。なので、引き続きと自分を変えることの喜びとか自信を与え続けていきたいと思ってます!
そういう経験を若い方にはたくさんしてほしいと思います。

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