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Dream HEART vol.378 脚本家・映画監督 松居大悟さん 著書「またね家族」

2020年06月27日

今週ゲストにお迎えしたのは、脚本家・映画監督の、松居大悟さんです。

松居さんは、1985年、福岡県のお生まれです。

慶應義塾大学在学中に、劇団ゴジゲンを結成。
全公演の作・演出・出演を手掛けられていらっしゃいます。

また、2009年、NHK『ふたつのスピカ』で、最年少のドラマ脚本家デビュー。
2012年、長編映画初監督作『アフロ田中』を発表。

その後、『ワンダフルワールドエンド』で、ベルリン国際映画祭出品、
『私たちのハァハァ』で、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2冠受賞、
『アズミ・ハルコは行方不明』で東京国際映画祭・ロッテルダム国際映画祭出品。

2018年には74分1カットの映画『アイスと雨音』や『君が君で君だ』が公開し、
枠に囚われない作風は国内外から評価が高く、ドラマ『バイプレイヤーズ』シリーズの
メイン監督も務められるなど、ご活躍中でいらっしゃいます。


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──自分の感覚をもとにした物語

茂木:小説「またね家族」の主人公の竹田は松居さんご自身と重なりませんか?

松居:そうですね。劇団を主宰していて、福岡が地元で。
初めて小説を書くとなった時に、完全なるフィクションというよりも、自分の感覚をもとに物語を立ち上げていきたいと思うと、やっぱり自分に近い話・設定になってしまいますね。演劇の楽屋の風景とかは自分には書けるけど、会社員たちの日々は書けないので。

茂木:劇団『マチノヒ』は恐らく『ゴジゲン』がモデルになってると思うんですけど、こんなに人間関係は大変なんですか?

松居:そうですね。やっぱり狭いコミュニティだし、逆にそれ以外の場所をどんどん閉じていかないと劇団はやっていけないんですよね。劇団と生活ぐらいにしか絞っていかないとできなくなってくると、そこでの関係性とかは家族に次ぐぐらいのかなり大きいものになってしまいますね。

茂木:あと、何と言っても、この小説の父親の存在感が激しいですね。松居さんのお父様はどれぐらい投影されてらっしゃるんですか?

松居:僕の父も去年七回忌を迎えて、自分の感覚の中で書いているので、僕と父の関係性とかなり近いものがありますね。

茂木:小説の中ではなかなかお父さんと心が通じ合えなくて、ただ、実はお父さんはずっと仕事を見てくれてたんですよね。結局、お父さんに認めてもらうために色んな仕事をしている、みたいな、そういう親子の愛情とか距離感とかがすごく感動的でした。実際のお父様ともこういう感じだったんですか?

松居:ありがとうございます。結局お芝居もほとんど観に来てくれなかったし。何なら自分がこういう分野(演劇・映画・テレビ)の仕事をやっていることが、父親にとっては面白いものではなかった…と、僕は思ってたんですよ。
すごく冷たい言葉も言われるし、僕の中ではずっと父親という存在をなかったことにしてきて、“認めさせたい”とも思うけど、面白い作品を作ったところで認めるわけじゃないとなった時に、苦しくて。そんな時に父が病気になったというので、色んなことがあったことが、亡くなってしばらく経ってから“あれって何だったんだろう?”と。この出来事は誰にも話してなかったので、向き合いながらちょっと考えてみたいなと思いましたね。

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茂木:過去のインタビューと見ても、そことのところがほとんど触れられてなかったので。今回、小説という形で自分の中で形になったんですかね。

松居:そうですね。考えようとしたという事実だけで、僕はもういいんじゃないかとも思ったんですよ。父親との存在は何だったんだろう、というのが言語化できなくて。

茂木:作家はすごいな、と思って。こういう作品という形で、自分もひとつ心の纏まりができるし、読者も、この小説はやっぱりお父さんがものすごく強烈な印象なんですよ。

松居:あの感覚をもとに書いていったので、すごく昔は怖くて。弱っていって、でも恰好悪いところを見せたくないという父親の感じとかが、許せないんだけど、なんか愛おしくもなってしまう自分も嫌だ、とかそういうものも全部書いてしまおうと思って、それでどう伝わるかはわからないけれど書きました。だから、そういうふうに言って貰えて嬉しいですね。

茂木:そして主人公の竹田が女性に対して大変不器用だというところが、松居さんご自身が投影されてるんですか?

松居:むしろ女性に対して器用な人なんていないと思ってるんですけど(笑)。女性に対してうまくできないじゃないですか。僕と言うよりも、もう多くの男は思ってることをうまく言えないし…。

茂木:松居さんはお仕事柄、いつも周りには綺麗な女性がいるようなイメージですけど、逆にこの小説の主人公・竹田がここまで不器用でいろいろ失敗もあるというのは、読者の共感を得るんじゃないですかね。

松居:みんなそうですからね。なので、“変わらないでいようとすることだ駄目だ”と言うか、男女関係の“変わるべきだ”と“変わらないでいるべきだ”の、残酷な考え方の違いとかは出てきたらいいな、と思いました。

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●またね家族 / 松居大悟



松居大悟 (@daradaradayo) -Twitter


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