先週に引き続き、今回も日本総研・井上岳一さんのお話です。
井上さんが提唱する「山水郷」という考え方。
これは、日本の豊かな自然とそこで暮らす人々の営みや知恵のことです。
いま、その山水郷の中で暮らすことを選ぶ人やそこで新しいことを始める人が増えている、
前回はそんなお話でしたが、まだまだほかにも面白い人たちがたくさんいます。


◆井上岳一さんの書籍「日本列島回復諭―この国で生き続けるためにー」



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高橋:日本の国土の3分の2を占める森、そして豊かな水と自然、そして培われてきた暮らしの知恵やコミュニティーが山水郷。その魅力に気づき始めた人たちが様々な価値を見出していると言うことで具体例を伺わせてください!

井上:結局、山水郷って山があって水がある所ですから、
山の恵みであったり水のおいしさを生かしている
というのが山水郷ならではかなと思っていて、
藤原味噌というのが鳥取県の若桜町と言うところにあって、
そこは水がすごく豊かなんですよね。沢ごとに水の味が違うと言って、
ここは軟水、ここは硬水みたいなのがあって、
それだけ水が豊かでそこが面白いと言うことで
藤原さんはそこに移住して味噌を作っています。
日本で天然麹で味噌を作っているのって
彼ともう1人ぐらいしかいないんです。
本当に天然の麹が降りてくるのを待って、
米を炊いておいておくと麹菌というのが空気中から降りてくるんです。
そして麹の花みたいのがパット咲くんです。緑っぽい感じで。
麹菌ってカビなんですよね。
害のないカビなんですけど、彼と話していてすごく面白かったのは、
水が綺麗なところじゃないとダメだし
農薬を回り使っていたらダメと言うのもあるんですが
「でもね、家族が仲が悪いと降りてきてくれないんですよ」っていうの。


高橋:ほんとですか?天然麹ってそうなんですか?

井上:なんか波動みたいなのがあるみたいで、
じゃあどういう感じだったらいいの?と聞いたら、
「たぶん一番最初に味噌を発見した人は神社の人たちだと思う。
神社にお米をお供えしていたら炊いたお米にカビが降りてきて、
このカビは何だ?というところから始まったんじゃないか。
だから神社みたいなところは白木があってきれいな水があって、
人々の機嫌が良い、怒っていない、邪悪な空気が流れていない、
だから家族が仲良くないとダメだと言う藤原味噌さん、
通販で買えるので。
彼のお味噌は本当に生きた味がしてとてもおいしいです。


高橋:番組でもそういう、若い方のチャレンジ、IターンやUターンした方いろいろインタビューしましたが、そういうことにチャレンジする人の共通点で何か感じるものがありますか?

井上:東日本大震災がきっかけになった人たちが
多いと思うんですけど、こないだ富山県で出会った方は、
ずっとアーティストのマネージメント、
アートで生きてきた方なんですが、
彼女は震災後に富山の高岡に定期的に通うようになって、
だんだん体が東京を受け付けなくなったって言うんです。
やっぱり富山の自然が豊かで美しい風景がある暮らしを見ていると、
なんで自分がそこになくて東京で働いているんだろうみたいなことを
すごく疑問に思うようになって、それで彼女は土徳と言う言葉に合うんですね。
土の徳と書いて土徳。
それは民芸をやっていた柳宗悦という人が
富山にいた間に作った言葉だと言われているんですが、
やはり自然とともに人が生きていく中で
作られてきた土地の品格みたいなものを「土徳」という言葉で表した。
その言葉に出会った時に、彼女はすごく腑に落ちて、
自分は土徳、富山の土徳と共に生きていきたいんだ。
土徳のある人たちと土徳のある社会の中で生きていきたい。
それを伝えることを自分の使命にしたいと変わっていくんだけど、
その土地でなければいけないものや
その土地と何か深く結びついたときに得られる満足感や
満たされた感じみたいなのが、やっぱり彼女はそこで発見した。
でも東京にいる間はどんなにすごく最先端のことをやっていても
でもそこは満たされないものがあったことに
彼女は気づいて富山に拠点を移したんですけどね。


高橋:その一方で実は最先端の研究開発の場としても、自然豊かな環境が適していると言うことがある?

井上: 例えば山形県鶴岡には慶応大学がキャンパスを
2001年に作るんですが、ここに行った学長の富田さんなんかは
「やっぱり行ってみたら研究をするのにこんなに良い環境はなかった」と。
雑音もないし余計なものもなくて、
ご飯は美味しくて夕日も綺麗で温泉もあって、
研究に没頭できる。結構世界中の、
特にヨーロッパやアメリカの研究所みたいなところが
意外と田舎にあるんですよね。
実は学問やアートをやる人たちは、
田舎の方が良いんだろうなというのは実はあるんだと思います。
例えば山形のやつなんかも、
鶴岡で有名になったやつで人口の蜘蛛の糸を作る
スパイバーという会社があるんですが、そういうネイチャーテック、
自然を模倣してやるみたいなのは、
自然がそばにあった方が当然いいわけですよね。
クモなんかどこにでもいますが自然が豊かの方が
いろんなヒントもいっぱいあるし。
例えば鬼滅の刃を作っているアニメのスタジオ、
UFOテーブルの創業者は徳島出身で、徳島にスタジオがあるんですよね。
それをやっぱり本当に風景をきちんと描こうと思った時に、
きちんとした風景を見ていないと描けないから。
なので田舎に探して移って、結局 生まれ故郷の徳島に
作ったらしいんですけどね。そういうものが日々見られる。
ちょっと田舎にいて気づくことってやっぱり
東京にいると夜もずっとこうこうと電気がついているので、
意外と情報は東京にいっぱいあるようなんだけど、
意外と夜の豊かさに気づかないんですよね。
僕は今住んでいるところに行くと夜は真っ暗です。
真っ暗だけど、例えば電車駅からとぼとぼと帰っていると
真っ暗な中でもいろんな音がするんですよね。
海の音が聞こえる時もあるし虫の声やいろんな音が。
夜ってこんなに豊かだったんだ、
こんなにいろんな情報がいろいろあるんだと言う。
そういう意味で言うと僕らは普段すごく情報が溢れているようでいて、
実はいろんなものを遮断して感じないで生きているのかもしれない。
だからやっぱり何か感じたり気づいたりすることを
大切にする人たちが今田舎に行った時に
そっちの方が豊かに感じると言うことで、
みんな口を揃えているのはみんなそういうことなんだろう
って言う気がします。


高橋:お話聞いていると山水後の山水郷の気づかない部分が、一方でこんなに可能性があったんだと気づくかもしれないですね

井上:山水郷に行って面白いのは
自分ができることが増えるんです。そ
れこそチェーンソーを使って木を切るだとか
普段やったことないじゃないですか。でもそれが切れると、できる!と。
そうやって切った木で火起こしなんかも普通はできないじゃないですか。
でもそれができるようになるだけでも
生きていく自信が湧いてくるというか。
何にもないから結局コンビニもないから、
自分で作ったり何かするしかないんだけど、
それをやると逆に自分の自信になっていくみたいなところがあって。
そうすると見える風景がまた変わってきてと言う部分もあると思うので、
自分をバージョンアップさせる意味でも山水郷に行くのは
オススメだぜみたいなところがありますね。
誰かそういう友達を頼っていちど行ってみて、
後はやっぱり圧倒的に水がおいしいとかご飯がおいしい
と言うことだけでも全然違いますから。
空気もおいしいし。





今回も、日本総研 創発戦略センター シニアスペシャリストで山水郷ディレクターの井上岳一さんをお迎えしました。次

◆井上岳一さんの書籍「日本列島回復諭―この国で生き続けるためにー」


【今週の番組内でのオンエア曲】
・C調言葉に御用心 / サザンオールスターズ
・Ordinary Joe / Terry Callier

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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