アメリカ・ミシガン州出身で広島在住の詩人、アーサー・ビナードさんのインタビュー。今週で3回目となります。
今日は、ビナードさんが先日発表した絵本『わたしの森に』の舞台となった場所、新潟県十日町市にある「鉢」という名前の集落のお話です。
その名の通り、山あいにあって、すり鉢のような形の集落は、JR十日町駅から「鉢」行きの路線バスに揺られ、市街地を抜け、信濃川を渡り、山を越え、谷を越え、また山を登って、ようやく辿り着くという場所にあるそう。いったいどんな場所なのでしょうか。


『わたしの森に』くもん出版(文:アーサー・ビナード、絵:田島征三)

 鉢集落に田島さんの美術館があります。美術館といっても廃校になった小学校。真田小学校の生徒が3人になって廃校が決まった時に、田島さんが集落のみんなと美術館に作り替えたんです。その美術館の敷地内にマムシが住み着いているところがあるんですが、田島さんがトリエンナーレの企画展を一緒にやらないかと誘ってくれて、最初の打ち合わせをしているときに田島さんが、すぐ絵を描き出すんです。ここにビオトープがあって、ここに校舎があって、ここが体育館で。そして、ここの草が生えているところにマムシがいますから何とかしなければいけない。マムシがいるから草を刈ると言うんですね。でも僕は「マムシがいて何が悪いんだ」と、蛇の弁護人みたいに言って(笑)そうしたら「そうか、そうか」と。そこからマムシがだんだん主役になってきちゃって、マムシが心地よく訪ねる、来館できる美術館にしようよということになりました。毒蛇だから締め出すって美術として失格じゃんって思うんです。美術って視点を変えてみんなの視野を広げること。マムシを中心に据えて考えると世界が違って見えます。そして、集落の皆さんがマムシとどういう風につながっているかということも聞いたりして、結局巨大マムシを作ったんです。2018年越後妻有アートトリエンナーレにたくさんの人たちが来てくれたんだけど、その時は竹で作った巨大マムシから美術館に入るんです
 嫌われ者で、そういう風に扱われている、人間の社会の中でも忌み嫌われるものには、何か大事な意味があります。嫌われている理由は多くの場合、嫌っている方にる。つまり包容力がないということだったり、権力側の都合で締め出すことにメリットがあるとか。差別というのも利用されて、社会が差別の方向に進むということがあるから、なんで嫌っているのか、嫌われている側に問題があるのか、それともこっちに問題があるのか考える入り口にもなり得るんだよね。マムシほど嫌われている生き物は無いけれども、マムシほど優れた生き物はない。だから嫉妬してんじゃないかと思うんですよ。
 鉢集落は農業と林業と、もともとあった奥山がつながっている集落なんですよね。もちろんそこに住む人たちが減っていて、やれてない田んぼとかがある。それでもちゃんと機能していて、集落の人たちが農業と林業と、ある程度の手入れができているんです。だから針葉樹が多いところは生き物たちにとってどんぐりもないし、食べ物が少ない状態なんだけど、その間に生活圏とか、畑とかがあって全部針葉樹一色じゃないから、野生の生き物がいるんです。昔の話を聞くと、食料が足りない時代、子供が病気になると森に入ってマムシ、ヒキガエル、今は食べない生き物をとって積極的に食べて、病気がちの子供の力になったそうです。「私はマムシで強くなった、育った」と言うお母さんやおばあちゃんもいたんですよね。隣の大島村の友達がマムシをつかまえてくれて持ってきてくれて、去年はしばらくマムシと一緒に暮らしていました。本当に美しい。最後は、、、漬けましたけどね。マムシ酒というのがあるでしょう。ブヨに刺された時はマムシ酒ですよ。うちの妹が日本に来たときにブヨに噛まれたんです。病院に行こうかと言っていたらおばあちゃんは、マムシ酒を塗りましょうとマムシが入っている一升瓶を出してきた。うちの妹は「うわあぁぁ」と言っていたけど、塗ってあげて湿布を巻いたら1時間位で治っちゃった。そしたらうちの妹は、これはミラクルだと言ってました。


来週もアーサー・ビナードさんのお話の続きをお届けします!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Sunday Candy / Donnie Trumpet & the Social Experiment
・Back To December / Taylor Swift

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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