Dream Heart(ドリームハート)

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Dream HEART vol.379 脚本家・映画監督 松居大悟さん 「“表現”を誰かと一緒に作っていく」

2020年07月04日

今週ゲストにお迎えしたのは、脚本家・映画監督の、松居大悟さんです。

松居さんは、1985年、福岡県のお生まれです。

慶應義塾大学在学中に、劇団ゴジゲンを結成。
全公演の作・演出・出演を手掛けられていらっしゃいます。

また、2009年、NHK『ふたつのスピカ』で、最年少のドラマ脚本家デビュー。
2012年、長編映画初監督作『アフロ田中』を発表。

その後、『ワンダフルワールドエンド』で、ベルリン国際映画祭出品、
『私たちのハァハァ』で、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2冠受賞、
『アズミ・ハルコは行方不明』で東京国際映画祭・ロッテルダム国際映画祭出品。

2018年には74分1カットの映画『アイスと雨音』や『君が君で君だ』が公開され、
枠に囚われない作風は国内外から評価が高く、ドラマ『バイプレイヤーズ』シリーズの
メイン監督も務められるなど、ご活躍中でいらっしゃいます。


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──「小さい地球を一個作る」

茂木:慶応大学で演劇サークルに入ったのは、M-1グランプリの時の経験で“もうちょっと演技力が必要だ”というところから入ったそうですね。

松居:そうです。“なんであんなにウケなかったんだろう”と思った時に、「演技力が足りないんだ」とお互いに話して、演技力が必要だからとそれぞれ大学で演劇サークルに入ったんです。入ったら、漫才やってる時よりもお芝居をやってる時の方が楽しかったんですね。

茂木:何が楽しかったんですか?

松居:一緒にやっている人たちが、“その世界を生きようとする”ために設定を考えたりとか、 ここに入ってきた動機を考えたりとか。たぶん観た人には受け取られないぐらいなんだけれども、すごく細かくて、人間がその板の上に立ってる説得力を持たせるための作業を、みんな必死でしてるんです。それを「せーの」で板の上で揃えて、それを人が観る。そういう作業が、“小さい地球を一個作ってるみたいな感じ”ですごくいいなと思ったんですよね。

茂木:“小さい地球を一個作る”とは、素敵な表現だなぁ…! では、そこで何かに出会ってご自身の中で掴んだんですね。

松居:そうですね。短い時間じゃなくて、一か月間の時間をかけてそれを作る、というのが好きだったんですよね。

茂木:この演劇サークルは、慶応大学でもかなり大きいものだったんですよね。どのタイミングで独立したんですか?

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松居:サークルに入って最初は、僕は役者だけやってたんですけど、役者として毎回呼ばれるわけじゃないから、逆に、自分で書けば自分で出ることができるな、と思って脚本を書き始めたんです。そしたらそっちの方が面白いなと思って、脚本を毎年ガンガン演劇をやるようになっていって、一緒にやっているメンバーもいつも同じメンバーになってきて…。
僕は演劇が楽しくて演劇をもっとやりたいと思って、大学を休学してたんですよ。留年・休学とかしててずっと大学にいたんですけど、サークルに4年間入って卒業する年に、『ゴジゲン』というのを作りました。
一緒にやってたメンバーがみんな一緒にやると思ってたんですよ。と思ったら、みんなは留年も休学もせず、現役で普通に就活して、もういい企業に決まってて、僕は結構びっくりしちゃいました。

茂木:そうだったんだ(笑)。

松居:僕だけ何もしてないので、“やばい!”と焦って、ひとり役者で今も一緒にやっている目次という奴だけ同じ感じだったので、そいつと一緒に大学の後輩を巻き込んで劇団を作りましたね。


──尾崎世界観さんとの出会い

茂木:そのまま演劇人として小劇場の中でやられてた人生もあったと思うんですけど、ところがクリープハイプの尾崎世界観さんとの出会いというのがターニングポイントになったんですよね。

松居:それまではずっと、“自分の世界観や自分の中の空気をどれだけ演劇に投影できるか”とか、”努力すればするほどいいし、苦しめば苦しむほど作品としては正しい”と、自分を追い込むスタイルで作っていたんですよ。“自分が一番正しくて、周りはみんな駒だ”みたいな考え方をしていて、それで仲間が離れて行ったりということをして、裸の王様状態になっていたんです。
そんな時にクリープハイプの尾崎くんと出会ったんです。その時は、尾崎くんはまだメジャーデビューしてなくて来年メジャーデビューをするところで、僕も来年『アフロ田中』という映画が公開されるところ、というタイミングで「一緒にやってみよう」という時でした。
僕がやろうとしていることに、初めてガッツリ「もっとこうした方がいいよ」と意見を言われたんです。

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茂木:そうなんだ!

松居:そうです。それがすごく漠然とはしてたんですけど、「上手くやろうとしなくていいから、松居くん、もっとこういうのないかな?」と言って、それがすごく楽しかったんです。“表現を誰かと一緒に作っていくという作業は、こんなに豊かなんだ”と思った時に、もっと人の話を聞いて、一緒にやる人と作りたいなというスイッチが入りました。それからは、“人と作ることが楽しい”し、“人と作ることが豊かである”と思って。それまでずっと女性を描くことを避けてたんですけど、逆に描きたいな、と思ったりしたのは、彼との出会いのお陰ですね。

茂木:松居さんは表現者として名を成し、何者かになってるわけなんですけど、高校の時とか色々悶々としたりとか燻っていたりした時のことを思い出す時があると思います。今このラジオを聴いているリスナーの中にも“何かを表現したい”とか“何者かになりたい”という方もいらっしゃると思うんですけど、どういう言葉をかけてあげたいですか?

松居:色々試してみたらいいと思いますね。例えば、“お笑いが面白いからお笑いをやりたい”ってなった時に、お笑い芸人だけに限らないと思うんですよ。それじゃなくてバラエティの構成をすることもあるし、プロデューサーもあるし、それの美術を作る人だっているし、照明を当てる人だっているし…。
なので、一回調べてみて、試せるところからいろいろ試してみたりとかする。僕も“漫画家になりたい”と思ったけど漫画家になれなかったんですよ。なのでいまだに自分の一番の夢は叶ってないんですけど、でも視覚的に世界を作るのが好きだった。…そのことに気付いたから、映像だったり演劇だったりをやっていて、きっと自分は漫画そのもじゃなくてそれをやりたかったんだ、とかを思ったので、単純に面白いと思ったものを色々調べて、できることから試していって、それで向いていなかったらそれはすぐに辞めちゃえばいいと思うんですけどね。

茂木:色々実験をして、ということなんですかね。最初から決めつけないで、と言うか。

松居:そうです。それだけというわけでは、絶対にないんです。

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■プレゼントのお知らせ

本日のゲスト、松居大悟さんのご著書、「またね家族」に、
松居さんの直筆サインを入れて、3名さまにプレゼントします!

ご希望の方は、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。


茂木さんに聞きたい事や相談したい事など、
一緒にを添えていただけると嬉しいです。

尚、当選者の発表は、
商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。



●またね家族 / 松居大悟



松居大悟 (@daradaradayo) -Twitter


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