前回に引き続き科学界のインディ・ジョーンズこと、辺境生物学者・長沼毅さんのインタビューをお届けします。
深海、砂漠、北極に南極はじめ、生命の乏しい極限の環境…つまり「辺境」の生物から、様々なことを発見してきた長沼さん。
きょうはそんな長沼さんが、辺境とは正反対の場所、生命が溢れる「森」について語ってくれます。

◆アフリカ ルウェンゾリの地衣類
アフリカでいちばん高い山はキリマンジャロです。二番目がケニア山で三番目はルウェンゾリというんですが、これはウガンダとコンゴの国境沿いで、標高5100m程です。そこのてっぺんに行く途中にジャングルがあって、そこは森林限界ギリギリのところなんですけども、そこはアフリカ大陸のど真ん中、赤道直下です。東アフリカと西アフリカの境界なんです。アフリカの真ん中に高い山脈があって、その一部を成してるのがルウェンゾリです。その山脈を境にしてコンゴ側は雨がいっぱい降ります。反対の東側の方は雨が少なくて、いわゆるサバンナになっています。
元々はそこには山なんかなかったんだけども、今から数百万年前に地球の内部からマントルが上がってきて、アフリカの真ん中に高い山ができました。それによってジャングルだったところがサバンナ化して、サルがジャングルから外に出たというのが人間の進化に重要な影響を及ぼしたっていう説もあるんですね。
いずれにしても、今のルウェンゾリ山の周りのジャングルは未だにチンパンジー、ボノボあるいはゴリラ、そういった我々の仲間たちの生息地なんです。だからネアンデルタール人はみんな絶滅しましたけども、今生きてる生き物で一番我々に近いのはチンパンジー、ボノボ、ゴリラなんですよね。だから我々の事を知りたければチンパンジー、ボノボ、ゴリラの事を知るべきであって、そこはルウェンゾリの麓の森なんですよ。
面白かったのは、そこに生えてる木々の枝から何か草のようなものが無数に垂れ下がっている。細長い繊維が絡まったものがぶら下がっていて、何だろうと思ったら地衣類なんですよ。ああいうところは本当に生き物が豊富で、地衣類でさえもうっかり育っちゃうんですね。地衣類は普通は他の生き物がいられないような過酷な環境、あるいはビルの外壁にへばりつくんだけども、ジャングルみたいに生命力の溢れかえってる世界では地衣類さえも生命力を発揮しまくって垂れ下がっちゃうんだ!っていう感じです。
それをまたね、動物が食べるんですね。びっくりしましたよ。まさか地衣類がジャングルであんなに大量に存在して、動物たちの食料になってるなんて想像もしなかった。本当に生きていくのが大変なところでかつかつに生きてると思いきや、生命力が溢れかえってる世界ではもう誰よりも生命力を発揮してますね。

ルウェンゾリの山の東側はサバンナになっていて、木なんて生えないはずですが、幸いなことにルウェンゾリは赤道直下とはいえ標高5100mもあるので、頂上には氷河があるんですよ。赤道直下の氷河、万年雪ですね。夏の間にはその雪や氷が溶けて、水が下って行ってビクトリア湖という大きい湖に入る。それはやがてナイル川になるんですけども、ナイル川の源流の雪溶け水が山を下ってきたところにジャングルができる。コンゴ側はもちろん雨がいっぱい降るんでほっといてもジャングルですが、東側はサバンナの中にまさかこんなジャングルがあるんだと思いました。つまり普通だったらそこにジャングルはないんだけども、ちょっとした水さえあればジャングルは生息し得るんだなと思った。本当に植物って条件さえ合えば一気にワーッと増えるでしょ。ものすごいことですよね。
しかも彼らは自分の身体を作る原料は空気中の二酸化炭素なんですよね。本当に無から有を生み出してどんどんはびこっていくっていう様子。生命力への驚きっていうよりも恐怖感さえ覚えるんだけども、まさにその恐怖感に近いものをルウェンゾリの麓のジャングルで感じましたね。


この番組でも、こういう植物のスゴサは色々紹介してきましたよね。例えばお米一粒を撒けば、秋には1600粒のお米粒ができる。そんなことができるのは植物の光合成の力だけ。そして、長沼さんが日本の森の中で、印象的なものを教えてもらいました。

◆緑のダム
三月に屋久島に行ったんですよ。屋久島は高い山がありますね。九州の高い山ベスト8が全部屋久島にあって、高い山から海沿いまで短い川が急な斜面を下っていく。そこに水力発電所があるんですね。屋久島電工っていう会社が持ってる水力発電所で、発電したものを売ってるんですよ、昔から。いま、電力自由化なんて言ってますけども、電力自由化をずっと昔から実現してたのが屋久島なんですね。
それを支えてるのが屋久島の高い山であり、高い山に生えている木々が保水力を維持してる。その保水力が無いと、降った雨はそのまま海にダーッと流れちゃうので、保水力を維持するからこそ、ずっと川が絶えず水を流して水力発電ができてるってことだったんですね。緑のダムっていうか、保水力は屋久島の木々が、森林が担ってます。


最後は屋久島ということで、あの「屋久杉」のような樹齢数千年とも言われる巨樹・巨木について、科学者として何を想うか伺いました。

◆スローライフな生き物たち
巨木巨樹は屋久島のみならず世界中にあるわけですけども、時間を感じますよね。どんだけ長い時間を経てきたんだろうっていう。
ただその時間というものは二つあるんですよ。一つはニュートン時間。これは物理学的な時間で、私たちが時計で計ってるような時間。つまり私たちに一番馴染み深い時間です。もうひとつはベルグソン時間と言って、これは哲学者のベルグソンが言ったんですけども、我々の心の中で流れてる時間です。ニュートン時間とは違う。これみなさん経験ありますよね、楽しい時間は早く過ぎるとか。
心っていうのは人間固有かもしれないけども、多分それを拡大解釈すれば、一つ一つの生き物にそれぞれの時間があるわけ。だから屋久杉は人間でいえばもう何百年、あるいは数千年生きてきたんだけども、彼らにとっては意外と短いかもしれない。彼らにとってはもう本当瞬きをしている間に人間社会が目まぐるしく変化してきたとかね、そんなことかもしれませんよ。
私が辺境生物を研究して学んだことは、彼らはゆっくり生きるスローライフな生き物たちなんです。スローライフなものたちはなんとなく夢うつつの中で気が付いたら何千年経ってたなーって感じかもしれませんよ。


長沼毅さんのお話いかがだったでしょうか。
来週も引き続き長沼産のインタビューをお届けします!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・What You Thought You Need / Jack Johnson
・Like A Rolling Stone / Bob Dylan

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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