
奈良時代には、朝廷に収める税「租庸調」の一品目として干物が入っていた。東大寺の《正倉院文書》に、小魚を丸ごと干したキタヒ、内臓を取って干したアヘツクリ、大きな魚の身を細長く割いて塩干しにしたスハヤリなどが作られていたと書かれているな。それらが税として収められていたんだ。《源氏物語》にも殿上人の宴会シーンに干物が登場しているぞ。
干物は日本だけの食文化じゃない。9〜11世紀頃に活躍した北欧のヴァイキングたちも、干したタラをこよなく愛した人々だった。なにせ彼らはタラを追い求めて北へ北へと航海し、アイスランドやグリーンランドを発見したほどだ。さらにレイフ・エリクソンという男はグリーンランドの先へと進み、豊かな土地「ヴィンランド」に辿り着く。その場所は現在のカナダ、ニューファンドランド島だと考えられているな。つまりコロンブスより500年も先に新大陸へ辿り着いたヨーロッパ人がいたんだ。残念ながらその事実がヨーロッパで広まることはなかったし、定住もできなかったから、彼が新大陸の発見者と言われることはない。だが、その偉業を支えたのがタラの干物だった。
江戸時代の伊豆諸島でも将軍様への献上品として、盛んにアジやトビウオの干物が作られた。当初は単に塩水に浸けて干した普通の干物だったが、島では水と塩が貴重だったので、漬け汁を使い回している内に発酵して独特の風味と臭いを持つようになる。これが臭くておいしいことで有名な「くさや」の誕生だ。くさやの漬け汁は古いものほどうま味があるとされ、今では300年も継ぎ足しで使われ続けているくさや汁もあるそうだぞ。きっとさぞかしうまいんだろうな。そしてさぞかし臭いんだろうな。
干物は単に保存が利くだけじゃなくて、鮮魚とはまた違ったおいしさがある。全国各地でその土地の味として受け継がれている干物も良いし、最近は家庭用の食品乾燥機が5000円くらいから買えるから、手軽に干物を作ることも可能だ。今日は干物の専門家に会って、どんな干物があるのか、どんな風に干物が作られているのか、いろいろ教えてもらうとしよう。Here we go!
- ONAIR LIST
- 3'22" / Route 66/ George Maharis
- 14'04" / Sombra De La / Andrea Motis
- 34'16" / Keep An Eye On Love / Nina Miranda & Chris Franck