2018.06.09
第270話 剣道

(株)松興堂 松本孝仁さん「剣道の道具には意外な新素材も」

頭にかぶる面、胴体を守る胴、手を守る小手、胴の下につける垂(たれ)、剣道着、袴、竹刀で一式です。垂は下腹部を守る防具で、江戸時代は胴にくっついていたのですが、今は別になっています。
昔は面も胴も竹製で、それだけで稽古をしていたようです。面金そのものが竹でできていて、それを紐で頭部に固定していたんだとか。それでは危ないので江戸時代の後期あたりから鉄製になり、上や横をカバーする面ぶとんも付いたり、段々と変わって今の形になりました。昔は喉を守る突き垂もなかったようです。でも突きが得意な人が現れて、危ないからということで突き垂が付くようになりました。
── いつ頃から剣道の防具は今の形になったんですか?
明治初期、まだ剣道ではなく剣術だった時代ですが、4点の防具はありました。それが最終的に「剣道の防具」として確立したのは昭和の初期と聞いています。
基本的に剣道の防具の形は変わっていませんが、素材はずいぶん変わっています。面金なら鉄からチタンになったりジュラルミンになったり。胴も昔は竹に皮を張って漆をかけたものでしたが、今はファイバーや樹脂が使われています。素材が変わったのは安全性と値段の問題です。昔ながらの道具はどうしても高くなってしまいます。
── 剣道の道具を一式持つと、けっこう重たそうですね
重たいですよ。しかも汗を含むとさらに重くなります(笑)。面が手刺しの良いモノで1.6kgくらい。それでも面金がチタンになったりしたおかげで、昔に較べて1/3くらいになっています。ただ、本当は重たい方が打たれたときの力を吸収してくれるので、その方が良いという考え方もあるのですが。
竹刀も素材がいろいろあって、真竹、台湾の桂竹、中国の石膏竹、中国真竹などがあります。さらに最近は樹脂製のカーボン竹刀も出ていますね。カーボンは反発力が強いので、反動で2回当たったりして「痛い」という声もありますが。
真竹の竹刀は「次の技が出やすい」という声を聞きます。竹の中では硬い方なので、その反発力が動作に結びつくんだそうです。だから高段者の方が真竹の竹刀をよく使われています。ただ値段が高めですし、最近は国内で竹の供給も減っていることもあって、年間で100万本ほど販売される竹刀の中で、真竹は2〜3%じゃないでしょうか。