今週も、「三万年前の航海 徹底再現プロジェクト」で実験を成功させた当事者お2人のインタビューです。国立科学博物館の海部陽介さん、そして船の漕ぎ手キャプテン 原康司さん。
およそ3万年前の私たちの祖先がやったのと同じように台湾から、3万年前の技術だけで船を作り、与那国島まで渡りきるという壮大な実験を、お2人それぞれの視点で語っていただきます。
プロジェクトの総仕上げが行われたのは、去年7月。5人のメンバーを乗せた丸木舟は、台湾を出港し、3万年前に私たちの先祖がたどったルートで、与那国島を目指しました。
ただ・・・初日から強い北風にあおられ、しかも曇り空のせいで目印になる島や夜の星が見えない! 出だしから、そんな試練が襲ったといいます。
メンバーはみな、経験豊富なカヤック乗り。といえど、コンパスもGPSも無い丸木舟の航海は、たいへん厳しいものでした。漕ぎ手キャプテン原さんはこう振り返ります。


原: 本当は2日目の日没までに島を見つけたかったんです。明るいうちに見つけて、大体の方向を確かめて、夜に入りたいというのがあったんですけども、残念ながら見つけられなかったんですね。というのも、その日、黒潮がそんなにスピードが速くなかったんですよ。それで北に流された距離が予想より短く、予想よりはまだ南にとどまっていた。それで目視で探しても見えない位置にいて、のまま夜に突入してしまった。


海部:与那国島の場合は半径50キロ圏内に入らないと見えないんですね。島が小さくて低くて、地球が丸いので近づかないと見えないわけですよ。それが50キロですね。でもそれは天候が良ければの話です。視界の悪い日だったので50キロ圏内に入っても見えないような状況だったのですが、その時は2日目の夕方、まだ50キロ圏内にも入っていなかった。ただし漕ぎ手たちにそのことはわからないわけです。海の上で自分たちがどこにいるか、伴走船のほうは知っているんですが、僕らはそれを絶対に言わないルールですから、漕ぎ手たちは自分たちで島を見つけなければいけない。そういう航海なんですよね。その中で何をどう判断するかというところにキャプテンに重圧がかかってくるわけですね。

原:闇雲に漕いでいるわけではなくて、常に頭の中に地図があるわけですよ。それで自分の船の位置が地図の上でどこのあたりにいるかはずっと自分の中で想像しているんです。北にちょっとブレはあるけれども、自分の中ではその方向に必ず島があるはずだという確信はあるわけです。少なくともこの方向から島が出てくる、絶対この方向にあるという確信はあるんです。いずれ見えてくると。それで2日目の夜に、北北東のほうに行きたい、島があるはずだから進もうと言ったんだけれども、とうとう漕ぎ手の限界が来た。出発から30時間くらいして「もう漕げない」という意見が出てきたんですよね。

海部:この日海が荒れたのでその時に休めなかったんですよね。海がずっと穏やかだったらもうちょっと休みを入れながら体力をセーブできたはずなんです。それが叶わない中で、みんな体力も使い果たしてしまった場面だったんですね。でも海の上でそういうことが起こることはあるので、そういう時にどうするか。星が見えないのもそうですが、僕も伴奏船の上に手いて、困ったなと思いました。だけどそうなってしまうこともあるので、そこに対応できないとあんな航海はできないんだろうなと見て思っていましたね。

原:1日目にすごいがんばって、100%の力で乗り切って、2日目も非常に暑かった。熱中症の症状がすごく出てきてですね、体力も奪われていたので、これは本当に限界だろうなと。もう24時間以上は漕いで沖に充分出てきているんですよ。島の方向もある程度自分の中ではわかってきている。そこにいれば、黒潮がゆっくりと押してくれるはずだという予想をしていたんです。なので、わかったと。休むぞと言って、船を全員で止めて休みました。一瞬で寝ましたよみんな。一瞬でいびきをかいて。相当疲れていました。

海部:その時は星も見えなかったですからね。雲も出ちゃってて全く星が見えない夜で、初日の状況よりも悪かったんです。2日目の夜も出だしのところは、疲れてる中でそれはある意味適切な判断なのかなと思っていました。ここでジタバタするよりも休むという判断だったんだと思いますね。


(どのくらい休まれたんですか?)
原:僕たちは時間は分かっていないのですが、8時間位ですかね。夜明けまで休みましたね。でも僕はほぼ起きていました。完全には寝られないですよね。だから1人ずつ見張りをして、風や波が来たときに対応できるような体制で交代で休んだんです。

海部:他の4人は船の底に寝そべって仰向けになって寝て、そこで原さんは最初やっぱり見張り役ということで体を起こして1人で起きていました。その後もう1人の人と交代するんですね。

原:実はですね、僕が鈴木君と交代してた時に、何時でしょうね。2時位ですかね。「灯台の火が見える」と言い出したんです。起きたら確かに回る光が見えて。確かにあれは光だと、30,000年前にはないんですけど、ただ僕がそこから島が見えてくるだろうという方向から出てきた。僕はびっくりして、本当に出てきたよみたいな感じで。それは僕も出来過ぎだなみたいな感じで思ったんですね。

海部:ちょうどその時、黒潮の本流は超えていたんですけれども、潮の流れがまさに与那国島に向かうような流れができていたんです。いつもあるわけじゃないんですけど、それにうまく乗っていたんですね。みんな寝ているんですが、じわじわと島に流されていたんですね。最後は運も手伝って島に連れて行ってもらった。

原:みんな疲れ果てていたみたいで、見えたときに顔を上げてみたのは僕と鈴木君だけだったんですね。あとはその声を聞いて、「よかった、見えたんだ」とそのまま寝ていたらしいんですけど。でも北北東の方向に本当に見えたんでこれはもう大丈夫だってまっすぐ行っていると。ということでとりあえず朝まで休んで体力を蓄えてまた出航しようという判断をしたんです。

海部:伴走船のほうは、なんで動かないんだろうと思っていましたね。それだけ本当に疲れていたんですね。

原:それから朝になって動き始めて行ったんですよね。だんだん灯台の光が見えなくなって、島はすぐそこにあるだろうと思っていたんですけれども島が見えないんですよね。雲がちょっと出ていて。視界が悪かった。

海部:でもその後、島の上にできる独特の雲が現れるんです。周りの雲と違うんですよ。その島のところで気流が乱れるので、上空に尾を引くようなすごい雲が現れて、そこが島という感じだったんですね。

原:近づいていったら、やがてその雲が晴れて、島が見えてきたんです。

海部:その時はちょうど島までの距離が20キロだったんです。見えたのが20キロ位。200キロ以上公開して本当に最後の1割。でも本当にそこの方向に向かっていたので、見事だったですね。



国立科学博物館の海部陽介さん、そして船の漕ぎ手キャプテン 原康司さんのインタビュー、いかがだったでしょうか。来週はエピローグ。大冒険を終えて何を思うか、そして次の冒険のお話なども伺います。
海部さんは講談社から、本を出すことになったそうです。2月12日発売「サピエンス日本上陸 〜3万年前の大航海」興味のある方、ぜひチェックしてみてください!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Dreams / BECK
・かりゆしの夜 / BEGIN

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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