Dream Heart(ドリームハート)

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REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.200 ヘレン・パンクハーストさん

2017年01月29日

今週も、先週に引き続き1910年代のイギリスで、
参政権を求めた女性たちの運動家「サフラジェット」のリーダーとして活動していた、
エメリン・パンクハーストさんのひ孫、ヘレン・パンクハーストさんをお迎えしました。

ヘレンさんは、今月の27日に公開した映画、
『未来を花束にして』のプロモーションのため来日されました。

『未来を花束にして』は、ヘレンさんの曾祖母である、エメリン・パンクハーストさんが中心となって、
参政権を求めた女性たちの運動家「サフラジェット」をテーマにした映画で、
現在、TOHOシネマズ、シャンテほか、全国の映画館で公開されています。
東京の小池知事など、今、「女性リーダー」が注目される中、注目していただきたい作品です。

今週は、ヘレン・パンクハーストさんご自身の活動について伺いました。






──いま抱える問題


茂木:ヘレンさんは、エメリン・パンクハーストさんの次女シルヴィアさんの孫として、1964年にエチオピアの首都 アディスアベバで生まれたということですが、なぜ、エチオピアで生まれたんですか?

ヘレン:エメリン・パンクハーストは、女性の権利というものに特化して活動していましたが、祖母のシルヴィアはより多くの社会的問題に関心がある女性でした。労働者階級にまつわる様々な社会運動であったり、イタリアがエチオピアを侵略したときに、周りの国々が”これはアフリカだし”と、関心を持たなかった。
その時に彼女は”独立国家としてのエチオピア”というものを支持していきたいと活動をした。そのためにエチオピアに移り、私はそこで生まれたんです。

茂木:ヘレンさんは、エディンバラ大学で博士号をとられているのですが、これは何の研究をされたんですか?

ヘレン:学際的な博士号で、経済学、人類学、社会学、政治学なんですが、主に政治学科、社会学科の方に見ていただきました。
当時研究していたのは、エチオピアでの生活、特に国家と地方のコミュニティとの関係、また男性女性との関係を研究していました。
非常に興味を持っていたのは、より権力を持っていない立場の者が、その中でいかに活動しているか、生きているかということだったんです。

茂木:ヘレンさんは様々な国際機関で働かれたあとで、現在は女性や子どもの貧困解決を支援するNGO団体、「ケア・インターナショナルUK」のキャンペーン・アンバサダーであり、「ケア・インターナショナル」アメリカ支部で水問題に取り組むチームの、テクニカルアドバイザーを務めていらっしゃいます。
「ケア・インターナショナル」という組織は、かなり古い組織のようですね?

ヘレン:かなりの歴史のある団体なんですが、活動の芯の部分にあるのは、女性にまつわる問題、貧困に関する問題です。
「ケア・インターナショナル」アメリカ支部と水問題に取り組んでいるのですが、例えばアフリカの国々で水を汲みに行く作業が、女性に任されているということがあります。何キロも歩いて水を運ばないといけない問題。
もう一つ私が活動している分野が、社会通念という部分です。エチオピアでも、若い時から結婚をします。
例えば9歳でも嫁いだりします、すると、その段階で教育が止まってしまい貧困のサイクルが始まってしまう…そういう問題があるからです。

茂木:「ケア・インターナショナル」は日本にも支部はあるんでしょうか?

ヘレン:日本にもありますし、世界中にあります。

茂木:「ケア・インターナショナル」の活動に興味を持って、”日本支部で何かをしたいな”という人はどういう参加の方法がありますか?

ヘレン:まず、インターネットで調べていただいて、どういうプロジェクトを「ケア・インターナショナル」が日本で行っているのか調べて、参加していただければと思います。しっかりとした団体で、様々な活動を行っています。



──ムーブメントの価値


茂木:ヘレン・パンクハーストさんは女性で素敵な方なんですけど。特に日本では、いわゆるフェミニスト的な、女性の権利向上を求める運動と女性らしさ…これは時代とともに進化すると思うんですけど。
それが相容れないというか、結びつかないというような社会的な認識があって。それが、多くの女性が、こういう運動を積極的に参加したりするということに躊躇ってるっていう状況があるんですけど、それについてはどのようなお考えがありますか?

ヘレン:社会的変革、あるいは進歩していきたいと望むのであれば、一番大切なことの一つは”たった一つのやり方しかないんだ”という考えをすることだと思います。例えばフェミニストだったら、”こういう外見でなければいけない、こういう行動をとらなければいけない”というレッテルを貼ってしまってはいけないと思うんですね。例えば、政治活動をしてないといけない、目立った活動をしてないといけない、というのは一切ないわけで。
まずは子供を育ててから、子供が大人になってから、また違った形でその活動に関わっていくという事もありだと思います。

茂木:なるほど。

ヘレン:男性のフェミニストという方々も、女性たちと仕事をどういう風に分かち合うのか、色々とすることができるので。ムーブメント、運動の価値というのは、皆が同じ形でするのではなく、人それぞれのやり方で、それぞれの機会を得てやっていくものではないかと思います。
けれども、確かに社会における女性というのは、一つのイメージ、通念というものを押し付けられることが多いです。その中で、あまり喋らないほうが美しいとされたり、立ち上がろうと思ってもタブーはあります。
心の準備ができていない女性に、「あなたはフェミニストじゃない」と言うのは間違いだと思っています。もっとニュアンスがあると思っていますし、こういう活動の中で、男性も非常に重要だと思うんですね。
男性の場合は、女性たちとどういう関係を持つのか、どうやって、よりオープンな社会にしていけるのか。それぞれ考えていくことも非常に大切だと思っています。
そういう風に、一つのシンプルなレッテル、あるいは考え方をしないことが、より強い政治、経済、社会、そして、より私たちが強くいられる方法ではないでしょうか。

茂木:まさに、今おっしゃったような様々なことを、今回の映画「未来を花束にして」が考えさせてくれるような気がします。
今のヘレンさんの言葉、心に染みました。ヘレンさんの今後の夢、人生で挑戦したいことは何でしょうか?

ヘレン:エメリンパンクハーストと近いものがあると思います。
彼女がバルコニーでスピーチをする場面があるのですが、彼女は「すべての少女が、すべての少年と同じように生きられる社会を」ということを言います。
その言葉が意味する通り、誰にも均等な機会が与えられること、誰もが輝けるような社会、誰もが自分の可能性をフルに見せられるような、そういう機会を与えられる社会を望んでいます。



●1月27日(金)から、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開。
映画「未来を花束にして」公式サイト



来週は、トラベルライター 兼高かおるさんをお迎えしてお話をうかがっていきます。
どうぞお楽しみに。