2017.03.25
第207話 若大将


レコーディングしたのは加瀬邦彦がいた頃のブルージーンズ。あまりに最初と違う曲になっていたのに「アレンジの力ってすごいんだなぁ」と驚かされたものです。そこに岩谷時子さんがすごく良い歌詞を付けてくれて大ヒットしました。映画『エレキの若大将』ではパーティーで歌う曲として使ってもらったんですが、今にして思えばあの映画は完全に僕のPVで、本当にありがたいお話でした。
『海の若大将』で多重録音をするエピソードがありますが、あれは僕の実体験。高校時代に親父が買ってきた大きなワイヤーレコーダーやテープレコーダーで録音と再生を繰り返して多重録音をして遊んでいたんです。大学に入ってからブラザース・フォアのベース、ギター、コーラスをひとりでやって多重録音したこともあります。録音を重ねていくとだんだん音がザーザーしていくんですが、それでも最後にはちゃんとブラザース・フォアになったのが嬉しくてたまらなかったのをよく覚えています。
ビートルズが来日した時に「お会いになりますか?」と言われ、最初は「いや別に」と答えました。僕はエルヴィス・プレスリー派だったので、ビートルズにはどうにもなじめなくて。でも家に帰ってお祖母ちゃんに「馬鹿じゃないの?!会いなよ!」と叱られて「やっぱり会いに行くわ」と。厳戒態勢のキャピトル東急ホテルでは思い切って警備の人に「どうもご苦労さん」と敬礼したら「ご苦労様です!」と通してくれました。顔が知れていると良いこともあるものですね。
最初に握手したのはリンゴ・スター。部屋に入ると彼らの内輪ネタで大盛り上がりしていたので「すまないね」と気を遣ってくれたのがポール・マッカートニー。そして「これからスキヤーキを食べる」と言うのですが、彼らは「自分たちでやる」と言ってボーイさんたちを帰してしまいます。ボーイさんが去り際に「加山さんならすき焼き屋の息子さんだからお願いしても大丈夫ですよね」と耳打ちするんですが、それは映画の設定だぞと(笑)。でも本物のすき焼き屋でロケをしたおかげで彼らにちゃんとしたすき焼きを作ることができたのは幸いでした。