木村拓哉 Flow supported by Spotify - TOKYO FM 80.0MHz - 木村拓哉

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2020年11月15日Flow 第百二十回目「拓哉キャプテン × Creepy Nuts」Part3

今月、11月のゲストは「R-指定」さんと「DJ松永」さんによるHIPHOPユニット「Creepy Nuts」のお二人です。
今週はどんなトークになるのか、お楽しみに!!


木村:「大阪では不良ではなかった」と仰ってましたけど、なぜラップだったんですか?

R-指定:もともと、音楽はほとんどお父さんの影響で、車の中でかかるサザンオールスターズとか、おとんの世代の小田和正さんとか、そういうのを聴いてて。小学校ぐらいの時とかも、そこまでいろんな音楽を聴いてたわけではなくて。従姉妹のお姉ちゃんとかがちょっとテレビをつけている時に、その時は2000年代の前半やったんで、ちょっとお茶の間にもHIPHOPが流れてたりしてた時期やったんですよ。
その時にはあんまり興味がなくて、小6から中1ぐらいになる境目の時に、家族でご飯を食べてる時に、SOUL'd OUTっていうグループの「1,000,000 MONSTERS ATTACK」っていう曲が流れたんですよ。で、歌詞は聴き取れなくて、何を言ってるかはわからなかったんですよね。でも、めちゃめちゃ音がカッコいいし、何を言ってるのかわかれへんのが逆に気になって、“なんや、この曲?”って言って調べて、で、“あ、これジャンル的にはHIPHOPとかラップなんや”ってことで、急遽TSUTAYAに走りまして。でも、お金ないからレンタルですよね。「HIPHOP」「日本語ラップ」って書いてある棚の所に行って、なんとなく見たことのある名前、それこそ“Zeebra…テレビとかで聞いたことあるぞ”、“RHYMESTERも聞いたことあるな”みたいな。それを、全部まとめてレンタルして家で聴きまくったら、もうすっかりハマってしまって。

木村:へぇ〜!

R-指定:なんか、それまで聴いてた歌謡曲と違ったのが、“この人たち全員、自分のこと歌ってる!”みたいな。普通の歌手って、自分の名前を言い出してから歌わないじゃないですか。でも、HIPHOPで衝撃やったのが、「俺がZeebra」って言ってから歌ったりとか。“歌って、自分のことを歌っていいんや!”って思って、それで強烈に興味を持って。かつ、“韻を踏む”という行為をどうやらしてるらしい、と。“なんか面白い、似た響きが聴こえる。あ、これは韻を踏んでるんや”みたいな。そういう歌詞の構造と、自分のことを歌っていいというジャンルの特性みたいなところに、強烈に惹かれて。それでずっと聴き漁ってた時期が中学生ぐらいの時なんですよ。

木村:中学生でそこまでいったんだ。

R-指定:影響という意味では、RHYMESTERの皆さんも別に不良ってわけじゃないんですよ。いろんな日本のラッパーの名曲とかレジェンドたちを聴いてると、すごいやんちゃでカッコいい人もおるし、それもめっちゃ好きなんですよ。悪いHIPHOPとかいかついHIPHOPも大好きなんですけど、中学生の時に聴いてて“俺の人生と関係ないか”みたいな。“聴くだけのもんや”って思ってたんですけど、RHYMESTERを聴いて、「別にHIPHOPは不良じゃなくても誰でもやっていいし、お前、今このHIPHOPを聴いてカッケーって思ったよな。その思った感情が正しいから、やってみたらええやん。なぜなら、俺たちもそう思ってやってるから」というメッセージを歌の中で歌っていて、“じゃあ、俺もやっていいんかな?”みたいに思えたんですね。

木村:すごいすごい。すごいなぁ〜! 人のアンテナって、いろんな電波を拾うんだな(笑)。松永さんなんですけども、出会いは何ですか?

DJ松永:出会いは中学2年生ぐらいの頃ですかね。すごい歳上のお姉さんがいる友達がいて、その人はクラブとかに行ってたり、あと裏原系のストリートファッションが流行ってた時期なんで、そういうのにも詳しくて、その延長線で友達のお姉ちゃんから「こういう音楽があるんだよ」って教えてもらって、聴いて、それで“あ、カッコいいな”って思ったんですけど、更にどっぷりハマったきっかけが、ラジオなんですよ。
当時、まさしくこのTOKYO FMで、RHYMESTERが深夜番組で「WANTED!」っていう音楽番組を…。

木村:(R-指定と)おんなじRHYMESTERなんだ。

DJ松永:そうなんですよ。全く一緒で。で、そこで「WANTED!」を聴いて、そこからラジオとHIPHOPをむちゃくちゃ両方好きになるんですけど、1つのラジオ番組をめっちゃ好きになったらそのパーソナリティの表現するもの全部好き、そのパーソナリティの一挙一動全部好き…っていう病気になってしまって(笑)。そこでもうRHYMESTERがどうしようもなく好きになってしまうんですよ。
で、RHYMESTERの「WANTED!」を聴いて、いろんなHIPHOPアーティストがゲストで来るんですけど、聴いたらもう速攻でTSUTAYAに走って行ってレンタルでCD借りて、聴いて勉強したり。

木村:やってること全く一緒なんだね!

R-指定:そうなんですよ(笑)。全然違う土地で同じことしてたって(笑)。

木村:とりあえずTSUTAYAに走るっていうね。

R-指定:お互いの地元に、でっけーCDショップというよりは1番近くにTSUTAYAがあって、お互いお金がなかったからレンタルで聴いてたんですよね。

木村:「TSUTAYAありがとう」だね。で、音楽を聴いて一緒に言ってみるっていう行為に走るのはすごくわかるんだけど、なんでそこでラッパーではなくDJを選んだんですか?

DJ松永:俺もやっぱりRHYMESTERを聴いて、“ちょっとラップやってみたい、ステージで客を沸かせてみたい”っていう気持ちがあったんですけど、すごい目立ちたがり屋なんですけど、こう…恥を恐れるから…。

R-指定:(笑)。

木村:恥!? “恥を恐れる目立ちたがり屋”!

DJ松永:今、ラッパーを「恥」って言いましたけど(笑)。

R-指定:俺いつも気になるん、その話(笑)。

木村:あれでしょ? いっしょくたに“ラッパー”に対しての恥ではなくて、ラッパーとしてマイクを持った後に、“あ、なんだっけ?”とか、自分がかく恥ってことでしょ?

DJ松永:そうです。あと、かつ、プラスしてより失礼なんですけど、歌詞を書くってちょっと恥ずかしいじゃんって(笑)。

R-指定:お前な! いつもやってんねん、俺、横でそれを!

DJ松永:歌詞を書いてそれを歌うって、到底出来ないなって思ったんですよ。下に下げたところに、“DJっているな…”みたいな(笑)。

R-指定:「下に下げた」とか言うな!

DJ松永:(笑)。“DJっている!”ってなって、なおかつ、俺はRHYMESTERみたいにラップグループを組みたかったんで、ガーって歌ってるラッパーの横で涼しい顔して佇んでるDJの人って、よりクールでカッコいいんじゃないかと思って(笑)。“じゃあDJや〜ろう!”っていう、すごいあさましい考えで始めたんですよ(笑)。

木村:で、その大会?にエントリーして。その間の自分っていうのはどういう感じでエントリーしてたんですか?

DJ松永:なんか、田舎で、1人地元でDJやってるのは俺だけだったんですよ。HIPHOP聴いてるのも俺だけだったし。で、みんな出来なかったことだったから、みんなが俺がスクラッチ出来ることにワッって驚いてくれたり感心してくれたりしたんで、“DJが上手いってことが自分のアイデンティティなんだな”みたいになっていって。
それで、スクラッチ、DJの技術を極めに極めたところが、この自分がエントリーした「DMC」っていうDJの大会だったんですよね。
もう本当にスクラッチが異常発達した人は、スクラッチのノイズだけで数分間の演奏を成立させることできるんですけど、それがターンテーブル上で奏でる音楽、「ターンテーブリズム」って呼ばれるものなんですけど、“あ、そういうのがあるんだ”と思って。じゃあ、1番上手いヤツが集まる所でエントリーして、そこで1番上手いってなったら、もうそれこそ自分に自信が持てるし、より自分がDJが上手いというアイデンティティを確立させられるなと思って、そこに進もうと思ったんですよね。

木村:それで実際に(世界大会で優勝を)獲り。これはいきなりスーパーサイヤ人になっちゃうよね。

DJ松永:そうですね(笑)。

木村:(DMCの)北海道大会でまず、“俺、テクニックついたかも”ってなって、で全国大会出てやってみたら、“あれ?”っていう。“俺、頭金髪になってね?”っていう。

DJ松永:そうですね、はい(笑)。

R-指定:確かに、日本獲って世界行くまでの間に、何がとは言えないんですけど、“進化した感”みたいな。ポンポンっていって、で、気付いたら、今までもすげーDJっていうのは大前提やったんですけど、横におったヤツが次の日にはなんか世界一のヤツになってる…みたいな。すごい変な感じでしたね。

木村:まあ、今っぽく言うならば、サイヤ人じゃなかったのかな。今っぽく言うならば、1日にして「柱」になったような感じ。

R-指定・DJ松永:鬼滅の刃(笑)。

DJ松永:でも、獲るまでにけっこう時間はかかったんですけどね。最初にエントリーしたのが2009年とか2010年とかなんで。そこからけっこう負け続けて、2019年に(世界一を)獲ったんですよね。

木村:世界大会を獲るっていうのは、何が必要なんですか? だっていろんな、もちろんアメリカからも来てるだろうし、地元ロンドンからもエントリーしてると思うし。どんな人たちだった? 世界大会にいた人たちって。

DJ松永:もうホントに、それしかやってないような人たちですね。仙人みたいな集まりなんですよ。やっぱり、「DMC」っていうターンテーブリスト、ターンテーブリズムの業界って、技術が発展しすぎて、もう音楽業界の中ですごい異質な存在になってるんですよ。もうちょっと昔、音楽業界って近かったんですよ。だから、ターンテーブリズムを極めたら音楽業界でも認められるような存在だったんですけど、もうマニアックになり過ぎて、誰にも理解されないような業界になってしまったから、もうみんなDMCっていう数分間のルーティン、演目をルーティンって言うんですけど、ルーティンを作るために1年間を費やしてるんですよ。だから、音楽業界で売れるとか有名になるとかじゃなくて、本当に俗世から離れた仙人みたいな人しかターンテーブリストにはなれなくって。
だからもう、「日本2位」っていう戦績は不服だったんですよ。その不服な最終戦績を背負って生きていくのがマジしんどくって。“いや、俺はもっと上手い、どうだ!”っていう肩書きを持って生活をしないと、俺はダメだと思って。もう呪いみたいになってて、その呪いを解くために(大会に)出ないと、っていう使命になっていって、で、(2位だった)翌年の2017年に出るんですけど、でも1年でその数分間の演目を作るのってやっぱり難しくって。

木村:そっかそっか。

DJ松永:完成させるのは難しいんですけど、自分の引き出しを全部開けたからもう焼き直しみたいなものになってしまって、似てるようなものの劣化版みたいになってしまって、次は順位を落として日本3位になってしまうんですよね。それでめちゃめちゃ落ち込んで、地元の新潟に師匠がいるんですけど。

木村:師匠?

DJ松永:師匠は2016年の世界チャンピオンなんですけど、けっこうボロボロになって帰ってきて師匠の元に相談に行ったら、「もう、お前は5年ぐらい出るな」って言われて(笑)。「今もう1回ルーティンを頑張って1年かけて無理やり作っても、お前の手癖でしか作れないし、審査員にお前の手癖はバレてるから、順位を落としていく一方だから、1回出るのを止めて、お前の積み上げたもの、正解みたいなものを1回まっさらにする何も考えない時間を設けろ」と。かつ、「自分のスキルの底上げに数年間を費やせ」って言われたんですよね。

木村:すげぇな、師匠。

DJ松永:“まさしくそうだな”って思って。で、1年間出ずに、でも無理やり2019年に出ちゃうんですけどね。もう、「最終戦績3位」っていうのが辛すぎて。でも、Creepy Nutsとしては活動は軌道に乗ってるから、いろんなメディアに出てプロフィールを紹介されるんですよね。そこで「日本3位の松永さん」って言われるのがマジで恥ずかしくて。“いや、もっと出来るはずなのに”って思った状態で日本3位って言われるのがしんどすぎて、ホント具合が悪くなってくるんですよ(笑)。その呪いを解きたくて解きたくてしょうがなくって、半ば無理やり2019年に出て、奇跡的に(世界1位を)獲れるっていうことが起きたんですよね。

木村:でも、それは獲れたから今こうやって笑ってられるじゃない? でも、その師匠すごいね! その人は、普段もDJをされている人なんですか?

DJ松永:その人は、俺から見て超天才なんですよ。努力もあった上に、元々のセンスも素晴らしい人なんですけど、新潟で、農家の息子なんですよ。その人は、魚沼産コシヒカリを作ってる人なんですよ。

木村:マジ!?

DJ松永:マジで(笑)。俺がその人の家に行ってDJを習ってたんですけども、携帯の電波も入らないような山奥の家に住んでる人で。で、農家の長男なんで、農家をやらないって選択肢が無い人なんですよ。だから、その人は泣く泣くDJを引退してるんですよ。

木村:今はお米を作ってると。

DJ松永:今はお米を作ってます。その人にずっと教えてもらって。その人も仙人みたいな人で。

木村:へぇ〜! なんか話を聞いてるだけだと、もう“フォースを身に付けるか否か”みたいな。

DJ松永:そうです、そうです。

R-指定:でも、マジDMCの人はそんな感じやんな。

DJ松永:フォース…そういう領域というか。

木村:(笑)。新潟にヨーダがいるんだね。すごいな〜。いろんな過去があったけど、今笑えてるっていう。そして“生きてる”という。

DJ松永:ホントにそうです。

木村:まあ、これからに向かってのCreepy Nutsのお2人がいてくれてることに“良かった”って思うんですけど。毎回ゲストの方に「人生の1曲」っていうのを聞いてるんですけれども、今週はR-指定さんの人生の1曲を伺いたいと思います。

DJ松永:そうですね。先ほどもお話ししました、RHYMESTERの「ザ・グレート・アマチュアリズム」という曲がありまして。これは、僕が全然不良じゃない、僕みたいなヤツががラップをしていいのかなって思ってた中学生時代の自分に、「いや、お前もラップをしていいんやぞ」って、RHYMESTERが肩を押してくれた曲というか。
その曲の中では、RHYMESTERほどのベテランで一線級のスターの人たちが、「こちとらシロウト」って歌うんですよね。「偉大なるアマチュア トシロウト」って言えるのって、ものすごい素晴らしいなというか。この、“ホンマにHIPHOP大好き”みたいな、夢追っかけてるヤツらさえも肯定してくれるというか。で、「止まらない初期衝動」で、その初期衝動のまんまにやっちゃえばいいんや、っていうのを俺は言ってもらった気がして、この曲が人生の1曲やなって。

木村:まさにそういう感じですね。それがあったから今ここにいるっていう。

DJ松永:そうですね。

M1.ザ・グレート・アマチュアリズム/RHYMESTER

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