2017.04.29
第212話 干潟で遊ぼう


東京湾でしたら、おなじみのアサリやハマグリの他に、マテ貝なんてご存知でしょうか。細長い二枚貝で、干潟に空いた小さな楕円形の穴に塩を振りかけると、ピュッと飛び出てきます。それからお寿司屋さんで「青柳」と呼ばれる貝は、正式にはバカ貝と言います。舌をベローンと出している様子から名付けられたなど諸説ありますが、これもおいしい貝です。
干潟で子供たちに人気なのはカニ。カニは住み分けがはっきりしていて、干潟の上の方にいるのはコメツキガニです。水がある時は穴の中に潜っているのですが、水が引くと穴から出てきて干潟の表面に付いている藻を食べます。その時、一緒に食べた砂を小さな米粒のような団子にして回りにたくさん散らすのでこの名が付きました。
もっと干潟の上の方に行けば、甲羅に弁慶の顔のような模様があるクロベンケイガニがいますし、葦があればアシハラガニがいます。干潟の深いところにはヤマトオサガニ、もっと深いところにはガザミ(ワタリガニ)もいますね。イシガニはちょっと凶暴なハサミを持っていますが、これもおいしいカニです。
── 東京湾にはどれくらい干潟があるんですか?
房総半島の真ん中あたりに東京湾へ突き出た富津岬がありますが、そこから北の木更津、金田まではずっと干潟です。少し北に行き、船橋海浜公園、市川の行徳、そして東京に入って葛西臨海公園の西なぎさ、お台場海浜公園も干潟ですね。さらに大森のふるさとの浜辺公園、多摩川の河口あたり。川崎の東扇島には人工的な干潟があって、ずっとずっと南に行った横浜市金沢区の海の公園と野島公園が干潟です。
こうして挙げるとたくさんあるように聞こえますが、東京湾の大きさから考えたらほんのちょっとです。これらの干潟は場所によってアサリの味が驚くほど違います。その理由はおそらくエサの違いにあると思いますが、どこが美味しいとはあえて言いません。ぜひ食べ比べて、ご自分で確かめてみてはいかがでしょうか。
干潟は生命の宝庫。そんな干潟を増やしていくためにも、干潟で遊んで干潟を好きになっていただきたいと思います。ちなみに潮干狩りで干潟を耕すのは、砂の中の方まで酸素が行き渡るので、干潟にとっては良いことです。もちろん採りすぎないようにしたり、稚貝(1円玉くらいが目安です)を採らない配慮は必要ですが、大いに潮干狩りを愉しんで下さい。