- 2019.02.10
写真家 石川直樹さんインタビュー2
今週も先週に引き続き世界をフィールドに活動を続ける写真家・石川直樹さんのインタビューです。
東京・新宿の東京オペラシティ アートギャラリーで写真展を開催中の石川さん。その写真には、いわゆる「世界の絶景」をおさめたものだけでなく、人と自然・人類の歴史など、独自のアプローチで撮られたものが多いのですが、今日はそんなお話をいろいろお届けします!

人がなかなか行かない場所に行くということは、ガイドブックなんかもないですから、情報を得られるのは人類学の論文だったり、民俗学の論文だったりします。なので、意識しなくてもそこに接続していくのがあるんです。例えばパキスタンの山奥の情報はあまりないし、各地の小さなお祭りなんかも人類学や民俗学の視点がどうしても必要になってくるわけですね。
〜いろいろな場所の、何万年も前の私たちの祖先が描いた壁画を写真に収められていますね。
旅をするというのは移動する事ですが、古代の人が直接描い壁画だったり、手の痕跡だったりを見ると時間をさかのぼる旅をしていくような感覚があって、今までの山登りとかとはまた違う、タイムマシンではないけれども、そういう旅をしているような感覚になりますよね。
〜動物も様々に描かれていますよね。
おまじない的な意味合いもあるみたいで、動物を捕りたいという強い願いを込めて描かれた壁画だと言われていますね。
〜数々の壁画を見ている石川さんですが、一番印象に残っているのは?
世界中に手の壁画があるんです。。ヨーロッパにも中央アジアにも北米にも南米にもオーストラリアにもあって、それがすごく不思議なんです。壁に手を置いて、口に顔料を含んで唾液と一緒に、インクジェットプリンターのように吹き付けていくんです。その壁画が世界中に残っているのですが、なぜ描かれたのかいまだに諸説あってわかっていなくて、それがいつも不思議に思っていますね。ネガティブハンドといって、写真のネガフィルムと同じで反転画像になっているんです。それが不思議。なぜなんだろうといつも思います。ほかにも本当にいろんなもの見ましたね。オーストラリアの壁画なんかはいまも描き続けられています。アボリジニの人たちは文字がないので、絵で歴史を伝えたりして、今もずっと受け継がれて描き続けられているんですよね。
〜今回の個展では秋田のなまはげなど、来訪神をテーマにした写真もありますが、写真家として仮面の神々たちをどんな存在だと思いますか?
仮面がものすごく迫力あって、インパクトがありました。鹿児島の悪石島にボゼというものを見て、「日本もアジアなのか」という感覚に出会ってから、日本列島に点在する来訪神の仮面の行事を撮影していこうと思10年近くずっと撮影し続けていますね。仮面を使ってお祭りは北陸と東北と九州と沖縄があって、間にはない。やっぱり海の彼方からやってくる異質な他者を表しているらしくて、北と南に分かれていて面白いですね。特に南のはやっぱりアジアとのつながりがすごいあります。中国大陸もあるし、あるいはフィリピンやあっちの影響も見られるし、交差点になっている場所が鹿児島・沖縄の島々かなと思います。

『国東半島』石川直樹(青土社)
〜国東半島の写真集も出されていますが、国東半島はどういう土地なんですか?
すごく不思議な場所でした。3年ぐらいずっと通っていたんですけれども、すごく古くからの行事だったり文化が残っている場所で、朝鮮半島の影響も混じっているし、仮面の行事、ケベスだったり修正鬼会(しゅじょうおにえ)だったり、昔からの特別な行事事がたくさん残っていて面白い場所でしたね。
〜修正鬼会とはどういったものなんですか?
お坊さんが全身を縄で縛られているのですが、鬼の魔力を閉じ込めると言われています。お坊さんたちは夜通し集落を一軒一軒まわり、お祈りをしたりご馳走をもらったりお酒を飲ましてもらったりして、最後は本当にフラフラになって朝5時にお寺に戻ってくると、暴れて暴れて、トランス状態に入ってるんです。そして、みんなに押さえつけられて縄を解かれるとまた日常に戻るという不思議な行事ですよね。
写真家・石川直樹さんにお話いかがだったでしょうか。石川さんの個展「この星の光の地図を写す」は新宿の東京オペラシティ アートギャラリーで開催中。

同じタイトルの写真集も出版されています。ぜひチェックしてみてくださいね。


石川直樹写真集『この星の光の地図を写す』リトルモア
【今週の番組内でのオンエア曲】
・SNOW SOUND / ALEXANDROS
・Ain't Got You / Kevin Michael
東京・新宿の東京オペラシティ アートギャラリーで写真展を開催中の石川さん。その写真には、いわゆる「世界の絶景」をおさめたものだけでなく、人と自然・人類の歴史など、独自のアプローチで撮られたものが多いのですが、今日はそんなお話をいろいろお届けします!

人がなかなか行かない場所に行くということは、ガイドブックなんかもないですから、情報を得られるのは人類学の論文だったり、民俗学の論文だったりします。なので、意識しなくてもそこに接続していくのがあるんです。例えばパキスタンの山奥の情報はあまりないし、各地の小さなお祭りなんかも人類学や民俗学の視点がどうしても必要になってくるわけですね。
〜いろいろな場所の、何万年も前の私たちの祖先が描いた壁画を写真に収められていますね。
旅をするというのは移動する事ですが、古代の人が直接描い壁画だったり、手の痕跡だったりを見ると時間をさかのぼる旅をしていくような感覚があって、今までの山登りとかとはまた違う、タイムマシンではないけれども、そういう旅をしているような感覚になりますよね。
〜動物も様々に描かれていますよね。
おまじない的な意味合いもあるみたいで、動物を捕りたいという強い願いを込めて描かれた壁画だと言われていますね。
〜数々の壁画を見ている石川さんですが、一番印象に残っているのは?
世界中に手の壁画があるんです。。ヨーロッパにも中央アジアにも北米にも南米にもオーストラリアにもあって、それがすごく不思議なんです。壁に手を置いて、口に顔料を含んで唾液と一緒に、インクジェットプリンターのように吹き付けていくんです。その壁画が世界中に残っているのですが、なぜ描かれたのかいまだに諸説あってわかっていなくて、それがいつも不思議に思っていますね。ネガティブハンドといって、写真のネガフィルムと同じで反転画像になっているんです。それが不思議。なぜなんだろうといつも思います。ほかにも本当にいろんなもの見ましたね。オーストラリアの壁画なんかはいまも描き続けられています。アボリジニの人たちは文字がないので、絵で歴史を伝えたりして、今もずっと受け継がれて描き続けられているんですよね。
〜今回の個展では秋田のなまはげなど、来訪神をテーマにした写真もありますが、写真家として仮面の神々たちをどんな存在だと思いますか?
仮面がものすごく迫力あって、インパクトがありました。鹿児島の悪石島にボゼというものを見て、「日本もアジアなのか」という感覚に出会ってから、日本列島に点在する来訪神の仮面の行事を撮影していこうと思10年近くずっと撮影し続けていますね。仮面を使ってお祭りは北陸と東北と九州と沖縄があって、間にはない。やっぱり海の彼方からやってくる異質な他者を表しているらしくて、北と南に分かれていて面白いですね。特に南のはやっぱりアジアとのつながりがすごいあります。中国大陸もあるし、あるいはフィリピンやあっちの影響も見られるし、交差点になっている場所が鹿児島・沖縄の島々かなと思います。

『国東半島』石川直樹(青土社)
〜国東半島の写真集も出されていますが、国東半島はどういう土地なんですか?
すごく不思議な場所でした。3年ぐらいずっと通っていたんですけれども、すごく古くからの行事だったり文化が残っている場所で、朝鮮半島の影響も混じっているし、仮面の行事、ケベスだったり修正鬼会(しゅじょうおにえ)だったり、昔からの特別な行事事がたくさん残っていて面白い場所でしたね。
〜修正鬼会とはどういったものなんですか?
お坊さんが全身を縄で縛られているのですが、鬼の魔力を閉じ込めると言われています。お坊さんたちは夜通し集落を一軒一軒まわり、お祈りをしたりご馳走をもらったりお酒を飲ましてもらったりして、最後は本当にフラフラになって朝5時にお寺に戻ってくると、暴れて暴れて、トランス状態に入ってるんです。そして、みんなに押さえつけられて縄を解かれるとまた日常に戻るという不思議な行事ですよね。
写真家・石川直樹さんにお話いかがだったでしょうか。石川さんの個展「この星の光の地図を写す」は新宿の東京オペラシティ アートギャラリーで開催中。

同じタイトルの写真集も出版されています。ぜひチェックしてみてくださいね。


石川直樹写真集『この星の光の地図を写す』リトルモア
【今週の番組内でのオンエア曲】
・SNOW SOUND / ALEXANDROS
・Ain't Got You / Kevin Michael