2021/06/06

醤油」の塩分濃度は海水の約5倍…“しょっぱさ”を感じないのはなぜ? 醤油のスペシャリストが解説

DDP編集部

6月6日(日)の放送では、醤油のスペシャリスト・高橋万太郎さんをゲストに迎え、お届けしました。

null
(左から)ホラン千秋、高橋万太郎さん

「使い分けると、より食が楽しくなる」

日本各地の蔵元仕込みの醤油をセレクトし、100mlサイズの小瓶で販売する醤油専門サイト「職人醤油」を運営している高橋さん。この日、ホランの目の前には、そんな「職人醤油」自慢の6つの醤油がズラリと並びます。

その6つは、蔵元、熟成期間やうま味によって異なる醤油の種類別に高橋さんがセレクトしたもので、最も濃い「溜(たまり)醤油」、バランスよく濃厚な「再仕込醤油」、さまざまな食材と相性のいい万能タイプ「濃口醤油」、甘めの味わいの「甘口醤油」、西日本でお馴染みの「淡口(うすくち)醤油」、素材を活かす「白醤油」とその種類もさまざま。

高橋さんいわく、この6種類からさらに大きく3つに分類できるそうで、「甘口醤油と濃口醤油は“スタンダードゾーン”。何にかけても美味しい」と解説。また、高橋さんは醤油を“ワイン”に例えることがあり、白醤油と淡口醤油は「白ワイン系」、再仕込醤油と溜醤油は「赤ワイン系」に分類され、「ワインに相性がいい食べ物や素材があるのと同じように、素材を活かしたい白身魚などに使いたいのが『白ワイン系』で、お肉など味の濃い料理に合うのが『赤ワイン系』」と説明します。

蔵元は、日本各地に分布しているものの、「数の多さでは、福岡県。福岡だけで100軒以上の醤油屋さんがある」と高橋さん。また、「生産量では、大手メーカーのある千葉県が多いです。一方、九州には小さな醤油屋さんがたくさんある。

九州の醬油はお砂糖の入った甘い醤油が多くて、その甘さの加減も、ほのかに甘いものからお餅を食べるときの砂糖醤油よりも甘いものまで、造っている蔵元によって全部違う」という豆知識も。

また、「職人醤油」で取り扱っている醤油はおよそ100種類もあるそうで、「これまで約400軒の日本各地の蔵元に足を運んで、そのなかから50軒の蔵元とお付き合いがあり、そこで造っている100種類をラインナップしています」と話します。

実はこんなに違う“醤油”

なかでも、高橋さんが面白いと話すのが中部地方の醤油。「一番色の薄い『白醤油』と一番濃厚な『溜醤油』を同じ県で造っています」とその理由を明かします。

歴史を遡ってみると、中部地方ではもともと溜醤油が使われていたそうで、「溜醤油で料理をすると仕上がりが黒くなる。そこで、素材の色を活かしたいときや彩りがほしいとなったときに、真逆の白醤油が出てきた。なので、お刺身を食べるときやお肉を焼くときには溜醤油、煮物を作るときは白醤油といったように、明確に使い分けている」と言います。

高橋さんによると、圧倒的にシェアを占めるのは万能タイプの「濃口醤油」だそうで、「そのなかでも“しょっぱさ”が強いのは北のほう。太平洋と日本海側で分けたときに、日本海側の地域は甘い醤油が多い。特に海に近い地域は、甘いものを好む傾向があります」と話します。

それはなぜかと言うと、「よく聞くのは、漁師さんが海に出て仕事をしたとき、(潮風を受けているので)甘い醤油のほうが『美味しく感じる』って言うんです。逆に山仕事をしている人は、汗をたくさんかいているので、しょっぱい醬油のほうが美味しく感じる」と解説。

また、一般的には、白醤油や淡口醤油のいわゆる「白ワイン系」のほうがしょっぱさが強く、甘口醤油→濃口醤油→再仕込醤油→溜醤油と「赤ワイン系にいくほどしょっぱさを感じにくくなると思います」と高橋さん。

ちなみに、海水の塩分濃度は約3.5%に対し、醤油の塩分濃度はおよそ16%。そして、これらの醤油の種類による塩分濃度の違いはわずか数%なのだそう。では、なぜ海水の5倍近くも塩分濃度があるのに、そこまでしょっぱさを感じないかと言うと、「うま味や酸味、苦味など、人間が舌で感じる味わいが醬油のなかにはたくさん入っている。なので、しょっぱさだけをダイレクトに感じないのです。また、赤ワイン系にいくほど“うま味”が強くなるので、しょっぱさをそこまで感じにくくなる傾向があります」と話しました。

さまざまな醬油のあれこれを聞いたホランは、「まず、醤油のなかにも6種類に分類されることも知らなかったですし、醤油作りのバックグラウンドにあるストーリーも伺えて、とても面白かった」と感無量の様子でした。

職人醤油


Back issuesバックナンバー

more