福岡県・柳川市の『別格』−300年の歴史、うなぎのせいろ蒸し−


今月、たずねるのは、福岡県。そして今週は、福岡県南部の水の都、柳川をご紹介します。柳川の代名詞とでも言うべき、「うなぎのせいろ蒸し」。愛され続けている秘密に迫りたいと思います。
うなぎのせいろ蒸し、360年という「元祖 本吉屋 柳川本店」。初代から続く、タレと技を守っている店主、本吉勉さんにお話をうかがいしました。

−うなぎのせいろ蒸し誕生の理由とは−

住吉さん「せいろ蒸しは、全国的にも珍しい食べ方ですよね?」

本吉さん「はい。どちらかというと、うな重がポピュラーだと思います。ご飯にうなぎのタレがまんべんなくかかっていて、蒲焼をのせて蒸す関東の調理法。うなぎを地焼きで蒲焼にする関西の調理法。せいろ蒸しは、両方のいいところを合わせた料理です」

住吉さん「どういうきっかけで、そのようなものになったんですか?」

本吉さん「諸説あるんですが、昔、天然のうなぎは皮が堅かった。それを蒸すことで柔らかくする。あとは保温効果、いつまでも美味しくいただけるということでしょうか」

住吉さん「どなたが思いついたんでしょうか?」

本吉さん「これも諸説ありますが、うちの先祖は刀鍛冶をやっていまして、江戸に仕えていたので、関東の文化が入ったんだろうと…」

住吉さん「へぇ〜」

−元祖 本吉屋! うなぎの焼き方とタレのこだわり−

住吉さん「本吉さんは、今も、焼いていらっしゃるんですか?」

本吉さん「そうですね、基本、焼き場にいます。うなぎを焼くのが僕の仕事です。炭は、備長炭と普通のかし炭をミックスして使っています。炭にも特徴があって、備長炭は、高温でいったん火が起こると時間が長い。ウチの場合、タレをつけて焼くので、タレが下に落ちて、かし炭だけだと火力が落ちてくるんですね。それを炭を組み合わせることで、火力を保つんです。タレは創業当時からのを継ぎ足して、ずっと360年くらい使い続けています。みなさん、そう言うとタレが古いんじゃないかって思うんですけど、そうではなくて、継ぎ足し継ぎ足し、使っていきます。ウチの場合は、焼く量も多いので、それだけうなぎのうまみ、エキスが染み込んでいきます。ウチの場合は焼き台の横にタレの壺があって、すべらせてつけます。炭の遠赤効果でうなぎから染み出たあぶらやうまみがタレの中にもじゅっと音を立てて、染み込んでいくんです。それを延々と繰り返していくんです。そのタレをご飯にかけるんです。うまみがずっと残り続けていくわけです」

−柳川という土地とうなぎの関係−

住吉さん「なぜ、柳川はうなぎが有名なんでしょうか?」

本吉さん「そうですね。地形的に矢部川、筑後川があって、ちょうど三角州で海水と川の水がまざって、いい海の栄養分が豊富にあるんです。だから天然の美味しいうなぎがたくさんとれたことから、ここが有名になったんだと思います。ただ今はウチも100%国内の養殖うなぎを使用しています。たぶん今の方が食べ比べると、養殖の方が絶対美味しいと思います。タレもよくのりますし」

住吉さん「360年の中で変わってきたんですね」

本吉さん「そうですね。綺麗な水、安心なえさで育った養殖の方が、美味しいと思います」

住吉さん「それでも柳川にお店を構え続ける理由とは?」

本吉さん「お堀の川下りで城下町の雰囲気を味わっていただいて、そのあと、伝統的なうなぎ料理を食べていただく。そこがいいところだと思います」

−何度食べても飽きない! うなぎのせいろ蒸しを試食−

住吉さん「本吉さんは柳川のお生まれ?」

本吉さん「いえ、僕は長崎なんです。婿で、嫁の実家なんです。ここで18年です。その前は、東京で美容師をしていました」

住吉さん「ええ? 美容師からうなぎの職人ってすごい転身なんですが…」

本吉さん「ええ、でも、前の美容師の師匠も、ウチの大将も、極めたひとは言うことが一緒なんです。『無駄な動きをせずに一発で決めろ!』」

住吉さん「本吉さんから見た柳川の魅力ってなんですか?」

本吉さん「そうですね、僕みたいに外から来た人間の方が、よくわかるかもしれませんね。昔は出前もしてたんですけど、有明海側に沈む夕陽、これがすごいです。水平線に落ちる夕陽があんまり綺麗で、『なんでオレ、出前なんかしてるんだろう』って思いましたよね(笑)」

住吉さん「うなぎは夏によく食べますが、美味しいのは9月以降とも聞いたことがありますが?」

本吉さん「1年中、美味しいです(笑)。週に2、3回は食べていますが、いつでも美味しいです。多いときはもっと食べていると思います」

住吉さん「ええ? 逆かと思っていました。よくシェフの方が家では料理しない、みたいな話を聞きますが」

本吉さん「飽きないですねえ。シンプルだけど味わい深いといいますか…」

住吉さん「さて、いよいよ試食タイムです。テーブルの上にやってきた、お重を開けると、ふわっとタレのいい香りが…。うわ、もう見た目からテンションがあがるんですけど、朱塗りのお重にギッチリギッチリ、ご飯と蒲焼、錦糸卵。さっそくいただきます。うわ、お箸を入れたら、柔らかい、中のご飯にまんべんなくタレがまぶしてあります。ううん、ううん、美味しい! 身が柔らかくてほくほくで、タレの加減が絶妙です。蒸してあるからか、さっぱりしてるし、普通の蒲焼よりスフレ感がありますね」

本吉さん「蒲焼をのせる前に、ご飯をほぐして空気を入れることで、適度な柔らかさがでます。また、最後に蒸すことで、ご飯とうなぎの一体感がでるのかと思います」

住吉さん「チームワークで、ものすごく美味しくなっているんですね!」
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