
アイスコーヒーは日本発祥という説もあるが、厳密に言えばそこまででもない。大昔からコーヒーを飲んでいたアフリカでは、暑い時期に水を入れて冷ましたコーヒーくらい普通にあったからな。ただ、冷蔵庫も製氷機もない時代に、水を入れて温度を下げただけのコーヒーがどんな味だったかは、現代人でもなんとなく想像がつくだろう。
1840年頃、アルジェリアを植民地支配していたフランス人は、地中海に面した街でアフリカの冷ましたコーヒーを体験し、そこに砂糖やリキュールを加えたドリンクを開発。その街の名前から「マサグラン」と名付け、フランスに持ち帰っている。しかしパリのカフェで提供したマサグランの評判は散々だった。衛生上の問題から生水を飲まないという習慣もあって、ヨーロッパではアイスコーヒーはまったく人気が出なかったんだ。
しかし19世紀の後半、明治時代に文明開化の一端としてコーヒーが普及した日本では事情が違った。日本は井戸水でスイカを冷やしたり、そばやうどんを水で洗って食べるくらい水がキレイだったからな。「暑い季節はコーヒーも麦茶のように冷たくして飲みたい」と考えたんだろう。明治24年には東京神田の製氷店が「氷コーヒー」を販売した記録が残っている。
明治の作家・村井弦斎は、その氷コーヒーことアイスコーヒーをこよなく愛した人だった。妻の村井多嘉子が書いた『弦斎夫人の料理談』によれば、そのアイスコーヒーは挽いたコーヒー豆に水と卵の殻を入れて煮込み、漉して牛乳と砂糖を加えて冷ましたもので、飲む時にレモン油を加えたそうだ。去年、実際に作った人が「夏中はまったほどおいしい」とブログに書いているから、興味がある人は試してみてくれ。
こうして日本で定番になったアイスコーヒーは、本当につい最近、1990年代にスタバが販売するようになってから、ようやく世界的に普及しつつある。ちょっと前まで海外では文法的に正式な「Iced coffee」ですらろくに通じなかったけど、今は口語的な「Ice coffee」でもけっこう通じるらしいな。山猫冒険団の世界戦略のため、今日は詳しい人に会っておいしいアイスコーヒーの淹れ方を教えてもらうとするか。Here we go!
- ONAIR LIST
- 2'35" / Route 66 / George Maharis
- 12'49" / The Coffee Song / Eydie Gorme
- 32'22" / Voce E Eu / Carlos Lyra