2017.09.02
第230話 ニンニク


ニンニクは数ある野菜の中で断トツに硫黄成分が多い野菜です。硫黄は温泉で黄色い塊をご覧になったことがあるでしょう。あれを含む成分がニンニクの中にたくさんあります。ニンニクが属するネギ属は総じて硫黄が多いのですが、その中でも特にニンニクは硫黄を多く含んでいて、タマネギの約10倍。だからニンニクは温泉のように臭うんです。
ニンニクが硫黄成分を蓄えているのは、ばい菌やカビ、動物などから身を守るためです。ニンニクの臭いの元となる成分を「アリシン」と言うのですが、このアリシンはニンニクが攻撃されて傷つかないと出てきません。実際、買ってきたままのニンニクは臭わないでしょう。しかしニンニクを切ったりすると細胞が潰れ、2種類の細胞の成分が混ざります。そして刺激のないアリインという成分が酵素の力でアリシンに変化して、殺菌効果や刺激臭でニンニクの身を守るという仕組みです。
── まるで動物のようなすごい防衛機能ですね!
アリシンは非常に反応性が高く、そのまま人間の口に入れると、歯茎や舌、頬の粘膜にくっついてザラザラにしたり、酷いときは炎症を起こさせます。しかしニンニクを鍋で煮込んだり油で炒めたりすれば、アリシンが結合して安定した硫黄化合物「スルフィド」になるんです。そしてニンニクが体に良い働きをするのは、このスルフィド類の力です。
ニンニクの血液がサラサラになる作用や、元気にする作用、血圧を下げる作用などはスルフィド類で証明されています。そんなスルフィド類を増やそうと思ったら、まずアリシンをたくさん作らせなければいけません。そのためにニンニクをみじん切りにしたり、すり下ろしたりするんです。
── アリシンを健康に良いスルフィド類にするにはどうすれば?
アリシンが結合してスルフィド類になるには2つの条件があります。ひとつは熱。温度を上げればアリシンが結合しやすくなります。そしてもうひとつ、油の中だとアリシンが結合しやすいんです。ですから中華料理やイタリア料理でニンニクを使った料理に油を使うのは、とても理にかなっています。
実はアリインのまま摂取しても体の中でスルフィド類になるので同じ健康効果が得られます。ただしその場合、翌日や翌々日に臭いが残りやすくなります。最初からスルフィド類になっていれば3時間くらいで体外に排出されますが、アリインがスルフィド類になって体外に排出されるには10時間以上かかるんです。臭いが気になる方はご注意下さい。
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