2021/04/25

ホラン千秋「“自然のために生きよう”と思ってくれる人がいるから…」水族館立ち上げ請負人の努力に感謝

DDP編集部

ホラン千秋がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの新番組「apollostation Drive Discovery PRESS」。番組では、“ラジオの中の編集部”を舞台にホランが編集長、リスナーが番組専属特派員となり、全国の食べ物やさまざまな場所にスポットを当て、日本の魅力を再発見していきます。4月25日(日)の放送では、特派員ゲストに水族館立ち上げ請負人の下村実(しもむら・みのる)さんを迎えてお届けしました。

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(左から)ホラン千秋、下村実さん

水族館立ち上げ請負人が語る、水族館の裏側

ネイチャースペシャリストで水族館立ち上げ請負人の下村さん。これまで「京都水族館」で館長をつとめたほか、「海遊館」の立ち上げに関わり、現在は香川県にある「四国水族館」で飼育展示部長をつとめています。

水族館の現場で働く人だからこそ知り得る、キュンとする生き物の姿を尋ねると、下村さんは「カワウソのかわいさは反則!」と満面の笑み。カワウソは、ドンゴロスと呼ばれる麻の袋を寝床にするそうで「夜、大きな袋のなかに入って寝るんですけど、2匹くっついて寝ている姿が、まぁ〜かわいいんですよ! ペンギンも夜に寝るんですけど、寄り添ってペアで寝るんです。(その姿も)かわいい!」と声を弾ませます。

そうした、開館中では見られないような光景が多々あるため「僕らの特権は、夜の寝姿や、夜行性の生き物であれば泳ぎ回っている姿を見られること。(お客さんのいる)昼間にそれぐらい動き回ってほしいんだけどな(笑)」とユーモアたっぷりに話します。

ちなみに、四国水族館では「早朝に漁師さんと一緒に漁に出て、(展示するための)魚をいただいてくるんです。漁師さんが欲しいのは(狙うのは)食用魚ですが、僕らが欲しい魚は食用魚じゃないんです。漁師さんにとって『いらないよ』って言う魚が僕らにとっては欲しい魚なので、(漁で)もらってきて、水槽や生簀(いけす)で餌づけをして持ってくるようにしています」と説明。

そのほか、繁殖や種の保存を目的に、飼育動物を水族館同士で貸し借りする“ブリーディングローン”と呼ばれる方法で生き物を集めているそうで、「ペンギンなども血統図ができているので、血が濃くならないように水族館同士で交換したりしています。基本的に野生から持ってくるのは極力少なくしようということで、自分たちで繫殖させた生き物をきちんと展示して、お客さまに観ていただくのが主流になりつつありますね」と下村さん。

とはいえ、なかには日本に生息していない生き物もたくさんいます。そうした生き物はどうしているのかというと、「1つは、そういう生き物を集めてくれる業者さんから。あとは、海外の水族館との交換。そしてもう1つは自分で捕りに行く、の3通りある」と言い、過去には、マレーシア、インドネシア、北極など海外まで自分で捕りに行ったこともあるそう。

生き物が相手だからこその苦労も

なかでも大変だったのは、“世界で一番小さな魚”と言われている「パエドキプリス・プロゲネティカ」が見つかったとき。

その大きさは、大人でも1cmぐらいにしかならないそうで「当時、ジンベエザメを飼育していたので、『世界最大と世界最小の生き物を展示する』コーナーを作ろうと、“大阪のノリ”でね(笑)。それで、ちゃんと論文も手に入れて、GPSを持って(パエドキプリスがいるとされる)山奥まで行ったんですよ。すると川が干上がっていて、あるはずの川がない……その絶望感たるや(苦笑)」とドラマチックに話します。

そんな予想だにしない光景に途方に暮れるも、「“きっとこの近くにいるに違いない”って(周辺を)走り回って。1週間〜10日ぐらいかなぁ、現地のよくわからない山奥に入って、小さな小川を探し回ってようやく見つけたんですよ。“よかった……”って。(見つけるまで)帰れないと思っていましたから」と笑います。そして、正式な申請手続きをして、無事に日本に輸入することができたそう。

こうした生き物にまつわるエピソードが尽きない下村さん。「水族館や動物園に行くのもいいんだけど、生き物って都会でも身近にいっぱいいる」と言います。実際、下村さんが東京で見たというムクドリやヒヨドリ、シジュウカラ、カワセミなどを挙げつつ、「通勤や通学の途中にも普通にいっぱいいますので、足元の自然を、もう1回見てもらいたい」と呼びかけます。

“生き物なんでも博士”、“生き物大好きおじさん”などと呼ばれることもある下村さんのトークに、ホランは「下村さんのように、“愛を持って自然のために生きよう”って思ってくださる人がいたからこそ、日本の自然や世界の自然が守られてきたんだなと思う」と感心しきり。「いまは水族館に勤めていらっしゃるので、生き物をどうやって見つけてくるのかといった試行錯誤や、大変なご苦労があるなかで、私たちは遊びに行くと“かわいいな”“生き物って素敵で神秘的だな”って思えているんだな、と感謝を感じました」と話していました。


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