さて、この番組では様々な分野で、自然と向き合う方にお話を伺っていますが、きょうは、地球が作り出した自然の構造物の中でも、「石」に特化して、ひたすら石と向き合う方にお話を伺います。
スタジオにお迎えしたのは、「製硯師(せいけんし)」の青傍史さんです。よろしくお願いいたします。各地を飛び回って石を探し、石を使ってあるものを創り出すお仕事の方です。


〜青砲気鵑賄豕・浅草で80年続く書道用具専門店の4代目でいらっしゃいますが、製硯師とは?
 一般的な硯職人さんと人と違うところがあって、硯職人さんは工房の近くに石の山を持っていますよね。産地の石を使って伝統工芸として職人さんとしてやられていますが、浅草には石も山もありません。ですので、僕は日本、中国のいろんな産地にお邪魔して様々な石を使って硯を作っています。作るだけではなく石を山からいただきに行くシェフのようなものですね。料理を振る舞うために必要な材料、素材をいただきに行くという感じです。
 バイヤーのところに石を買いに行ったとします。そうすると、これは浙江省の石だよとか、何年前の石だと言われるんですね。でも本当にそこから取れているのかどうかわからないじゃないですか。その素材が取れている場所を自分でちゃんと見たいと思うようになって、ちょうど30代頭くらいから、中国や日本のあちこちに自分の足で行くようになりました。そしてその硯の石が育った山には硯の産業が成り立っているので、そこの住民の方の文化を自分で足を運んで呼吸で感じて、言葉を聞いて、そして衣食住を共にすることで石の情報だけではなく、そこの産地の情報も自分の体の中にインプットできるような気がして。それで日本中のいろんなところに足を運ぶようになったんです。


〜硯は道具ではあると思うんですが、やっぱり同時に美術品と言う面もあるんですか?
 墨をするための道具です。なので墨をすれる構造を作ってあげるのが1番なんですけど、硯は発祥してから2000年以上経っているんです。中国で発祥したのは紀元前ですね。石でできたもので今の形の元祖になったものが出来上がったのが1500年前。その形を作ったときの当時の中国の作硯家たち、造形の哲学、石への向き合い方というのを僕なりに研究した結果、やはり硯の名利として墨をすることができる事は当然ながら持っていなければいけないんだけれども、石の美しさをどれだけ引き出してあげられるかということが、中に内蔵されているんですね。そういった作り方を目指して僕たちはやっています。

〜今日硯をお持ち頂いたんですよね。
 1つは僕が普段使っている硯です。もう1つは個展に展示した宮城県の雄勝石、2つお持ちしました。

この石は浙江省の石なんですけれども歙洲石という石なんですね。時の皇帝が使っていたのとと同じものです。石の調査に20代に行った時に、石をとっていた鉱脈が知りたくて、でも既に埋められていて見れないんですけれども、そのヒントがあって、石をとったときに端材を川に捨てたんです。だから川の底ほじくれば出てくるだろうと思って、川に潜ってとってきたんですよ。外国人がおかしなことをしていると村の人に言われました。ペットボトルを切って目に当てて中を見ながら。それで潜ってとったんです。裏面を見ていただくと分かるんですが、川で育てられたままの形になっていますよね。川の中で転がされてこの形が作られたんです。

砕石した当時はもっとゴツゴツとした岩肌むき出しの形だったはずなんですね。それが川の中で転がってこういう風になる。しかも数百年の間で育った形なんですね。その”霜降り”の部分が全部出てくれればいいなと思って、上から削っていったんです。側面を見てもらうと積層があるんですけれども、こちらを見てみると斜めに複雑な層ができているんですけど、全部美しいところだと、なんというか味気ないんです。こういう夾雑物がある、すれないところがある、そして荒いところもある、岩肌も残っているという、いろいろな自然の要素が重なって、そして墨をするのに向いているところが際立ってくる。比較対象がこの1つの面の中に混在してくれると景色も良くなるんです。また硯は少し温まらないと墨が出にくいんですけれども、これだけ薄いと僕が手の温度で多少温めることができるんですね。室温程度まで温まってくれるとすごくトロンと墨をおろしてくれます。キンキンに冷えているとなかなか墨はおりないんですよ。


宝研堂
http://houkendo.co.jp/

青柳さんのお話、いかがだったでしょうか。来週もインタビューの続きをお届けします。
【今週の番組内でのオンエア曲】
・Better Half of Me / Tom Walker
・Church ft. EARTHGANG / Samm Henshaw

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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