2018.05.26
第268話 さくらんぼ


さくらんぼの木はセイヨウミザクラと言って、お花見の桜とは種類が違います。一般的な桜は実が付いても小さくて黒いのですが、セイヨウミザクラは実が大きくて赤いんです。中央アジアの方から中国を経由して日本へ伝わったと聞いています。幹や葉は普通の桜っぽいのですが、真っ白な花が咲く桜です。
「さくらんぼ」というのは通称で、正しくは桜桃と言うのですが、セイヨウミザクラは人が花粉を付けてあげないと実を付けません。しかも品種が違う花粉を付けないといけないんです。そこで「佐藤錦」という品種に「高砂」という品種の花粉を付けたりします。次の世代に形質の違う子孫を残すためのこんな不思議な性質を自家不和合性と言います。
── 佐藤錦の花に高砂の花粉を付けたら、どっちになるんですか?
お母さん次第なので、花が佐藤錦なら実も佐藤錦ですね。でも、その実を食べずに育てた場合、新しい品種の木になります。一応、市販されているさくらんぼも、植えたら発芽する可能性はあります。すごく確率は低いのですが、この農園でもさくらんぼ狩りをしたお客様が捨てた種から芽が出たことが実際にありますから。
さくらんぼの生産は山形県が全国1位で、全生産量の70〜75%を占めています。次が北海道で、さらにその次に青森県と山梨県が並ぶくらい。さくらんぼは冷涼作物と言われるくらい涼しいところで作れる果物なんです。山形県では佐藤錦が多く、山梨県は佐藤錦よりも早く出荷できる高砂が多く栽培されています。北海道だと北光が多いようです。
── 品種によってどんな違いがあるんですか?
佐藤錦は糖度の高いさくらんぼなので、食べると「甘い」と思うでしょう。高砂は佐藤錦よりも少し小ぶりで、佐藤錦よりも酸味が強め。コクがあるというか、味の濃さを愉しめる品種です。紅秀峰は最近、すごく人気が出ている品種で、実がすごく大きいのが最大の魅力。パリッとした皮としっかりした果肉で食べ応えがあります。(※写真は左から佐藤錦・高砂・紅秀峰)
さくらんぼ狩りでは日当たりの良い、少し高いところのさくらんぼがおすすめです。色も濃い方がいいので、ぜひ赤くて大きなさくらんぼを探して下さい。なお、さくらんぼはリンゴのように収穫後に熟すことはありません。一番おいしい収穫したてのさくらんぼを食べられるのが、さくらんぼ狩りの醍醐味です。