2016.10.01
第182話 ハゼ釣り

芝浦「おかめ鮨」5代目店主 長谷文彦さん「ハゼの刺身が味わえるのは秋だけ!」

当店では10月からハゼのフルコースとして、刺身、にぎり寿司、茶碗蒸し、柳川鍋や湯豆腐などを味わっていただけます。ハゼの大きさによって、大きいモノはお刺身に向いていますし、15cmくらいの中くらいのモノならにぎりに、それ以下だと鍋や天ぷら、かき揚げに、といった具合です。数は少ないですが20cm超のとても大きなハゼなら1匹まるごと天ぷらにしてもおいしいと思います。
ハゼのお刺身は1年を通して3ヶ月しか味わえません。魚の仕入れは基本的に築地の魚河岸でしていますが、寿司に合う大きさの生きたハゼを手に入れるのが難しいので自分で釣りに行きます。魚河岸では注文しても手に入るものではなく、たまたま漁師が獲ったモノが活けで入ればめっけもんです。しかも値段的にはタイやヒラメとそう変わりません。
ご家庭でハゼを召し上がるなら、10cm以下の小さなモノを唐揚げにするのが一番良いと思います。ちょっと包丁ができる方なら、頭とウロコと内臓を取り、塩水で軽く洗って水気を切って、ゴボウのささがきや玉ねぎ、紅ショウガと一緒にかき揚げにしてはいかがでしょうか。唐揚げは丸ごとで大丈夫ですが、小さいお子さんがいるご家庭なら頭と内臓を取った方が良いかもしれません。
7〜8月に釣れるハゼはまだ小さいので、僕らが釣りに行くのは9月のお彼岸を過ぎたあたりからです。夏に5〜7cmだったハゼがが夏の太陽を浴びながらいっぱいエサを食べて、秋には12〜13cmくらいになります。中には早生まれで15cmのハゼもいるので、我々釣り師は大きいハゼを求めてあっちこっちをさまよいます。
ハゼは頭が硬く、大きくなると骨もしっかりしてくるので、一般的には煮たり焼いたりするのには向きません。ただし下町伝統の甘露煮(佃煮)という調理方法はあります。ハゼを素焼きにして木枯らしに晒して煮崩れしないようにした上でコトコトと煮込むのですが、おせちにハゼの尾頭付き甘露煮があると「いい正月が迎えられたな」と下町の人間は思います。