さて、引き続き映画のお話。

前回の日記で北野武監督『アウトレイジ』と対局にあると書いた、
小泉徳宏監督『Flowersフラワーズ』についてです。

CMや駅の広告などで、綺麗な女優さんがずらりと並ぶ様子を
見た方も多いと思います。
私はこの映画を、一足早く試写会で拝見しました。
もう、ため息が出ちゃうくらいに、皆さん・・・美しい。

でも、違うんです。

姿かたちが美しい、のではないです。
むしろ、容姿の綺麗さなんて、観ていてどうでもよくなります。
美しいのは、『女性の強さ』なんです。

物語は、ひとりの女性を起点に紡がれていきます。
はっきり言って、
『ひとつのストーリを追う、明快な話を好む人向き』ではありません。
『女性は3歩下がって付いて来い』というような男性にも向いていません。
もし明快なものがお好きであれば、
やはり『アウトレイジ』を観ることをお勧めします。
『Flowers』は、色々な女性が登場し、それぞれの人生でそれぞれの決断をします。
だからこそ、単純ではないんです。
ただ、そこには1本、縦にすっと通る糸があります。
それが『血』、そして『女性である』ということ。

昭和初期。
まだまだ女性がはっきり意見をいうことが出来ない時代。
凛(蒼井優さん)は、父親の決めた強引な結婚に反発して、
式の当日、花嫁姿のまま逃げ出します。
時は流れて、昭和中期〜後期。
スクリーンには、成人した凛の娘が3人登場します。
夫を愛し、支えることに幸せを感じる、長女・薫(かおる・竹内結子さん)。
大手出版社で、唯一のキャリアウーマンとして働く、次女・翠(みどり・田中玲奈さん)。
夫と娘に恵まれ、もうひとつの命をお腹に宿す、三女・慧(さと・仲間由紀恵さん)。
さらに時は流れて、平成。
ここには、慧の娘2人が登場。
ピアニストになるために上京して15年が過ぎた、長女・奏(かな・鈴木京香さん)。
夫と息子のそばでいつも笑顔を絶やさない、次女・佳(けい・広末涼子さん)。
つまり、親子3代に渡る、女性の6つの物語です。

生きた年代も、内容も、私とはまったく違うものばかりです。
でも。
一人ひとりの物語が、どれも自分のことでした。

恋愛、結婚、仕事、出産、別れ・・・
私が生きる意味って?
女性として生きるって?
私の幸せって?
いちばん大切なことって、何?

同じような悩みを抱え、立ち止まって、もがいていたからです。

作品の中で、女性だからこそ『納得できない生き方』もありました。
だけど、理解できます。
そして、その生き方が出来ることを、どこかで羨ましくも思います。
だって、女だから分かるんです。
この映画のキャッチコピーには『あなたの物語』という表記があります。
『Flowers』は、まさに私の物語でした。


女性、という存在を大きく取り上げると
中にはネガティブな感情や、閉鎖的なイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。
フェミニスト、女性車両、レディースデー、レディースフロアー、『姦しい』という漢字・・・

ですが、この映画を観終わると、
女性はやはり、とても強く、美しく、尊い存在だと、痛感します。
何だか抽象的で難しいな、と感じられるかもしれませんが、
多分、映画を観ると、ああなるほど・・・と分かって頂ける気がします。

ちなみに、私が一番好きなのは、
慧(仲間さん)が娘2人に書いた、手紙のシーンです。
私は・・・私だったら、どう書くんだろう。
泣きながら、そんなことを考えました。
あなたは、どう書くか。どう決断したか。
映画を観たら、ぜひ教えて下さい。

最後に。
この映画を観ると、自分を大切にしたくなるだけではなく、
自分をこの世に送り出すと決断してくれた母親、
いま自分が存在する大元・母親を生んでくれたおばあちゃん、
そのおばあちゃんの、おばあちゃんの、おばあちゃん・・・
そして、自分にとって大切な人たちを生み、育ててくれた全ての女性たちに
心から感謝したくなります。

泣ける映画です、とは言いません。
泣けることを期待して観にいって欲しくはないからです。
でも、批評家ぶった目線や、
どうせCMの延長でしょ、と言った偏見などを捨てて
裸の目で観にいくと、女性なら特に心がぐしゅっとなると思います。

『Flowersフラワーズ』6月12日(土)、公開です。
『アウトレイジ』も、同日公開!
対極の映画。
でも、両方観たら、すごくすごく驚くことに気がつくと思います。

同じなんです。

何が同じか・・・は是非、両方観て、確かめてみて下さい♪