ピートのふしぎなガレージ

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エヌ博士

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カテゴリー : カルチャー

カラス

2019.10.19

第341話 カラス

ゲストコメント
慶應義塾大学 文学部教授 佐藤道生さん「カラスが“憎たらしい”と表現される理由は」
慶應義塾大学 文学部教授 佐藤道生さん
── カラスは日本の古典文学にも登場するんですか?

普通、日本の古典文学に出てくる鳥は、春ならウグイス、秋なら雁など、季節感を出すものとして登場します。でもカラスは昔からそこら中にいたので、文学の題材にはならなかったんです。

でも江戸時代になると、松尾芭蕉がカラスの句をいくつも詠んでいます。《枯れ枝に 烏のとまりけり 秋の暮》《つね憎き烏も雪の朝(あした)哉》といった具合です。後者は「いつもは憎たらしいカラスも、雪の降った朝は白と黒のコントラストがとても趣深い」という意味ですね。

── 江戸時代もカラスはあまり好かれていなかったんですね

そうなんですが、現代的な「ゴミを撒き散らすから」みたいな意味とはちょっと違います。朝のカラスはギャーギャーとうるさく鳴くので、恋人同士が迎えるロマンチックな朝を邪魔するものとして「憎たらしい」と表現されました。

そのルーツは中国の古典にあります。中国に唐代伝奇小説と呼ばれる通俗小説群があって、それが遣唐使のお土産として日本で非常に人気を博したんです。そして、その中に張鷟(ちょうさく)の『遊仙窟』という作品がありました。黄河の水源を極める旅の途中で仙郷に迷い込み、美人姉妹の妹と想いを遂げて再び旅に出る……というお話ですが、その2人の情事を中途半端に終わらせる憎たらしい役目をカラスが担います。

── それは恨まれても仕方ないですね(笑)

『遊仙窟』の《あな憎のやまめ烏の夜な夜なに人を驚かす》という有名なフレーズは、平安時代に『新撰朗詠集』という詩歌のアンソロジーに収められ、日本で語り継がれました。最初の芭蕉の句に出てくる《つね憎き烏》というのも『遊仙窟』を踏まえています。『遊仙窟』は岩波文庫にも入っているので、ぜひご一読下さい。

高杉晋作の有名な都々逸《三千世界の烏を殺し 主と朝寝がしてみたい》も『遊仙窟』が背景にあります。さらにその都々逸を踏まえた落語が『三枚起請』です。3人の男が1人の遊女から「年が明けたら夫婦になる」という同じ起請文を貰っていたことに気付き、遊女を問い詰めます。すると遊女は「男を騙すのが商売だ」と開き直るんです。

「騙すのは仕方ないにしても熊野権現の起請文はやりすぎだ」と憤る男たち。起請文の約束を破ると熊野でカラスが3羽死ぬと言われていたからです。それでも遊女は「起請文をどっさり書いて世界中のカラスを殺したいね」と悪びれる様子もない。男たちが「世界中のカラスを殺してどうするんだ」と問うと「勤めの身だもの、朝寝がしたいよ」というサゲの噺です。
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