今週も先週に引き続き、水中写真家・中村征夫さんのインタビューです。
中村さんが沖縄・慶良間諸島で撮影したサンゴの知られざる生態、そして環境問題を、写真絵本という形でまとめた新刊「中村征夫の写真絵本 サンゴと生きる」。

サンゴに住み着く小さなカニを主人公にして、お子さんにもわかりやすく伝えてくれている本なんです!
この中には、中村さんが「初めて撮影に成功した」という貴重なシーンが入っています。それはなにかというと・・・「サンゴの喧嘩シーン」。
ういうことなんでしょうか。

サンゴは石のように動かないと思うじゃないですか。確かにじっと見ていてもほとんど動かないです。でも夜になるともう一つの顔があるんです。サンゴには成長の早いサンゴと遅いサンゴがいます。テーブルサンゴとか枝サンゴ、きれいですよね。テーブルサンゴは、これから海に行った時によく上から見てみてください。喧嘩の跡がはっきり分かります。丸いテーブルサンゴは1メートル、2メートル、3メートルくらいになりますが、その端ががえぐれている。そこの下には必ず成長の遅いサンゴがあります。これは成長が遅くて1年間に2ミリしか伸びない。テーブルサンゴは1年間で10センチぐらい伸びますから、どんどん成長していくと下にいたサンゴの上を覆ってしまいます。そうすると光合成ができなくて、死んでしまうんです。それで口喧嘩が始まるんです。「こっちに来るなよ」「俺、太陽の光を受けないと死んじゃうじゃないか」「そんなこと言ったって僕ももっと大きくなりたいから」と。そして「そっちがその気ならこっちにも手があるぞ」と言って、3週間から1ヶ月ぐらいかけて長いスリーパー触手という毒の触手を作るんです。普通は数ミリくらいしかないのに、それは17センチ伸びる。長いストローみたいなものです。それが漂うんだけども先っちょがふくれていて、それで相手のサンゴに当てて組織を溶かしてしまうんです。あるいは自分の体内から組織を出して、白い糸のように激しく動かしてサンゴの上に覆い被さるようにして、相手の組織を全部溶かしていく。そういう喧嘩が夜は行われているんです。

〜成長が遅い方負けるわけじゃないんですね。喧嘩をしていると知って潜るとまた面白いですね。
知ってる見方が全然変わるから楽しくなっちゃうと思いますね。オニヒトデがサンゴを食べるじゃないですか。オニヒトデって悪いものというイメージを皆さんがもっていますが、針は猛毒を持っているので確かに怖いんです。大きいオニヒトデは40、50センチありますよ。あれが足の踏み場もないくらい出てくるんだから怖いですよ。でも昔はほとんど見かけることがなかったんです。太陽の光が大嫌いで、岩の奥のほうに隠れていたんです。だから沖縄の復帰前は見ることがなかった。でもきっといたんですね。沖縄が日本に戻ってきて、観光地なのでリゾートができました。道路ができて乱開発が始まったので、土砂が全部海に流れてしまって、いまだに雨が降ると海が土砂で赤く染まっちゃうんです。生きているサンゴの上に土砂が降り注いでしまったので、呼吸困難でサンゴが死んでしまったんです。沖縄が復帰してから9%くらい沖縄本島のサンゴは死んだそうです。実はオニヒトデでは毎年30〜50万くらいの卵を産むんだけれども、それはサンゴの餌だったんですよ。それでバランスが保たれていた。ところが乱開発が始まったからサンゴが激減してしまったので、ほとんどのオニヒトデの赤ちゃんが成長できるようになっちゃって、わずか1年くらいでサンゴを食べちゃう。それで生き残った者もだいぶ壊れてしまって、食うサンゴがなくなると潮に乗って北上して九州、四国、和歌山、三宅島まできました。だからオニヒトデはサンゴを食い荒らしていると言うけれども、実はオニヒトデが大好きなのはテーブルサンゴとか枝サンゴとか成長の早いサンゴです。成長が遅いサンゴはほとんど食べない。ということは成長の早いサンゴが減ることによって成長の遅いサンゴが生き残る可能性がある。間引きしているということです。台風が来ると、後楽園球場やサッカー場くらいの広大な面積に広がっていたテーブルサンゴがたった1度の台風で全滅になることがあるんです。成長が早い分、もろいんです。ただ石のように固い成長の遅いサンゴはしっかりと生きていくので、どんなに波が来てもびくともしない。だから防波堤の役目を果たしているのは実はそういう石のように固いサンゴなんですよ。それらが生きていかれるようにちゃんと間引きしていたということになるんじゃないですか。だから自然界っていうのは本当にうまくできている。そういうのを目の前で見せてもらうと、どの生き物も無駄な生き物はもひとつもない、みんな影響しあいながら生きているということがよくわかりますね。

〜今回絵本という形で発表したことで、新たな気づきもありましたか?
絵本を持って小学校で講演をしたりしているんですが、子どもたちは反応がすごいですね。今までサンゴが酸素を供給していたというが、実際は植物プランクトンだったんだねとか、マスコミが言っているのは間違いじゃないですか、とか言ってくるんです。小学生ですよ。お父さんからメールが来て、「うちの子どもが片っ端から家の電気を消しまくって、冷蔵庫のスイッチまで切っていました」とかね。すぐ行動に移してくれるのが子どもたち。そういう子どもたちの為にも今この地球環境をなんとか元に戻して、僕らは渡さなきゃいけないじゃないですか。このままじゃちょっとね。

水中写真家中村征夫さんのお話、いかがだったでしょうか。
写真展が開催中です。
福島県の、裏磐梯高原ホテルにて「中村征夫写真展 五色沼の魅力に迫る」 入場無料9月30日(水)までとなっています。
詳しくは中村征夫さんのHPをご覧ください。

【今週の番組内でのオンエア曲】
・A Case of You / Joni Mitchell
・島人(しまんちゅ)ぬ宝 / BEGIN

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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