今週は先週に引き続き、11月5日・津波防災の日に行われたシンポジウムの模様をお届けします。これは森の長城プロジェクトなど「津波から命を守る森づくり」を大きなテーマにしたもので、防災・減災はじめ、各専門家による講演が行われました。
今回はそのなかから、森林分子生態学という、植物をDNAレベルで研究する研究者、東北大学大学院 准教授の陶山佳久さんの講演の一部をお届けします。
津波から命を守る「森作り」や「植樹」について、植物の専門家・陶山さんは、どう考えているのでしょうか。

◆生物には地域性がある
植樹というのは未来に対しての責任が生じる行為といえます。なぜなら未来の環境に影響を及ぼすからです。木は生きて成長して将来の環境をつくります。花を咲かせれば花粉を飛ばし、種を作り、周りの自然環境にも影響を及ぼすのです。したがって植樹というのはより良い未来の環境を導くということがいえます。
そして、生物には地域性があります。なぜなら各地域には各地域それぞれの歴史・環境があり、その歴史の上でその場所にいるのが基本だからです。したがって地域性を無視した植樹は自然破壊にもなり得ます。例として、森の防潮堤に使われている代表種・タブノキ。これは非常に大きく成長する木で、東北地方の海岸の代表的な広葉樹、日本の代表的な常緑の広葉樹です。太平洋側は岩手県から、南側は台湾や中国本土にもある。これがタブノキという木の分布域です。このように広い範囲に分布するので、地域地域にそれぞれ違ったタブの木が存在するというわけです。
実際、全国からタブノキを集めて337個体のDNAを比べたところ、全体として3つのグループに分かれていることがわかりました。西、関東、東北ときっぱり別れる。もちろん多少のノイズはありますが、この3つのグループがどういった経緯で、どれくらいの年代で分かれてきたのかは解析することができます。これが分かれたのは少なくとも数万年前です。氷河時代の寒かった頃は東北地方にはありませんでした。房総半島とか紀伊半島の先、鹿児島にしか存在しない。寒かったからです。
みなさんは、森はずっとその場にあるような気になっているかもしれませんが、そんなことはありません。少なくとも1万年以上かけて今の分布域まで広がっている。動いているのであれば今も動かしてもいいじゃないかと思われるかもしれませんが、そんなことはないんです。分布域が動くのには数百世代以上がかかっています。毎世代毎世代、たくさんの種を作ってその中で環境に適したものが生き残って、それを繰り返し、トライアンドエラーが繰り返されて現在に至っているわけです。それぞれの地に生き残っている生物は、基本的に同じような歴史を持っていて、それが各地に根付いているんですね。そう考えると、それぞれの地にそれぞれの宝があると言ってもいいと思います。


陶山さんはこの「タブノキ」という樹木のDNAを全国的に調査。同じタブノキでも、東北と、それ以外では別のグループに分かれることを突き止めているんですが、この調査結果は、植樹や森づくりをする上で大きな意味があるんです。

◆未来により良い環境を残す
タブノキはこのように広い範囲に分布するので、地域地域にそれぞれ違ったタブノキが存在するのですが、全体として西・関東・東北の3つのグループに分かれることがわかりました。
植樹の際には、例えば苗木が足りないとか、経済的な問題でやむを得ず違う地域から移植されることがあります。いまはこのデータがあるので「それは違う地域のものですよ」と言うことができるが、このデータが無ければ、同じタブノキだからいいでしょと植えられてしまう。遺伝的に違うことがなぜ悪いのかを説明するために実際に植えて比較をしてみた。千年希望の丘で、同じ数だけ同じ場所に統計的に比較できるようにタブノキを植えました。一冬越えたあと、愛知県産・茨城県産の苗木は枯れていました。一方で、全く同じ条件でも、宮城県産のものは元気に育っているものがある。南三陸でも比較したのですが、宮城県のものはやはり成長が良い。樹高がわずか1年で他の地域のものとくらべて、10センチくらい差が出ちゃう。成長だけでなく、冬を越えた時に一番先端の芽「頂芽」がたくさん枯れてしまうということもわかりました。宮城県産でも50%くらい枯れてしまうのですが、愛知県産はわずか15%しか生き残りませんでした。宮城県産は冬の寒い状況に対応できているからこうなるのですが、これがわかっていたら他の地域の木を植樹はしないですよね。
まず地域には独自の遺伝的な系統があるということを覚えておいてください。地域環境に適応した個体によって、将来に確実な海岸林を成立が期待できるし、森の恵みを享受することができるわけです。つまり地域性種苗・地域の苗木は歴史という保険が利いているということなんです。
他地域産の種苗であっても問題なく成長することはもちろんあります。外来種でもよく成長し繁栄しているものもあります。でもそれは遺伝子攪乱を起こしてしまうので、成長しようがしまいが、他地域産のものを持ってくるのは良い事はありません。未来に責任の無い行為だということができると思います。
私は研究をしていて色々何をやればいいのかと思うことがあるが、今ははっきりとこうしたいという気持ちがあります。僕のできることは遺伝子を調べることなので、地域の遺伝資源を次代に残し、未来により良い環境を残すため、森の防潮堤にも貢献できればと思っています。


陶山佳久さんのお話しいかがだったでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Brighter Than The Sun / Colbie Caillat
・Happy Tomorrow / Nina

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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