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Dream HEART vol.456 宇宙航空研究開発機構(JAXA)名誉教授・はまぎんこども宇宙科学館館長 的川泰宣さん 『「はやぶさ2」のはるかな旅−史上初の挑戦とチームワーク』

2021年12月25日

的川泰宣さんは、1942年、広島県のお生まれ。

広島大学附属高等学校を経て東京大学に進学され、
東京大学宇宙航空研究所に入所。

その後、宇宙科学研究所教授・鹿児島宇宙空間観測所長・対外協力室長、
JAXA執行役を経て、現在は、はまぎんこども宇宙科学館の館長でいらっしゃいます。

ミューロケットの改良、
日本最初の人工衛星“おおすみ”を始めとする、数々の科学衛星の誕生に活躍し、
1980年代には、ハレー彗星探査計画に中心的なメンバーとして尽力。

2005年には、JAXA宇宙教育センターを先導して設立、初代センター長を務められます。

日本の宇宙活動の「語り部」であり、「宇宙教育の父」とも呼ばれていらっしゃいます。


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──システムとチームワーク

茂木:日本初の人工衛星“おおすみ”の記念すべき打ち上げから時を経て、“はやぶさ2”に行くわけですけども…。もちろん“はやぶさ2”も素晴らしいんですが、“はやぶさ”の成功は、的川先生のお話を伺っていると「よく帰って来たな!」と。

的川:そうですね、色んなことがありましたもんね(笑)。「もう駄目だ」という瞬間が5〜6回ありましたので。

茂木:イオンエンジンが上手く作動しなくて。でも実は、繋がっていなかったはずのところが繋がっていた、という話も伺いましたが。これはどういうことですか?

的川:イオンエンジンは同じものが4基積んであるんですけども、そのうちの3基を一度にふかすんですね。ただ、色々なことを経て、やっと地球に帰る軌道に乗った途中で、あと半年で着くという時に、もう4基ともへたってしまって動かなくなった。さすがのプロジェクトマネージャーの川口君も「参った」と記者会見で言ったんですけれども、イオンエンジンの開発の責任者が、「実は隠していることがあった」と、そういうことだったんです。
イオンエンジンは、プラスとマイナスをふくものを同期させて動くものなんですけど、4基のエンジンが別々になっていると思っていたら、お互いに電気回路が結んであって、上手く作動させて2つのエンジンのいい所同士を組み合わせれば、1基として活動する、という戦略が組み込んであったんですね。

茂木:仕様書には配線はなかったんですね。逆に言うと、何かのトラブルの時のバックアップとして開発の方が考えてらしたということですか。

的川:そうです。ただ、プロジェクトがだいぶ進んで、途中で思いついてやったことなので、もうちょっと言い出せなかったんですね。

茂木:(笑)。でも、もしそれがなかったら…。

的川:帰って来れなかったですね。

茂木:…ということですよね。

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茂木:そして、今回の“はやぶさ2”のチームメンバーは、的川先生にとっては可愛い後輩に当たると思うんですけど…。最近のチームメンバーの雰囲気などはどうですか?

的川:実は“はやぶさ2”が出発してしばらくした時に、相模原の構内を歩いていたら、“はやぶさ2”のグループの若い人が元気なさそうに歩いているんですよ。「おい、大丈夫か?」と言いましたら、「何も起きないんですよ」と言うんですよ。「何も起きないならいいじゃない」と言ったら、「いや、“はやぶさ”では余りに色々なことが起き過ぎたので、何も起きないとかえって不安になる」という話でしたね。
「ああ、そういうもんかな」と。「でも、そのうち起きるから心配するな」なんてことを言ってましたけど(笑)。

茂木:(笑)。

的川:でも、プロジェクトマネージャーに言わせると、「やっぱり最近の若い人は失敗経験がない」と言うわけです。初代の“はやぶさ”に全員が参加していたわけじゃないし、ほとんどが新しい人たちですから、そういう失敗経験のない日本の経営者にも当てはまるような事柄が“はやぶさ2”のチームにはあって。それをどう克服していくか、ということについては、本当にいい話を色々聞きました。
今、皆コンピューター技術と言うかAIの知識が非常にあって、その力を最大限に使ったシミュレーションでチームが失敗経験をする、ということをもの凄くやったみたいですね。

茂木:なるほど。シミュレーションの中で失敗をする、と。

的川:今は現実の経験ができるんですね。

茂木:面白い話ですね!
的川先生。「チームで成功すると、一人で成功するよりも100倍嬉しい」、と。

的川:全くそう思いますね。団体戦の方が人数分よりも遥かに喜びが大きい。ということがありますけれども。
宇宙開発の場合は、若い頃からそういうことをずっと思い知ってるだけに、スポーツと大変よく似た喜びがあるなと思います。

茂木:スポーツのチームワークと宇宙(開発)のチームワークは似ていますか?

的川:大変よく似てると思います。特に団体戦をやった人はチームを組んだ時にその試みがよく分かる感じがしますね。だから小さい時にスポーツをやるべきだな、と(笑)。

茂木:また今度、宇宙飛行士の募集を再開されるみたいなんですけど、今宇宙飛行士を目指す子供たちがいたとしたら、どういうことをお勧めしますか?

的川:今までは理工系の大学を出た人という制限があったんですけど、全部なくなりました。いわゆる文科系の人でもいいし、ミュージシャンでもどなたでもいいので、挑戦が非常にバラエティーに富んだものになるんじゃないかな、と。進行過程がどうなるのかという心配もありますけどね(笑)。でも魅力的な人たちが集まってくれるんじゃないかな、と思います。

茂木:一般の方は、“宇宙開発”と聞くと宇宙そのものを思い浮かべられると思うんですけど、“組織論”とか“システムをどう考えるか”とか、それがとても大事だということですね。

的川:そうだと思います。糸川(英夫)先生がずいぶん言っていたことですけど、「大きな組織をどういう風にやるか、大きな部品の集まりをどういう風にやっていくか、そのシステムとしてのものの考え方というのが、宇宙開発には絶対に必要だ」とおっしゃっていました。

茂木:よく「宇宙開発は我々の生活にどう役に立つのか?」というようなことも議論されますけど、そういう意味においてはシステム、そして組織をどう運用するかという知見がかなり得られる、と。

的川:そうだと思います。今これぐらい日本も経験を積んでくると、現実にH-IIAも大きなロケットを作っているし、人工衛星も“おおすみ”の時代から比べますともの凄く複雑なシステムになっていますし、システムとしてのものの考え方が、人間同士のチームワークと並んでとても大事な世界になってきたなと思いますね。

茂木:この度、ご著書の『「はやぶさ2」のはるかな旅−史上初の挑戦とチームワーク』、こちらはお子さんでも読みやすい、とてもいい本ですね。

的川:子供向けの公演が元になっているので、分かりやすいと思います。

茂木:読者の方に、どういうところを呼んで頂きたいですか?

的川:やはり、タイトルにある『チームワーク』。若い人たちがどんなに皆で力を合わせて、自由に発想を保ちながら頑張ったか、というところでしょうかね。

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●「はやぶさ2」のはるかな旅−史上初の挑戦とチームワーク / 的川泰宣 (監修)
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