高橋:絶海の孤島・小笠原諸島 西之島。少しおさらいをすると・・・
海底火山によって1973年と2013年に大きく噴火し、それぞれ陸地をつくっていき
最近では2019年からまた新たな噴火が起こって、ものすごい量の溶岩と火山灰が出て
過去の島は全て埋まってしまい、全く新しい島が出来上がったというのが
西之島の生物学者にとって興味深いところになります。
ということで調査チームのメンバー、鳥類学者・川上和人さん
インタビューの続きをお聞きください。




>>>>>>>>>>>>>>

川上:今後の調査としては、
まずは上陸調査をちゃんとしたいと思っています。
鳥なんかは大きいのでドローンで十分調査ができるんですけど
なかなか昆虫や植物はドローンだけでは
わからない部分がたくさんある。
あとは土の中がどうなっているかもわからないし、
鳥でも地上で繁殖するものと地中に穴を掘って
その中に巣を作るものもいるんですね。
実は去年の調査でも、地中に穴を掘って巣を作る
ミズナギドリの仲間オナガミズナギドリが島に飛来している事は
確認できたんだが、巣を作っているかどうかはちゃんと
地面の下をみないとわからないので、それはわかっていない。
もしかしたら近いうちに巣を作り始めるかもしれないので
それも含めて今どうなっているのかを本当に調査したい。
というのは、これから長い変化をしていくと言いましたが、
変化していくその姿を見ていくためには変化する前の
最初の状態を記録しておかなければいけないわけですよね。
そうじゃないと本当にいつ何が起こったかがわからなくなっちゃうので、
まずはスタート地点を記録したいんですね。




高橋:それには上陸ですね!

川上:それを2019年に環境省の調査で、
まさに最初の状態がどうかというの記録しなきゃいけない
というので上陸調査をやったんですね。
その調査の3ヶ月後に噴火をしてしまって、また全部なくなってしまった。
だからもう一度ゼロの状態を確認しに行きたいんですね。


高橋:いつ頃上陸できるようになりますか?

川上:全くわからないですね。
去年の調査を行ったのが7月と9月だったんですけど、
その頃は噴火がちょっと落ち着いていたのでこのままいけば
もしかしたら今年上陸できるんじゃないかなんていう
淡い期待も抱いていたんですけど、
その後10月と11月に結構な噴煙をまた出し始めているので、
これはちょっと無理かなと思っているんですね。
これは本当に予想できないですね。


高橋:そうなると、私たちもいつか島を見てみたいと思いますが、私たちが上陸できるのはまだまだ先ですね。

川上:2013年噴火が起こった後で
小笠原海運というおがさわら丸を出している会社が、
西之島を見に行くツアーを組んでくれて父島から
西之島の周りをぐるりと回ってそれで帰ってくるツアーがあったんです。
またそういうことをしてもらえれば、
まずどんな状況なのかを見られると思うんですね。
それは期待しちゃいますね。


高橋:おがさわら丸で1周っていいですね。

川上:見るだけでインパクトがあるので。

高橋:運がよければ鳥も見えたりしますか?

川上:前にそういうツアーをやったときには
船の上から陸上で繁殖している姿が見えましたし、
船が来るとなんだなんだと鳥も近くにやってきたりするので、
その時は海鳥だけじゃなくてツバメが飛んできたこともあって、
こんなところにツバメがやってきているんだと
びっくりしたこともありますね。


高橋:本当に未開拓の土地、西之島に上陸する時ってすごく気を使うというか、注意しなきゃいけないことがたくさんあるんですよね

川上:我々が見ているのは何かというと、
新しい生態系が何もないところにどうやってできていくかを
見ているわけなんですよね。
言って見ればそれがガラパゴスでありハワイであり小笠原であり、
いろんな島の生物相の始まりの部分です。
そこを見ていくためにはやっぱり人間の影響がない状態で
何が起こっているのかを知りたいわけですよね。
そうすると外来生物を持ち込まないように
荷物をなるべく新品の道具を持っていったり、
海につかって体を洗ってから上陸したり。
あとは外来生物だけではなく例えば海鳥が繁殖をしていることによって、
その生物相ができていくんだと考えているので、
我々の調査のせいで鳥が繁殖を止めてしまったりとか、
そういったことがあると島の歴史に影響与えてしまうことになると
思うんですね。西之島の価値というのが一体何かと言うと、
やはり人間が一切関係しないような自然の原生の状態の生態系で
一体どうやって島に生物が定着して、成立していくのか、
生物相が成立していくのか、これを知ることが
西之島の最大の価値なんですね。
そこにいかに影響与えないかというのがやっぱり研究をしていく上で
大きなテーマになっていますね。


高橋:何も持っていかないという事ですね。

川上:植物の種ひとつ紛れ込まないように、
ものすごいチェックをしていくんですけれども。


高橋:お話を伺うと、すごいものが首都東京の中にあるんだなと感じましたが、川上さんは西之島の存在というのが私たちにどんなことを伝えてくれていると思いますか?

川上:例えば僕らも研究をしていると、
私は小笠原の鳥の研究をしているんですが、
人間の影響で絶滅しかかっている鳥がいたり、
どうしても保全を考えなきゃいけなくなっちゃうんです。
そういうのって大切なことだけれどもなかなか大変なことなんですよね。
ところが西之島は、保全とは離れた、完全な独立した感動というか、
自然の凄さを余計なことを考えずに目の当たりにできる場所なんですね。
見るだけで感動できるものって世の中にはあると思うんですが、
その1つになっているんじゃないかなと思います。何の説明もいらない、
そういうインパクトがあるんですよ。
そういう意味では、外来生物を持ち込まないために
なかなか多くの人に上陸してもらうというの難しいと思うんですけど、
船でツアーのようなものがあれば多くの人にあの状態を見ていただくことで、
いかにあそこが素晴らしいところなのか、
面白いところなのかとを多くの人に見てもらいたいと思いますね。



高橋:西之島の10000年後をタイムマシンがあったら見てみたいとおっしゃってましたが、それは現実問題できない。研究者としてはそのもどかしさは感じられるんですか?

川上:それを知りたいという大きな希望あるんですけれども、
幸いなのが世界には島がたくさんあるんですね。
例えば小笠原の中にもいろんな島があって、
西之島は出来立てだけれども、父島は4千万年経っている。
火山列島の南硫黄島は数万年。
いろんな年月が経った島が世界中にたくさんあるんですね。
それを見ることによって、ここは数千年の島なんだ、
という事は数千年経つとこうなるんだとかですね、
ここの島は隣の島と近いから変化のスピードが早いんだとか、
この孤立島で500万年経っていると
こういう感じなんだということがわかるんですね。
そうすると我々はすでにタイムマシンを持っているようなもので、
同じ時間の中でいろんな年代の島を見ることができるんですね。
そう思うとたくさん僕も勉強をして、
いろんなところにいて生態系を見ることによって、
その1万年なり1千万年なりを自分の中で作り上げていくことが
できるんじゃないかと思っています。


高橋:教材がたくさんあるんですね、世界には。

川上:そしてその中で今まで、できたての、
孤立した島の0年というのが今までなかったわけですね。
数万年も数百万年も数千万年もあったけど、
0年の島は我々は持っていなかった。
ところがそれをようやくわれわれは手に入れることができた。
この最初の数年、数十年をきちんとモニタリングして
どういう変化が起こっていくのかを記録に残せば、
おそらく何百年何千年後の研究者たちがそれを参考に、
こうやって変化したんだということが
理解できるようになってくると思います。


高橋:そう考えると0年の島を研究できる年代に生まれた川上さんはめちゃめちゃラッキーですね。

川上:ものすごく研究者としてはラッキーですね。
向こうから飛び込んできてくれたので。
何か起こったらもう一度ゼロからを見ていくチャンスができますし、
発表していきますので期待して欲しいなと思います。


高橋:過去ぜひまた新しいことがわかったら教えていただければと思います。ありがとうございました。

>>>>>>>>>>>>>>



高橋:川上さん、鳥に関する面白い本の日本語版を監修されたばかり。
タイトルは『鳥になるのはどんな感じ?見るだけでは物足りないあなたのための鳥類学入門』(羊土社)
ぜひ、お手に取ってみてください!



【今週の番組内でのオンエア曲】
・Scars / Nenashi
・その線は水平線 / くるり

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

あなたからのメッセージ・ご意見をお待ちしております

各放送局の放送時間

  • JFN募金は鎮守の森のプロジェクトを応援しています。

ポッドキャスト

  • ポッドキャスト RSS
  • ※iTunesなどのPodcastingアプリケーションにドラッグ&ドロップしてください。

アーカイブ

  • 鎮守の森のプロジェクト
  • LOVE&HOPE〜ヒューマン・ケア・プロジェクト〜
  • AIG損保 ACTIVE CARE

PAGE TOP