2016.09.10
第179話 サボテン


たとえば多肉植物のオブツーサという品種は斑(ふ)が入っているものが貴重とされます。通常、葉っぱは緑色をしていますが、そこに黄色や白の模様が入るのが斑です。この斑入りのオブツーサは去年の正月に30万円だったのが夏には70万円、秋には100万円を超えていました。これほどのブームはかつてなかったことです。
もともとサボテンは他の植物とそれほど変わらない姿でした。それが気候の変動によって土地が乾いていく中で、幹や葉を太らせて水を貯められるように進化していったんです。さらに葉からは水分が蒸散するので葉をなくし、幹も表面積をできるだけ小さくするため球形になっていきました。そして葉の付け根の托葉(たくよう)がトゲに進化したと考えられています。
托葉がトゲに進化した理由ですが、やはりトゲがあると動物に食べられにくいようです。馬はサボテンをヒヅメで蹴って水分を吸ったりしますが、逆に言えばそれくらいしないと動物はサボテンを食べられません。サボテンによってはトゲがフワフワになっていてレースのカーテンのように日陰を作っている品種もあれば、綿毛のように進化したトゲが夜霧を含んで水分を確保している品種もあります。
「弁慶柱」はアリゾナのツーソンを象徴する巨大な柱サボテンで、太さ1m、高さ10mまで成長します。この弁慶柱は夜に花が咲かせ、コウモリが寄ってきて交配が行われて種を付けるのですが、実はサボテンには種の他にもトゲを使った繁殖方法があります。小さなサボテンがトゲで動物にくっついて遠くに運ばれて繁殖することもあるんです。また多肉植物のマツバギクの仲間には雨が降らないと絶対に種がこぼれない構造になっている品種もあります。こんな水が少ない土地で生きていくための多様な進化がサボテンの奥深さです。